五話
俺とユキは身支度をすぐにすると、ギルドへと向かった。
ギルドには四十人ほどの人がすでに集まっており、皆何事かとそれぞれで話し合っていた。
しばらくすると普段はあまり見ない顔の男性が奥の方から出てきた。
「急な呼びかけですまんな、私はこのギルドの代表のヒルドだ。今回皆に集まってもらったのは、この街に迫ってきているオークの集団の討伐のためである」
オークとは大人の人間と同じようなサイズでありながら、人よりも大きな力を誇る怪物の事である。
「門番の見た所によると、後十分ほどで街に到着してしまう、だから俺たちは討伐隊を編成し、オークが街に着くまでに討伐もしくは撃退する。その討伐隊はBランク以上のメンバーで隊を編成する。該当する者は今すぐ外に集まるように!それ以外の者も街の防衛にあたる事!よしいいな、それでは各々の持ち場に着け!」
ギルドカードにはそれぞれのハンターとしてのランクが書かれており、それがBランクより高いものが今回の討伐任務に向かわされる事になった。
ユウマとユキはギルドメンバーになったばかりで、まだCランクなので今回二人は街の防衛にあたる事になった。
討伐隊は30人ほどのメンバーで編成され、一分もしないうちに街から出て行ってしまった。
街の防衛を任された残りの十人ほどのメンバーは門の周りに集まり、そこで防衛の任務にあたる事になった。
討伐隊が出発してから五分ほどたった時、ユウマは遠くにいくつもの影があるのを見つけた。
「なんだあれは?討伐隊はもう帰ってきたのか?」
「だとしたら早すぎるであろう。オークの数は相当いると聞いたぞ、いくら討伐隊が優秀でもそんなに早く終わる事はなかろう」
「じゃあ一体なんなんだ?」
他のハンター達もその影に気づき、近づいてきている影をじっと見つめた。
しばらくすると、その影の正体に気づいた一人のハンターが言った。
「やべえぞ、あれオーガの集団じゃねえのか!」
オーガは体長が二メートル超えるモンスターで、オーク以上の怪力を誇っており、Cランクのハンターではまず敵わないとされている。
そんなモンスターの集団が徐々にこちらへと近づいて来ているのを見て、取り残されたハンター達は慌てふためいた。
しかしそのうち二人のハンターは慌てていなかった。
「ユキ、やれるか?」
「それはこちらのセリフじゃ。わらわはいつでも行けるぞ」
「よし行くぞ!」
ユウマとユキはオーガの集団に向けて走り出した。
魔法の攻撃範囲内に着くと、最初にユキが魔法を唱えた。
「アグレッションチャージ!」
ユキの魔法の効果により、ユウマは普段より力が湧き上がってくる感覚がした。
ユウマはその恩恵を最大限生かすように魔法を唱えた。
「ファイヤーボール!」
ユウマが魔法を唱えた魔法はどの魔術師でも覚えている初級の魔法である。
本来ならこの魔法は五個ほどの火の球が出現し、目標となる対象に飛んでいくもので、威力もオーガにたいしたダメージを与えられる魔法ではない
しかしユウマは火の球を三十個ほど出現させ、オーガめがけて火の玉を飛ばした。
ユキの魔法により普段より高い威力になった火の玉が直撃したオーガ達は倒れた後二度と動く事はなかった。
仲間が一気に倒された事に、怯んだオーガに第二の攻撃が降り注ぐ。
「シャインアロー!」
ユキが魔法を唱えると、ユキの周りにいくつもの光の矢が現れ、オーガの頭上に降り注いだ。
「ギャッ!」
オーガ達は声にならない声をあげながら、倒れていった。
幸いにも生き残った数体のオーガ達は仲間が倒れていく様を見て、逃走を図った。
しかしそれを二人が見逃すはずもなかった。
「フレアボール!」
「シャインスピア!」
先ほどより大きな球、矢が生成され逃げようとするオーガの背中に直撃する。
「ギャ!」
生き残っていた数体のオーガが倒れるの確認すると、二人はオーガの死体が転がっている所へと向かった。
「なあユキ、今回のオークは囮だったのか?」
「さあな、モンスター同士が協力し合うような知性を持ち合わせているとは思えないがな」
「そうだな。まあ俺たちがここで話し合っていても意味がない。討伐隊が戻ってくるのを待とう」
しばらくするとオークの討伐を完了したのか、討伐隊が街へと戻ってきた。
討伐隊のメンバーは街の近くに転がっているオーガの死体を見て非常に驚いた表情になった。
討伐隊の先頭に立っていたギルド長のヒルドは討伐隊を先に街に帰らせてからこちらの方へとやって来た。
「これは君たちでやったのかい?」
オーガの死体が三十体ほど転がっているのを確認すると、俺とユキの方を見た。
「はい、討伐隊が出発した五分後にオーガの集団が現れたので、二人で討伐しました」
「そうか、ありがとう。君たちがいなかったら今頃街に住む人たちは襲われていただろう。この礼はギルドに戻ってからさしてもらう」
「いえいえ、こちらこそありがとうございます」
「それにしてもあまりにもタイミングが良すぎないか?この街の主力ハンター達がいなくなった時にこんな数のオーガが街に攻めてくるなんていうのは」
ユキはずっと気になっていたのか、ヒルドにそんな事を尋ねた。
俺もその話題を持ち出そうとしていたのでちょうどよかった。
「オーガは狡猾なモンスターなので、あいつらがオークを従わせてこのように攻めてきたというのは十分に考えられる」
「モンスターの中にもそういう関係性があるんですね」
「まあそうだな。モンスターの上下関係は単純な力によって決まるからな。今回もそれにあてはまるだろう」
その後ギルドに三人が戻ると、それぞれに今回の任務の報酬が支払われた。
俺達はオーガを三十体ほど倒したという事もあり、銀貨三十枚を報酬として受け取った。
さらにその後二人は、ヒルドから直々にAクラスへの昇格が言い渡された。
どうやらこれが二人への礼のようだ。
その後四十人ほどのギルドメンバー全員で宴会を行うことになり、多くの人からオーガとの戦闘について質問攻めにあった。
宴会に疲れた二人は途中で抜け出し、銭湯へと向かった。
お金を得た二人は他の宿に泊まる事も出来たのだが、銭湯から出ると癖でいつもの宿へと向かった。
部屋に入った二人はすぐさまベットに腰かけた。
「なあユウマ、資金も溜まってきたことだし、そろそろ別の所に向かわんか?」
「ああそうだな。この街にはもう十分世話になったしな、明日までには出発しようか」
「そうなると次の行き先を決めんといかんな、まあそれも明日ギルドか何処かに行って聞いたらよかろう」
「そうだな、今日はもう疲れたしな」
そう言って二人はいつもの様に狭いベットに横になる。
最初は俺にユキの肩や体が触れる度に緊張して寝れなかったのだが、今はそんな事もない。
今も互いの肩が触れ合っているが、それは緊張ではなく安らぎを与えてくれている。
俺はユキが寝たかどうかを確認するためユキの方に視線をやる。
するとむこうもこちらの方を向いてまだ起きていたので、至近距離で互いの目と目が合う。
「......ッ!」
俺達は二人して顔を真っ赤にして、互いに背を向けた。
前言撤回、どうやら俺はまだまだ緊張せずにはいられないようだ。




