602:もっとたくさんの図書館を
【第三層群屋上庭園】
「マリーさん、西方の3ダンジョン、商都梅田、石の神殿アスカ、畝傍艦から使者がこちらへ向かっている。」
「畝傍艦は知りませんが、梅田とアスカって宿敵ですよね。呉越同舟が必要な事態でもあったのでしょうか。」
「黍あたりが世界征服を始めたとか?」
「それが可能なら、最低限産業革命以降の工業製品を産するダンジョンがあるってことですね。いっそ、黍までダンジョン影響圏を広げられればよいのですが。」
「もっとたくさんの図書館。か。でも、異世界日本の図書館はあらかた複製召喚済みだが。」
「わたしは日本語の他に英語と、一応は中国語・フランス語が使えますから、アメリカ議会図書館と大英図書館、中華帝国の国家図書館と中華民国の上海図書館、フランス国立図書館あたりがあれば蔵書も充実しますし、これらの言語の図書館を複製召喚出来れば、この塔の高さも10倍以上にはなるでしょう。その方法は全く分かりませんが。」
「ただ、高さが高くなりすぎると、転送陣を使っても地上に降りるのに2時間くらい必要になりそうだ。」
「それも困りますね。日本語以外の図書館が召喚出来たら地下に埋めますが。」
「地熱と土圧がとんでもないことになりそうだ。」
「ですね。宇宙なら1気圧差ですが、世界の中心では400万気圧・7,000℃ほどになります。そこまで行かなくても地下深くでは本などたちまち蒸し焼きです。それに耐えるとなると相当なダンジョンエネルギーが必要でしょうね。」
「固有法則の代償か。自然法則を逸脱すればするだけダンジョンエネルギーが必要になるという。」
「だから、並のダンジョンはドラゴンなど維持出来ません。竜騎兵だって、現実的には大型翼竜をハンググライダーにして銃を撃つくらいでしょうね。」
騎乗して火器を使うのが竜騎兵なので、異世界ではほぼ馬に乗っている。ドラゴンに乗っていても鉄砲を使わないのは竜騎兵ではない。
「地上にあるダンジョンにとって航空兵器の運用は重要だな。」
「当然、攻撃側は物理的に飛行可能な物しか飛行できませんから、この世界ではダンジョン側が圧倒的に有利ですが、そもそもダンジョンエネルギーを消費するため多用もできませんね。大型ダンジョンでもドラゴンは最終的な切り札です。」
「このダンジョンではモンスターは召喚出来ないが。」
「あくまでも図書館ですからね。司書が1人も居ませんし入手の目処も立ちませんが。」
「輪廻転生だと修羅は最初脳が無いので技能を引き継げない、死体憑依召喚は方法が分からない。だったな。」
「何事もゼロから1。というのが一番困難ですね。1人居ればその人を繁殖させれば数は増やせます。」
普通は、教師として教育させる。馬脚ならば馬脚そのものを繁殖させないと、普通の馬を教育して馬脚にすることは出来ないが。なお、馬頭は体が人間なので走力は人間と大差無い。一般に獣人は獣の部分しか獣の能力を発揮できない。
「ともかく、西のダンジョンの要件を聞いてからだな。問題が黍とは限らない。」
「工業製品を産するダンジョンがあるとは限りません。ただ、このダンジョンは日本語が使われている世界からしか何も複製召喚出来ませんが、それ以外で進んだ世界があるかもしれませんね。」
「ローマ帝国が滅亡していなければ技術は1,000年早く進歩した。あたりか。」
「難しいでしょうね。産業革命が起きるには多数の条件が必要ですし、奴隷に依存した古代社会では技術革新の産業への応用は進みにくいと思われます。ラテン語の図書館を複製召喚出来れば分かるのでしょうが。」
「召喚しようにも、アレクサンドリア図書館は古代にマリーさんみたいに本を焼くのが好きな人が焼いてしまったからな。」
「わたしが聖キュリロスの輪廻転生者ってことは無いとは思います。もっとも、外道種族では無く六道の種族である以上、本人が何を信じていようが極楽往生しない限りは輪廻転生するので、確率ゼロとは断言できませんが。」
なお、アレクサンドリアの聖キュリロスが図書館を焼いたというのはマリーの誤解。
「ともかく、明日の朝一番に面会の予定だな。」
「この世界は不定時法なので、朝四ツ過ぎとします。この辺もいずれは変えたいのですが……。」
「変えると一揆。か。それにしても無駄に時間が掛かるな。」
「そもそもこの世界は対応する異世界より地理的にだいぶ広くなっていますし、異世界なら丹波市市の奈良空港(柳本空港)から戸田市の渋沢栄一空港(戸田空港)まで飛行機を使えば済みますが、この世界には飛行機がありませんからね。」
「世界自体の天文学的な大きさは大差無いと。」
「わずかに大きいだけですから、世界の裏側に西欧に対応する地域は無いのではないかという疑念がありますね。」
「ヨーロッパだけにエウロパにあるとか。」
「他の天体だと悪夢ですね。こちらが手を出せない間に技術開発を進められたら、一方的に征服されます。恐ろしいことに、この星系には酸素がある、つまり、おそらくダンジョンと何らかの知的生命体があると思われる天体が5つもあります。」
(おまけ)
この世界の太陽系。5惑星と太陽・月・少陽で八曜
太陽
- この世界では未確認
◎土星 やや黄色がかった土色の岩石惑星。1年は0.75年・太陽強度1.0。酸素あり
◎世界 直径は地球より3%大きく重さは1割重い
◎ 月 地球の9割ほど。文明あり。
◎木星 青色の海洋惑星(多島海世界)。1年は1.3年・太陽強度半分弱。ハビタブルゾーンの外だが凍っていない
◎金星 白い氷結惑星。1年は1.8年・太陽光は1/3。酸素あり
火星 赤くは無い木星型ガス惑星、公転周期12年
○ 1 極寒
2 極寒・小型
水星 暗いだけで黒くは無い天王星型氷惑星、公転周期18年
少陽(伴星):異世界太陽の8割、明るさは3割程度
林星 異世界木星の10倍のガス惑星。サイズは木星並、ハビタブルゾーン外縁
1 23時間、灼熱・小型
2 30時間、灼熱・小型
○ 3 昼と夜が1週間以上も続く
○希臘 前方L4
○瀞谷 後方L5
○蛭田 ヒルダ群、2:3共鳴軌道
○圖勒 チューレ群、3:4共鳴軌道
◎:大気に酸素を含む天体
○:サイズ的には居住可能と思われる天体、他の条件は不適なものも




