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595:領域拡張!領域拡張!そして領域拡張!

【第三層群屋上展望台・世界樹】


「♪高く、高く、雲より高く、大空目指すバベルの塔。数多(あまた)の知識をその身に宿し、世界を結ぶ核とならん~。」

 自分でバベルの塔の歌を選んだマリー。元より修羅は傲慢なものだが。


「マスター、余剰ダンジョン間引きの成果ですが、従来、ダンジョンの影響圏はコアやサブコアから放射状に拡がり、村や他のダンジョンといった障害物の裏側は陰になり影響圏に組み込めませんでした。」

「転送陣が遠回りになったり、五位鷺が飛べなかったりしたな。」

「これが、余分なダンジョンを大量に除去したことで、地域全体でダンジョンの力が伝わりやすくなったのでしょうね。陰になっていた部分も影響圏に組み込むことができました。また、影響圏の限界距離もいくらか拡がっている模様です。」

「大した成果だな。でも、マリーさん、他のダンジョンは別に影響圏が放射状になったりはしていないが。」

「理由は分かりませんが、何十年・何百年もかけてゆっくり影響圏を拡張しているからかもしれませんね。一方、このダンジョンは成立して5年弱と若いにもかかわらず、影響圏の広さは既知世界最大です。」


「既知世界と言っても世界全体の1割かそこらしか知られていないが。」

「人工衛星が必要ですが、対応するダンジョンが無いため入手は不可能です。」

「……ちょっと複雑な工業製品になると、この世界、どうしようも無いからな。」

「この世界に限らず異世界でも、文献だけでは水車すら製造は不可能ですからね。異世界日本は水車の実用化に何百年もかかりましたし、最期まで水車の建設に失敗した国すらあります。幸い、この世界には既に水車は存在しましたが。」


「それでも、どうしようも無ければ独自開発するしかないだろう。」

「残念ながら、この世界にはイギリス人が居ないので産業革命は出来ませんね。イギリス的な修羅や畜生で代用が効くかどうか。でも、それも数百万人規模で必要ですから現実的ではありません。」

「技術文明には前提条件が多いか。」


「宇宙人は絶対に居ない。と断言できるのは、全宇宙の星の数より生命発生の確率の方が桁違いに低いためです。生物が存在する。と言うこと自体が神仏の存在証明になりますね。さらに、技術文明の成立にも極めて厳しい条件が必要です。どんなに知能が高くてもタコやイルカは技術文明を生み出せませんし、人間でも多数の条件を満たす必要があります。」

「産業革命はイギリスにしか起こせなかった。か。」

「はい。古代ローマも中華文明もアラビアも社会的・宗教的に不可能でした。仮にアレクサンドリアの聖キュリロスが図書館を焼かなかったところで、ローマ帝国に産業革命は不可能でした。文化的にはいずれも『文化創造種』ですから、新しい文明を生み出す能力自体はありますが。」

 聖キュリロスは3人も居る。なお、アレクサンドリアの聖キュリロスは図書館を焼いた訳では無く、これはマリーの誤認。なお、マリーは本を焼いた「数」なら異世界の誰よりも多い。これは発行部数が極端に多い本は召喚コストがタダ同然になると言うダンジョンの仕様を悪用したもの。



【第三層群屋上庭園】


「まず、既知のダンジョンのうち、知能が無いと思われるダンジョンを討伐しています。」

 マリーは地図上で光る無数のダンジョンのうち、既に破壊したものを赤く表示する。マリーは紫外線を見ることが出来、地図ももっとカラフルに表記できるが、それではダンジョンマスターが識別出来ない。


「けっこうたくさんあるな。」

「はい。それに加え、ダンジョン影響圏に含まれない既存集落に、ダンジョン影響圏内への移転を勧めています。さすがにこちらは時間が掛かりますが。」

「強制は出来ないな。」

「そんな権限はありませんからね。村は基本的に自治をしていますから、外部の命令は嫌います。領主も基本的には間接統治ですね。そこで、既存集落に近いダンジョン影響圏内にダンジョンの機能で整備した村を作り、時間をかけてゆっくり移転を進めます。世代が変わり、既存の村が放棄されれば、跡地をダンジョン影響圏に組み込むことが出来ます。たぶん最期に墓地が影響圏に組み込めないまま残るでしょうが。」

 ダンジョンは誰かの所有物を吸収することはできない。それは土地であっても同じ。

「墓地は容易には移動させられないからな。」

「例えば、大宮から大津まで飛行機を使って墓参りすることになるわけですね。埼玉は渋沢栄一空港(戸田空港)が便利ですが、大津だと滋賀県内の八日市空港より城丹県の京都空港(久御山)の方が近かったりします。」

 新幹線が存在しない異世界基準。


「町中なら良いが、山奥だと墓参も大変だな。それでも内地なら熊が居ないだけマシか。」

 異世界日本では熊は台湾と北海道・樺太にしか居ない。


「そして、面倒なのは知能のあるダンジョンです。基本的には立ち入りを禁止してダンジョンエネルギーを断ちますが、言うことを聞かない冒険者が居ますからね。ほんと。」

 異世界でも、立ち入り禁止で施錠されているのに釣り人が何十人も死亡した防波堤。なんてものもある。

「冒険者だから危険を冒す者なんだろう。」

「高く売れる貴重な産物を産するダンジョン。なら分かりますが……。そういうダンジョンは最初から立ち入り禁止にしていません。この世界、そもそもダンジョン無しでは生活出来ませんからね。」


「それも、一番必要なダンジョンに限って存在しないという問題があるが。」

「ほんと、工業地帯を1セット持っていれば、鉱物資源など原材料を産出するダンジョンさえあれば何とでもなるのですが、世の中、そう上手くはいきませんからね。工業製品は図書館の備品や100年以上遅れた駅の備品など少数を除き、ほとんど入手不能です。」

 工場は作るわけにもいかない。

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