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606:全翼機翼竜

【第三層群屋上庭園】


「アスカ……アステカ……。マスター、使者が来たら確認したいことがありますね。『ケツァルコアトルス』は居るのか。と。」

「ケツァルコアトル? 確か飛行機だったか。」

「正確には違いますね。ケツァルコアトルス・ノルトロピ。名前の由来は初期型が100年前に開発された全翼旅客機『ノー■ロップ・ケツァルコアトル』ですが、こちらは大型の翼竜ですね。羽の幅が10mを越える、地球史上最大級の飛行生物です。1971年に発見され、1975年に旅客機のケツァルコアトルにちなんで命名されました。この時、全翼機の開発者の許可を取ったかは不明ですね。ケツァルコアトルはアステカの神であり、アスカがアステカの要素を持つ以上、もしかしたら翼竜を入手可能かもしれません。」


「アステカダンジョンと翼竜?」

「はい。居れば本格的な航空偵察が可能かもしれません。ドラゴンは自重で潰れるためダンジョンから出られない。というのは有名な話ですが、恐竜なら過去の地球に存在した生物ですから、もし存在したならばダンジョンの外で運用可能かもしれませんね。」

「獣人ならぬ翼竜人か。」


「知能を持つには十分な大きさの脳が必要ですが、翼竜の大きく軽い頭に重い脳を入れると空力的な問題が生じる可能性があります。あらかたの鳥人がダンジョン外で飛行出来ないのは単に大きさの問題ですから、翼竜なら1kgを越える脳を持って飛行することも可能かもしれませんが。」

「で、翼竜人ではないただの翼竜の場合、どうやって偵察するんだ。動物の馬みたいに乗るとか。馬脚なら乗ると言うより背負われるだから技量は要らないが、翼竜は馬以上に乗りこなすのは大変ではないか。」

 馬脚は下半身と目・耳が馬の半獣人で直立二足歩行するため、騎乗は岡藩主の中川久清のように背負われることになる。

「体重が軽ければ、ハンググライダーのように人がぶら下がって飛行することも可能と思われます。航空力学的に、騎兵みたいに背中に乗るのは不可能でしょう。飛行可能な翼竜人が居ればそれで片付きますが……やはり翼竜人には問題がありますね。」


「マリーさん、問題って何か?」

「翼竜は羽を広げて飛行しますから、翼竜人は何かを発見しても手が使えないのでカメラでの撮影もメモを取ることもできませんね。やはりハンググライダー方式にして、かつ乗り手に鉄砲を持たせれば記録も、そして自衛も可能です。つまり竜騎兵ですね。」

「竜に乗るから竜騎兵。ではなく、銃を持った騎兵が竜騎兵だったな。」

「はい。大抵は馬ですが、別にラクダでも翼竜でも、ダンジョン内限定になりますがドラゴンでも構いませんね。この世界では騎馬鉄砲隊はあっても『竜騎兵』という言い方はしませんが。」


「ただ、アスカに翼竜が居るとは限らないわけで。」

「はい。その上、なにぶん化石生物なので正確なことは不明で、実は飛行が苦手。という研究もあり、期待外れの可能性もあります。」


「まだ飛行機ダンジョンの方が可能性が高い気もする。」

「ともかく、この世界、対応するダンジョンが無いと何も入手出来ませんからね。無ければ作る。というのも前提条件が厳しすぎて現実的ではありません。この世界の工業力ではネジ1本作ることが出来ませんね。もちろんネジは高度な技術が必要で、21世紀であっても特に精度や強度を要する物はアメリカ製が好まれますが。」


「それで、マリーさん、推定される性能はどんなものか。」

「もし上昇気流を活用する場合、昼しか長距離飛行は出来ませんから、時速60kmで10時間飛行するなら行動半径は300km。余裕を見てダンジョン影響圏の端から200kmといったところでしょう。渡り鳥なら何千キロも飛行出来る種類も居ますが、ケツァルコアトルスの飛行能力はもちろん不明です。」

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