↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
585/610

585:不味い料理

 稲作作付面積百万町歩到達。為政者側にとっては一つの節目だが、個々の農家にとっては別に特別ではなく、単なるお祭りに過ぎない。今年もマリーが挨拶し、各村で田植えが行われる。



【第三層群屋上庭園】


前世紀(20世紀)にイギリスの『料理が不味かった』というのは、調理技術が未熟だったにもかかわらず(21世紀後半)と同様に単に個人主義で合理主義だからです。個人主義なので、食べる人が机の上の調味料で自分で味付けします。そして、合理主義なので『料理に味なんか不要』とわざわざ味付けまではしません。つまり、修羅みたいに味覚が無いわけでは無く、重きを置かない。ですね。今は食材と調理法の改善で、味付けを省いても問題無く食べられますが。」

 マリーは、汚らしい緑色で、夏場の藻が湧いたドブの味がする液体を飲みながら言う。この世界の修羅の食事は最悪期のイギリス料理以下。

「合理的ではあるんだろうが。」


「それもあるでしょうが、ライバルのフランスに対する、ある種の信念でしょうね。腐ったビールと蛆の湧いたビスケットに耐えられないなら、覇権国家にはなれない。と言います。」

「それなら、覇権国家にならなくても良いな。この世界には海が無いためか覇権国家は成立していないが。」


「確かに、獣人の中でも猫は非常に味に拘りますね。このダンジョン産の眷属達の食事は珍しく缶ビール・ブラックコーヒー・エナジードリンクなどですが。」

 大抵の獣人にはカフェインは有毒。だが、ダンジョン産モンスターやその子孫は食性が通常と異なる例もある。


「そういうダンジョンだからか。元々は図書館猫はネズミを排除するためだったそうだが。」

「ネズミとかハゲネズミ、つまりコウモリとか、図書館に棲み着く害獣対策ですね。ただ、動物の猫は頭の黒い鼠にはあまり効果は無さそうですが。」

 ハゲネズミは日本では豊臣秀吉だが、フランスではコウモリを指す。猫が蝙蝠を食べる? 猫が蝙蝠を食べる? 時々 蝙蝠が猫を食べる?


「コウモリは狂犬病の保菌者なので、食べるのは好ましくは無いな。」

「確かに狂犬は犬獣人の狂犬隊だけで十分ですね。病院ダンジョンを見つけ次第、狂犬病は根絶させましょう。」

「あと、『茶色の狂犬』ゴールドスミス……」

「騎手を放り投げるような馬は、このダンジョンでは扱いきれません。源頼朝ならともかく。言葉が通じる馬脚(半馬人)を殖やした方が良いのですが、獣人は人間どころか動物ほどにも殖えないのが逆に問題になりますね。もっとも、獣人まで人間並に急速に殖えたら、このダンジョンはすぐにマルサスの泥沼に沈んでしまいます。」

 マリーはマルサス・ダーウィン主義。つまり人口抑制と人種改良を主張する優生学政党「進化党」であり、「人種改良を国策に」「犯罪者は断種すべき」というのが党の主張。世界大戦でドイツが解体され、ヒトラーが平凡な建築家として生涯を終えた世界なので、ホロコーストも無く優生学はタブー化していない。


「修羅もなかなか殖えないが、一方、植物はやたら繁殖するな。」

「ダンジョンモンスターは生きていないので当然繁殖しませんが、名前付き(ネームド)名前有り一般(ネームドモブ)は自我がある生物なのでダンジョンの命令に従わないこともありますし、その子孫は普通の植物ですから命令どころか意思疎通も出来ず、例えば赤紫蘇と青紫蘇と荏胡麻は勝手に交配して雑種を作りますね。」

「それで、いつの間にか名前有り一般(ネームドモブ)紫蘇(ファミリー)修羅の召喚枠が増えていたからと、ミントを何種類も召喚した挙げ句に変な雑種が出来たと。」

「はい。雑種ミントは香りが乏しいか変な悪臭がする、繁殖力が高いだけの雑草になったりしますね。」

 この世界の元から居たミント類には、江戸時代日本に存在した、中国原産の薄荷、在来種の姫薄荷、江戸時代に伝来したオランダハッカが居る。ハッカーとは、元は「あり合わせの道具と材料で何かを形にする」という意味で、薄荷とは関係無い。


「それで、疑問に思うんだが、役立たずの雑種が蔓延るって言うのは優生学的に問題無いのか。」

「確かに農業では問題になりますが、生物学的には関係無い話ですね。優劣は単に作物としての利用価値であって生命の本質ではありませんから。」

「確かに利用価値の問題だな。」

「はい。モノサシの問題です。マスターが好きな競走馬なんて、あまり乗馬には向かない品種ですし、農耕馬としては落第、食用としても二流ですね。この世界、美濃牛(ミノタウロス)馬脚(シーレーノス)が言葉が通じる分、優秀すぎるので動物の牛馬は相対的に価値が落ちますが。」

 馬脚の下半身は馬肉だが、もちろん食用にはしない。美濃牛は頭以外人間なので言うまでも無い。


「馬だって簡単な人語は解するが意思疎通には難があるからな。」

「実際『賢馬ハンス』って言って馬が人間の感情を読むことで成立する芸もありましたからね。でも馬を思い通りにするのは難しいでしょう。わたしも馬脚に乗ることは出来ますが、動物の馬はダメです。」

 背負子(人馬鞍)で背負われているだけではないか。という話はさておき。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。