603:さて、どうすればよいのか
【新幹線車内】
「新幹線」は仮設軌道の上をガタガタとかなりの速さですっ飛ばしていく。とはいえ異世界の新幹線と比べたら半分以下の速度だが。
「揺れ……る……全然……寝られ……へん。」
眠いのに寝られない玉造次郎三郎。
「商都梅田の電車より揺れるな。」
「保線……線路の手入れが悪いんやろ。電車ダンジョンやあらへんから技術も人材も足りへんのやないか。」
「ダンジョンの産物は、そのダンジョンに関係する物だけだからな。」
納得する橿原トリヤ。
「う……吐き気が酷い……頭が痛い……こんなの電車やない。人間の乗り物やあらへん。」
玉造次郎三郎はダウンしてしまう。
「……。」
「……。」
気まずい沈黙が続く車内。
「あの……。」
「何か。アスカの若いの。」
「迷迭香の塔に勝つ方法はあるでしょうか。」
アスカのゼア・マイス・エロトルが、畝傍艦の橿原トリヤに聞く。
「相手のダンジョンのことを何も知らないのに、勝つも負けるも無い。とはいえ、あの規模のダンジョン、配下の久米の子達を全員連れて行っても攻略は難しいだろう。そもそも、とんでもない高さがあるから頂上へ到達するのも不可能に近い。」
「アスカの亀石は遠すぎて手が届きません。畝傍艦の、あの、宴会に呼んで騙し討ちするって手は使えないでしょうか。」
エロトルは護衛の久米一族を見ながら言う。
「相手はダンジョンだからな。ダンジョンコアを宴会に呼ぶわけにもいかない。相手の要人を一網打尽にできれば弱体化するだろうが、それで決着付く相手とは限らない。あと、女装して宴会に潜り込んで暗殺。というのも相手も修羅なので高確率で無意味だ。」
クマソタケルはホモ趣味があり、女装を見抜いたものの「男の娘が一番萌える」と隣に座らせた挙げ句「アッー!」ってことになったが、紫蘇科で雌雄異株はシマムラサキなど少数派。なお、雌雄異株の植物は修羅も男女があり、性転換する植物は修羅も性転換する。
「……。」
「いずれにせよ、相手の意図が分からないと対処のしようもない。『他のダンジョンを全て破壊する』というのもあまりに合理性に欠けるし真意がどこにあるのか想像も出来ない。とはいえ、仮に迷迭香の塔と戦うにしても、高市郡には今井町の人間や高取城の餓鬼も居るから団結すらも難しいが。」
「ダンジョンは守りが圧倒的に有利なのに、迷迭香の塔の近くのダンジョンが容易に冒険者に攻略されている。というのが謎です。何か特殊な力があるのかも。」
目的は単に影響圏半径内のダンジョンの数を減らすことで、知性がないダンジョンばかりを攻略していることは知らない。
「それこそ亀石みたいな。か。あれは面倒だ。」
「亀石なら使える距離が限られていますが、迷迭香の塔の特殊な力がこちらまで届くかどうか分かりません。」
「届かないなら無視すれば良いが、届くなら問題だ。」
「聞いても答えてくれないのでは?」
「そこは、相手の反応を見て推測するしかないだろう。そこの寝ている人間は役に立たないが、ともかく、分かっていることを確認する。」
「最初は、お互いに相手のダンジョンに迷迭香の塔を嗾けて破壊する。という話だったのですが。」
「ならやまの生意気な短命種どもが迷迭香の塔を唆して、辺り一帯を踏み均してしまうのを防ぐ。という目的もあった。幸いコナラ修羅どもは来ていないようだが。まったく、自ら鉈で斬りつけて体に椎茸でも生やせば良いのに。」
異世界の江戸時代同様、椎茸栽培に「種菌」を使う方法は実用化されていない。




