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14話 流れ星


 「さっきから何を考えているか分からんが、君にこの状況を打破することは出来ない」


俺が森で出会った女について、話そうか悩んでいると、しびれを切らしたのかコートの男が再び話しだした。


「私に子供を嬲る趣味は無いんだが………もうそろそろ、君との問答にも飽きてきたところだ。仲間の居場所は?近くに二人潜んでるのは分かっている」


 近くに潜んでいる……!!?

 ロイと女が周辺まで来ているのか…?


 「君が危機的状況にあるにも関わらず、助けに来ない様子から、どうやら君は見捨てられたようだが」


 男がそう言ったあとに、俺の右腕に気味の悪い気配がまとわりついてきた。


 また!!この感覚だ……!!

 気配を感じ取ったので、コートの男が再び攻撃を仕掛けてくると察知し、右腕に魔力を込めようとした時、違和感に気付く。

 何故だ……魔力で右腕を強化することができない。


 どうなっている?俺は慌てて他の部位に魔力を込めようとするが……強化しているはずの部位に魔力が行き渡らない。


 理由は不明だが———どうやら俺は体内の魔力を操作できなくなっている!?

 

 俺が動揺していると、男は仰向けになっている俺に馬乗りになり、俺の右前腕と上腕を掴んできた。


 次の瞬間、俺の右腕に重い衝撃が走る。


 『バキッ』

 鈍い音が鳴ったあとに、じんじんとした痛みが右腕を支配した。


 「あああああああ!!!!!」


 叫びながら痛みの先へと目を向けると、俺の右肘は本来関節が曲がる方向とは逆の向きに曲がっていた。


 「今のは相当堪えたか。いつもは指から行くのだが、今回は時間がないから腕から行かせてもらった」

 コートの男は、前腕と上腕を掴んだまま俺の顔を見てそう呟いた。


 「仲間の詳細について答えろ。答えない場合、次は左腕を折る」

 男は無慈悲にも、そう言い放った。


 「……ま!まて!!ほんとに知らないんだ!」


 「話にならんな。」


 俺にはどの選択が正しいかわからない。


 だが、一つだけ言い切れることは、この状況を見ていてロイが助けに来ないはずがないので、男がさっき言っていた『この周辺に潜んでいる』というのはブラフだと思っていい。


 いや、———そう思いたいだけかもしれない。


 ロイがこの状況を見ても静観している。という考えを捨てたいだけだ。


 嫌な考えを取り除こうと思考を巡らせていると、ふと気づく。


 ———コートの男が静止していることに。いや…静止しているのかは分からない。


 こちらの出方を伺っているだけかも知れない………だが、いずれにせよ先程までの交戦的な勢いが男には無かった。


 なぜ、先程までの勢いが無くなったのか気になり、俺は意を決して恐る恐る男の顔に視線を向けた。


 すると、驚くことに男はひたすらに真上を見ていた。正確には、『夜空』を見つめていた、というべきだろうか。


 俺の頭では理解が追いつかなかった。なぜ、男は急に夜空を見上げて、固まってしまったのだろうか?

 もしかしたら、今のうちに逃げれるのでは?そんな考えが頭の中に過った瞬間———男の口が開いた。


 「なぜ———ここに」


 男が言葉を発した直後に、大きな流れ星が空を———星屑が彩る闇の中をゆっくりと横切った。


 これほどまでに大きな流れ星を見た事がなかったが、どこか懐かしさを感じた。


 流れ星が空を横切った後に、一つの疑問が浮かんで来る。

 男の一連の素振りは、まるで『流れ星が降る事が事前にわかっていたような』素振りだった。


 男は夜空を注視していたから、事前に知る事ができただけか?


 それとも、俺が動揺していて気が回らなかっただけか?


 いずれにせよ、この違和感は今の状況を打開する糸口になるかも知れない!


 流れ星が通り過ぎた後、男の顔は俺の方向に向いていたが、考え事をしているのか、身体は胸の前で両手を固く握り合わせたまま微動だにしなかった。


 その格好は幼少期に見た、祖母が『お祈り』をしているような光景だった。


 顔はこちらを向いているが、今が千載一遇の逃げるチャンスかも知れない!と考え、魔力操作を行おうとした瞬間———クソッ!!まだ魔力操作ができない!?このまま逃げようとしても、今の状態では鍛えているとは言え、ただの子供の脚力で逃走することになる………それだと直ぐに捕まってしまう。


 男が硬直している間に、何か打開策を考えないと———俺は折られた右腕の痛みなど意に介さず、思考を深く落とした。


 まず、男が『特異な能力を保有』している場合、それが何なのか考え得るものを上げていく。


 一つ目、未来予知。

 これは流れ星が降る事を予測したことから、先に起こるであろう出来事を予測する能力。

 男が言っている「近くに二人潜んでいる」というのは、『この場所に男の知らない人物が二人駆けつけて来る』という内容の未来を予知しているから、確信を持って俺を尋問していたのかも知れない。


 おそらく、二人来ることは分かっていても、その人物がどういう人物かまでは、予知できなかったから俺を尋問して、その人物が来るまでに正体を探ろうとしていたのか?


 男の攻撃を避けた時に驚いていたことから、大きな出来事は予知できても細かい未来は予知できない可能性が高い。


 二つ目、広範囲で周辺の状況を把握する能力。俺の魔力探知の何倍もの範囲を把握できるのであれば、おそらく森で遭遇した女や、何処かにいるロイが男の探知能力に引っかかった可能性がある。


 その情報を根拠に俺を尋問していた?


 流れ星に関しても、同様に広範囲な探知能力に引っかかった為、事前に降る事がわかっていた?


 だが………その場合、違和感がある。男は探知能力を上に向けていたのか?本来なら魔力探知は術者を中心にドーム状に展開される。


 応用として広範囲な索敵をかける場合は、前方の状況をより知りたい場合は前方のみ、後方をより知りたい場合は後方に対してのみ魔力探知を行う事ができるが、コートの男は空を警戒していたのか?


 それとも———俺の知る魔力探知とは全く異なる物なのか?


 それに……流れ星については、確かに一際存在感のある大きなものだったが、コートの男の意識がそちらに釘付けになるくらい、重要なものだったのだろうか?


 「祈りは捧げた———疑わしきは罰せずとは言うが、そう言う状況では無くなったので君を処刑する。処刑人はハーキュリー・クトグアが行う。これは通告だ」


 「———は!?」

 なんの脈絡も無く、突然語り出した男に驚き、俺は思わず声を出してしまう。


 「ハーキュリー・クトグアとは私の名であり、処刑するとは、君の命を奪うと言うことだ。これは決定事項であり、君にはこれを知る義務があるので通告している」


 目の前のコートを着た男———ハーキュリー・クトグアは丁寧に説明してきた。


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