六話
「ユウマよ、ここの屋台とても美味しそうだぞ。これも買っていこう!」
「もういいだろ......、もうこんなに買ってるんだぞ」
俺は手に持っている袋をユキに見せた。
この袋には先ほど別の屋台で買った食べ物が入っているのでこれ以上買う必要はないのだが、ユキは俺の服の袖を掴みながら上目遣いでこちらを見てくる。
そんな目を向けられたら俺には断る事なんて出来なかった。
「わかったよ、けどこれ以上は買わないからな」
「わかっておる。ありがとな悠真」
そして最後に笑顔でこう言ってしまうのだから敵わない。
「よし、身支度はこんなもんで大丈夫だろう」
「そうじゃな。次の目的地はウルンだったな、時間はここから半日ぐらいと言っていたが」
二人はは朝早くからギルドに向かい、次に向かった方がいい街を教えてもらった後、こうして旅の準備をしていた。
旅の準備が終わると二人はいつもの酒場へと向かった。
まだ昼前の時間にもかかわらず酒場は開店しており、客もそこそこの数がいた。
しかしそこには二人にいつも良くしてくれたアバンの姿は無かった。
二人が店内で立ち尽くしていると、いつもの店員さんが話しかけてきた。
「アバンさんなら二日前にこの街から出ましたよ」
「えっ、そうなんですか!何処に向かったとかはわかりますか?」
「すいません、それは私も把握しておりません」
「そうですか......。すいません、お邪魔しました」
最後街を出る前にお礼を言っておこうと思っていたのだが、いないのではそれもできない。
「仕方がないな、またどこかで会ったらその時に礼を言えばよかろう」
「そうだな、俺達もあまり遅くなるとウルンに着くのが夜になってしまうしな。それじゃあそろそろ出発するか」
二人は門から出ると街に向かって一礼した。
「この街には世話になったな」
「ああ、本当にそうだな。今になるとあの酒屋も銭湯も宿も全部がいい思い出になったよ」
「そうじゃな。でもそんな事ばかりも言ってられない。我々には次の目的地があるのだから」
「わかってるよ、じゃあ行くぞ!」
二人は街から出て三時間ほどたった時、木陰で遅めの昼食をとっていた。
「ウルンというのはどんな街なんじゃろ?」
「ギルドの人の話によると、リユーンよりは小さな街だそうだが活気はかなりあるそうだぞ」
「という事はおいしい料理もたくさんあるという事じゃな」
「今昼飯食べてて、よくそんな事が思えるな」
この少女は見かけによらず、とんだ大食い少女のようだ。
でもそんな見た目とのギャップがユキをさらに可愛らしく見せてるのだから何とも言えない。
ユキは俺が食べきれないと思っていた食べ物を全て食べきり、満足げな顔を浮かべた。
「どうじゃユウマよ。このくらいは何ともないわ」
「すげえな......一体その体のどこに入って行ってるんだ?」
「あまりジロジロ見るのではない。恥ずかしいぞ......」
最後に頬を赤く染めながらそんな事を言うのだから、敵うわけがない。
何だか俺も恥ずかしくなってきたので、すぐに話題を変えた。
「ごめんごめん。それじゃあ食べ終わったしそろそろ行くか」
「そうじゃな。わらわも完全復活じゃ」
そして二人はまた歩き始める。
二人が今歩いているのは、何の障害物も無い道で、モンスターに発見されやすい危険な道なのだが実はこれが一番安全な通路なのだ。
森の中や障害物が多い所を歩くのは確かにモンスターには発見されにくいのだが、こちらがモンスターを発見しずらいという事でもある。
仲間に戦士など接近戦に長けた者がいれば森の中などでもいいのだが、あいにく二人は両方とも遠距離を得意とした職業なのでそれは出来ない。
だから二人はこうしていち早くモンスターを発見できるよう、見晴らしの良い道を選んだのだった。
その後モンスターと遭遇する事が何度があったが、敵の攻撃範囲に入る前に魔法で倒していく事で、特に被害に遭うこともなく、ウルンの街に着いた。
しかし、ウルンの街は今の二人とは違った。
「どうなってるんだ......」
二人は息をのんだ。
ウルンの街はまるで大きな嵐が通ったかのような被害を受けており、門の近くの建物はほとんど倒壊していたのだった。




