605:大量生贄消費時代の到来
商都梅田。鉄道のレールに、人間・畜生・修羅・餓鬼、様々な種族が何十人も縛り付けられている。レールの先には電車。
「さすがに微罪でも死刑は無茶やろ。」
「仕方あらへん。図書館都市ダンジョンに対抗するためには、大量の生贄が必要や。そんで、商都梅田の本質は駅。電車で轢くのが一番っちゅう結論や。図書館都市ダンジョンやったら『本打刑』言うて罪人に大勢で本を投げつける。」
「その図書館都市やったら『あなた方のうちで罪のない者が最初に本を投げなさい』って言って、誰も本を投げなければ処刑は中止や。中止はできへんのか。」
「転轍機を切り替えて、罪人のどちらを轢き殺すか選ばせてやってもええ。あるいは跨線橋から太った男を突き落として電車を止めてもええ。」
玉造次郎三郎が目を覚ますと、新幹線の車内。
なお、実際の図書館都市ダンジョンでは死刑はギロチンで殺人のみに適用され、住民の犯罪者に対しては本打刑も焚書刑(本による火炙り)も残酷すぎると行わない。特に本打刑は絶命までに石打刑以上に時間を要し、きわめて苦痛が多いとされる。
【新幹線車内】
海豚池ダンジョン付近は犬山や猿山があり獣人が多く、ダンジョンのすぐ北にも物置洞・岩穴洞、あるは虎熊といった小集落、というか動物の巣がある。その中に位置するのが「新海豚」。
新幹線は、南北に山が見える比較的広い谷を走り、新蝮、新泉、新朱鷺(位置的には土岐ではなく瑞浪だが)、さらに、蓑鴨や蟹の方面から来る「中山路」と合流し新大井、新中津……そして終点にして従来のダンジョン影響圏の端、読書村が終点。
「と、地図には書いとる。」
ようやっと起きてきた商都梅田の玉造次郎三郎。
「あの、迷迭香の塔は、やはり何十万人も殺しているのでしょうか。」
アスカのトウモロコシ修羅、ゼア・マイス・エロトル。
「そりゃ、規格外の大きさやから、そうなるやろ。商都梅田は第一層群の地下だけで2万、たぶん全部で10万は住んどるから、毎年2,000人くらいは自然に死んどる計算や。100年やと20万。それよりは確実に多いやろ。」
かつて「小塚原刑場ダンジョン」が複数の異世界から刑死者を複製転移させて使役したため、人数は多い。
「ふむ。ダンジョンが大規模化し、殺した数を競う時代になったのなら、いろいろ面倒だな。」
畝傍艦のイチイガシ修羅、クエルクス・ギルバ従一位艦長、橿原トリヤ
「アスカの亀石みたいなのは、なんの効果もあらへんやろな。そもそもダンジョン影響圏内で人を殺す訳やあらへん。」
アスカの亀石は、誰の物でも無い土地に『亀の瀬』を作り、地滑りで相手の村やダンジョンを直接埋めたり、涸れ川を堰き止めて洪水に沈める物。
「ダンジョンの中で殺さないといけないから、外征しても捕まえた捕虜しか計算に入らないか。」
「ま、普通の、冒険者が来て産物、魚とかを漁って、たまに運悪く怪物に喰われたり波に流される。なんちゅうダンジョンは時代遅れやな。どないしても数に制約がある。となると、内部の人口を大幅に殖やして寿命が尽きる者も増やすか、アスカの『花の戦争』みたいに生贄狩りをするか。や。」
「だが、人間牧場は食糧供給の問題で破綻しやすい。と聞くが。畝傍艦でも人口は殖やさないように心がけている。」
「橿原艦長、『破綻しやすい』やのうて、確実に破綻する。や。修羅・畜生・餓鬼はそないに殖えへんから、『人間牧場』って言う通り人間が中心になる。そやけど人間は急速に殖えるから、長くても200年もあれば殖えすぎる。そこで慌てて人口を抑えようとしても手遅れで、必ず300年以内に破綻する。っちゅうのが過去の事例や。」
「商都梅田含め、かなり人口が多いダンジョンもあるが、急には殖やさないよう心掛けている。か。」
「そや。」
「それで、もう一つの『花の戦争』はどうなのです。」
「アスカかて、あんまし上手くは行っとらへんやろ。相手が居る話やから。理論的には生贄を『買う』ちゅう方法もあり得るけど、大量の生贄を買うために大量にダンジョン産物をばらまいたら、じきに価格が暴落する。そやけど産物を生成するために必要なダンジョンの力は一緒やから、結局生贄が買えなくなっておしまいや。」




