11話 可能性
男は再び、目の前の少年に対して思考する。
私のブラフに引っかから無かったか。それとも、『魔力を込める』という意味が理解できていなかったのだろうか…?
もしくは気が動転していて、聞いていなかったのか?
それにしても、さっきからこの少年は吐いてばかりだ…無理もない。
いくら少年兵といえど、目の前で生首を二つも見てしまえば気が動転するだろう。
どれだけ訓練で鍛え上げられても実際の戦場の空気とは違うものだからな。
———それ故に、とてつもない違和感がある。
さっきから動揺しているように見える———にも関わらず、この少年は私の一撃を防いだどころか二撃目も防いで見せた。
二撃目に関してはピンポイントで足を強化して守っていた。
攻撃が来るタイミングだけでは無く『どこが狙われているか』まで分かっていた?
初めて視認した際に、"鑑定"したがこの少年には現状、特異能力や魔眼は備わっていない。
だが、決して油断は出来ない…………何故なら、とてつもない気配を纏っているからだ。
それに、少年の気配に比べたら弱いが、張り付くように〝二つ〟似たような気配を最初に行った“鑑定”によって感知している。
このことから分かる事実は、少年とは別で2人の仲間が近くに潜んでいるということだ。
しかも、この気配は三つとも〝金星〟に似たものを強く感じる。つまり、3人とも何らかの“加護”に附随する、何かを持っている可能性が高いが、鑑定時の様子から見るに、まだ現状では開花していないようだ。
だが、なんらかの特異な能力も無しで偶然で避け続けているのは、あまりに出来すぎている。
何か私は他の可能性を見落としているのか………いや、あるだろ———可能性なら。
イレギュラー中のイレギュラー………そして、俺が頭の片隅に置いていた、思い出したくない出来事。
衝撃的な光景を目の当たりにして———この短時間のうちに覚醒した可能性。
極限状態に追い込まれたものが、能力に覚醒した事例は過去に何十件もある。
酷いものだと、拳闘場に出場していた奴隷が瀕死になり、その光景を見た、奴隷の兄が能力に開花して拳闘場に居たほとんどの人間を殺害してしまった、というケースもある。
当然のことながら、拳闘場には出場する選手や奴隷の中にはかなりの手練れも居る。その選手や奴隷が暴れた際に、押さえ込めるように洗練された傭兵も雇っていたそうだが………惨劇は起きてしまった。
その日の拳闘場は600席に対して450席が売れていたという話だが、生存者は数えるほどしかいなかった。その数わずか———17人である。
驚くことに生存者には共通点があった。生存者は全員が13歳未満の男児だった。
流石に子供は狙わなかったのだろうか?そう思ったが死者の中には女児が数人居た。
なんとも忌々しい事件ではあるが、問題はそこでは無い。
この拳闘場には当時の私の上司が居たにもかかわらず、この惨劇を止めるどころか殺害されている点にある。
その上司は、かなり腕の立つ武人であったにもかかわらず殺害されたのだ。
—————————それほどまでに、突発的に能力に覚醒した者は危険である。
さらに、それとは別で能力を完全に扱えなかった場合の懸念点もある。
能力に覚醒したばかりの者は、能力の使い方が分からず能力に対しての魔力出力を見誤り、魔力暴走を引き起こしやすい。
それが怒りに身を任せた状態や、極度の緊張状態ならば尚のこと。
覚醒していた場合、制御できる出来ないにかかわらず、存在そのものが危険である。




