遠離の森⑥
「3人とも、この場に残るということでいいな?では、まずはクラヌキお前が〝この場所へ何処から来たか〟を話してもらおうか?」
「はい。今から話す出来事は、私がこの場に来る前に発見したものについて…になります」
「この場に来る前……ですか?それはいったい………ここで起きた火災…もしくは、この遺体に関係するもの、ということでしょうか?」
サペールは疑問に思っていた。そんな情報を持っているのであれば、検視を終わらせる為にも真っ先に情報提供をするはずだと。
情報を渡さないということは、その情報はカナリス側にとって、不利益を被るものと判断してしまう。
順当に考えればそうなるのだが……その仮定だと、これまでのクラヌキの態度から違和感を感じる。
クラヌキは先程、「カナリスからここへ至るルートで発見したものは無い」と発言しているが、ペナルティが発生していないことから、それは虚偽の言動に該当しないものとなる。
だが、カルサはクラヌキが〝何か〟を隠していることを、看破しているかのような立ち回りをしていた。
これらの情報から分かるのは、クラヌキにとっては“虚偽の言動“に該当しないが、カルサ視点ではクラヌキが、なんらかの〝重要なもの〟を意図的に伏せているように見えていた、ということか?
「先に言っておかなければならない事が、一つあります。私はこの場には『カナリス方面からではなくバトメ方面から』来ました。詳しい詳細は伏せさせていただきます」
「……!?」
「どど、どういうことですう!?」
「バトメ方面から……ですか?」
クラヌキとカルサを除いた3人は、驚きの表情を見せる。どうやら、クラヌキがバトメから現場へと来たことは、カナリス陣営の2人も知らなかったようだ。
やはり、身内にも隠していたか…カナリスも一枚岩では無いということか。それとも、国境警備隊の上層部は知り得たが、下の人間への情報は限定されているのだろうか。
「お前の言動を聞いていれば、大体の察しはついた。時間が惜しい、お前が道中で見つけたものを出してもらおうか」
「はい。私が〝これら〟を見つけたのは奇跡と言えるでしょう。サペール殿ほどの手練れであれば、ここら一帯の魔力探知は容易いのでしょうが、魔力を帯びた煙が蔓延する、この状況下では私の魔力探知では広範囲をアバウトに探知することは出来ても、細かい罠や全力で潜伏に徹している、暗殺者のような輩を見逃してしまうので、それだと危険と判断して広範囲では無く、私の半径5メートル圏内を常にサーチし続けながら、移動を開始しました」
「なるほど……私が結界を張る前に、半径200メートルの範囲を魔力探知したことに対して、クラヌキさんが、少し関心を持っているように見えたのは、そのせいでしょうか?」
誓約書が有効な今だからこそ、検視が始まる前の違和感を口にする。
「ええ、そうですね。広範囲を一瞬で索敵したので驚きました。」
その返答を聞き、最悪のケースは回避できた———そう思いサペールとカルサは胸を撫で下ろす。
最悪のケース、それは———クラヌキが今回起こった火災及び、銀星であるハーキュリー・クトグア殺害の主犯であることだ。だが、今のクラヌキの発言を聞いた限りでは、その可能性が極めて低くなった。
おそらくだが、火災によって生じたこの〝煙〟は犯人にとっても、予想外の出来事である可能性が高い。遠離の森という魔力濃度の高い土地で、火災を発生させた結果として〝魔力を帯びた煙〟が生じていると思われる。
これは、〝火災〟か〝ハーキュリー・クトグアの殺害〟のどちらが目的かで見方は変わってくるが、起きている現状の事態から、十中八九ハーキュリー・クトグアの殺害だろう。
現状では、火災による主犯が受ける恩恵が見えない事からそう言える。
火災と違い、ハーキュリー・クトグア殺害によって、恩恵を受ける者は数多く存在する。
その者達は、敵勢力や中立者を問わず〝法木天〟内にも居るだろう。




