遠離の森③
「私は動かしていません」
「私も動かしていません」
「間違いなく動かしていません!」
クラヌキ、ワルド、チギの順にサペールへ返答した。
「分かりました、ありがとうございます。第三者の存在を想定しない場合、遺体はあくまでも動いていない、ということになります。それでは遺体の第一発見者はどなたでしょうか?また、覚えていれば時間も教えていただきたい」
「第一発見者は私とチギです。火災の鎮火にあたっている際に発見しました。どちらが先か……というと難しいのですが、チギとほぼ同じタイミングで遺体が目に入ったと思います」
「見つけたタイミングについて、ワルドさんと同意見です!ちなみに発見時刻は7時26分でした。私の腕時計で確認したので間違いないです!」
ワルドとチギ両名ともに、発見時の様子について発言した。
「なるほど……クラヌキさんは、その場には居合わせなかったのでしょうか?」
サペールがクラヌキへと質問を投げかける。
「私は『不審な遺体を発見した』という報告を受けて、現場へ駆けつけました」
クラヌキは淡々と答える。
「なぜ、お前が〝ここ〟へ来るんだ?そういう役割なのか?それとも2人から名指しで呼ばれたのか?」
カルサは2人の会話に口をはさんだ。傍から見たら喧嘩腰とも捉えられかねない口調である。
「2人に呼ばれて来たわけでは無いです。私はカナリスの……上層部からの指令で駆けつけました。質問については以上です。こちらからも一つお尋ねしたいことがあります。サンウェナスの———ましてや法木天所属の方が、なぜバトメに滞在されていたのでしょうか?差し支えなければ、お聞きしたいです」
クラヌキは口早に返答をし、カルサへと質問をし返した。
「ははっ!お前は何を焦っている?動揺が見え見えだぞ?」
カルサはクラヌキを煽り立てる。
先程のクラヌキの返答———そこに、クラヌキが初めて言葉に詰まる場面があった。『カナリスの』という言動の後に言葉を選んでいた。
おそらく〝虚偽の言動〟に該当しないように『上層部』と答えた……『カナリス上層部から』というのは間違いでは無いが、指令が来たのは普段名乗っている所属だから、それを思わず名乗ってしまいそうになった、ということだろうか?
「私は貴方の質問へ返答しましたが、あなたは私の質問には答えられない。ということでしょうか?」
クラヌキは再びカルサへ返答を問う。
「何を勘違いしている?私が質問に答えないとは言ってないだろ?」
カルサは再びクラヌキに対して挑発するような態度をとる。
「バトメには、約一年前に小国密集地域の一国で起きた事件についての調査で訪問していた。もし怪しいと疑うなら、バトメの政治機関に聞けばいい。お前と違って我々は突かれて痛いところは無いからな」
そもそも、確認などしなくても〝虚偽の言動〟のペナルティが発生していないことから、真実であることが証明されるが、カルサは挑発するように敢えて〝バトメ〟へ確認するように促す。
「答えていただき、ありがとうございます。星態現象Ⅷについての調査でしょうか?バトメへの確認は検討いたします」
クラヌキはカルサへの言動が、真実と分かりつつもバトメへの確認については言葉を濁す。
「ああ、星態現象Ⅷについて調査してきた。ところでクラヌキ、私は質問に答えたんだ、お前も答えてもらうぞ?お前はカナリスからここへ来る道中で〝なに〟を見つけた?」
「申し訳ありませんが、質問の意図がわかりません」
あくまでクラヌキは“意図がわからない“という返答をする。ペナルティが発生しない事から、クラヌキは本当に質問の意図がわからない、ということになる。だいぶ絞れてきた———あとは理詰めと行こうか。
「ほう、まず最初にお前は———」
「状況証拠から見て、我々と同じ法木天所属のハーキュリー•クトグア氏の可能性が高いです」
カルサの言葉を遮ったのは、サペールだった。
カルサとクラヌキが舌戦を交える中でも、サペールは冷静に検視を続けていた。




