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12話 イレギュラー


 いずれにせよ、再び確認しなければならない。

 だが、問題がある。それは———今日だけで"鑑定"を6回も使用している点だ。



 今日の任務は、ターゲットを始末するのに相手の能力を"鑑定"して、情報を魔道具“ポスレター”に鑑定結果を書き記し、相手の情報を『黒鳥』のポスレターに送信して私の役割は終わりのはずだった………。




 しかし、実際は甘く無かった。

 ターゲットを補足するのに時間がかかり、鑑定を三回も失敗してしまった。これに関しては、相手が相手なだけに仕方の無いことではあるが……問題は"炎の保護陣"がターゲットを始末してから使用できない点だ。


 こんなのは完全に予想外だ。ターゲットには物理的に触れられていない、ましてや私は戦闘には参加していない。

 しかも、ターゲットの鑑定結果には『能力を封じる類いの"能力"』は持って無かったはず。それにもかかわらず、何故?いつ?どのタイミングで私の能力が封じられたのか……それが分からない点が不気味だ。


 ざっくりとだが、任務の経緯はこうだ。


 ターゲットを鑑定→鑑定結果を黒鳥に共有→離脱→黒鳥とターゲットの戦闘開始→戦闘終了後に再び戻り→ターゲットの遺体を確認して、その後ターゲットの首を切断する。



 しかし、予期せぬ出来事が起こった。

 首を切断する前に、邪魔が入らないように炎の保護陣(フレイムルーム)を展開しようとした結果———能力を行使出来なかった。


 こんな感覚は初めてだ。即座に近くにあった家に入り、姿見を探した。

 寝室と思わしき部屋で、目当てのものを発見したので、私はすぐに鏡の前に立ち自分自身を鑑定した。


 鏡の中の私は———灰色の〝もや〟で包まれていた。


 任務で様々な人物を観てきたが、この〝もや〟は能力を制限、または封じられている時に出るものだ。


 私の能力を封じた相手は?可能性は二つ、ターゲットの二人の内のどちらかだが……二人とも死んでいる。それとも———呪い(カース)か?


 能力の術者が死亡した後も、相手にかけた術が解けなかった前例はある。

 その場合、教会で術を解いてもらうか、教会でも解けない場合は……それなりの特殊な手段を取るしかない。つまり、現状出来ることは無いということだ。


 私は頭を抱えた。その後すぐに能力が封じられている旨を、ポスレターに書き込み黒鳥に伝えた。

 すると、黒鳥からポスレターに文章が返ってきた。


 『君ほどでは無いが、私も結界を張ることが出来るから大丈夫だよ。第一、この任務での君の仕事は敵を鑑定することだから、その役目は十分に果たしている。』


 その文に目を通していると、続いて文字が表示されていく。


 『数秒後に、君の周囲に結界を展開する』


 伝達通りその数秒後に、ターゲットの遺体の周辺に結界が張られていくのが分かった。



 私は、結界が完全に構築されたことを確認すると、遺体の首を刎ねて頭部の切断面に腐敗遅効の魔術(キーブ)を掛けた。



 この魔術は効果を付与する箇所に5分間、付与したい箇所から手を離さずに触れていなければならない。

 効果を付与している間は、無防備になるので結界術や何かしらの防衛術は必須である。



 それにしても、気味が悪いな………能力が封じられたのも、この気持ちを加速させた要因の一つだが、根本的な原因は他にある。



 なぜそう思うかというと、こんな気分になっているのは任務が始まる前から続いているからだ。


 厳密に言うと、原因は『黒鳥』に対する不信感だ。



 噂でしか聞いたことが無かった都市伝説の『黒鳥』との任務で期待していたが、当の本人である黒鳥は任務が始まる前から、ターゲットを始末した後でさえも私の前に姿を現さず、情報のやり取りは魔道具を介して行っている。


 任務についても、始まりから終わりまで黒鳥からその都度、連絡が来てそれに従うというものだ。


 顔合わせも無し。端的に言えば、現地で能力を使い自分の役割が終われば解散である。まぁ、私はターゲットの頭を引き渡し場所まで、持って行く必要があるが。


 それに付け加え、“上”から厳重に言いつけられているルールが二つあった。


 その一、黒鳥の戦闘中は規定の範囲内には入らないこと。そして視線は黒鳥の戦闘領域の反対側に向けること。この『規定の範囲』については、魔道具を介して黒鳥から連絡が来るので、その指示に従うこと。


 そのニ、黒鳥に対して“鑑定”を使用しないこと。

 これに関しては、完全に私に対してピンポイントで言っていることだ。“鑑定”持ちなんて、そうそう居るものでは無いからな。


 任務を受ける前に、これらの条件を全て呑む“誓い”を組織と結んでいるので、逆らうことは出来ない。このルールを破った瞬間、強力な呪い〝カース〟が掛けられる。


 年齢、性別、背格好、全てが不明である。どうりで、黒鳥の存在が都市伝説と言われているわけだ。



 そんなことを考えていると、ポスレターに文章が表示されはじめた。

 

 『あと一つ、お願いできるかな?周辺に敵影が居ないか確認してもらいたい』

 一瞬、身体が硬直した。


 黒鳥に思考が読まれて、余計な詮索をしていると思われ、口封じされるのでは無いかと恐れたが、それは杞憂だった。

 私は黒鳥にポスレターを介して了承する旨を伝えた。



 今日は散々だ。能力は封じられるし、得体の知れない少年兵には合うし、おまけに今日一日で"鑑定"を6回も使っている。

 次に鑑定を使用したら、約半日は使えなくなる。


 本当に、今この少年を鑑定するべきだろうか?


 もしもの時のために、最後の一回はいつも温存している………この一回はあって無いようなものだ。


 鑑定の回数は最大で7回ストックできる。12時間で1回復する、全快になるのに三日半かかる。


 最初に使ったのが1時間前だとして……11時間もの間、能力が封じられていて、瞳術も使えないとなると………緊急事態には自身の剣術と魔力操作のみで対応しなければならない。


 ———それはあまりにも無防備だ。


 少し手荒な真似にはなるが……この少年が次の私の質問に対して、まともに答えなかった場合、アリナから譲り受けた『朱効石』を使い少年の魔力器官を潰させてもらおう。

 これ以上、この少年と駆け引きをしても時間の無駄だからな。


 魔力器官さえ潰せば、能力に覚醒していても魔力出力が0に等しくなり、魔力暴走の危険性も無くなる。———その後に尋問すれば問題ない。


 これだから、イレギュラーな任務は受けたくない。まあ、名指しで指名されている以上、私に拒否権は無いんだが。


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