四話
朝、ユウマは目を覚ますと宿の受付に行き、できるだけ清潔なバケツを借りると、宿の外でバケツの中に水を入れ、自分の右手を突っ込んだ。
「ヒート・ジェネレーション」
するとユウマの右手が赤色になり、そこから熱を発すると水がだんだん温かくなってきた。
左手で温度が40度ぐらいになってるのを確かめると、魔法を使うのをやめた。
その水で顔を洗い意識が完全に覚醒すると、自分が今地球ではない何処かにいる事を改めて思い知らされた。
それでもユウマには嫌だという気持ちは一切ないし、むしろこっちの方が好きだとさえ思っている。
俺は部屋に戻るとユキを起こした。
「ユキ、起きろ。もう朝だぞ」
「......んー、ユウマか。おはよう」
「おはよう。宿の外にバケツがあるから一度それで顔を洗ってこい」
「そうさせてもらう」
未だに眠そうなユキは瞼をこすりながら部屋を出て行った。
ユキが完全に目を覚まし戻ってくると、俺たちは朝食をとるお金がないので、まず任務を受けることにした。
幸い今回は爆発魔法を使わなかったので、アクセサリーを持ち帰り、無事に銅貨七十五枚を入手することが出来た。
二人は銅貨十枚で、サンドイッチのようなものを四つ買い、二人で分け合った。
朝食を食べた後ギルドへと向かう途中、広場に円状の何かを見つけた。
「これって時計じゃないか?数字も一から二十四まであるし」
「そうかもしれんな。針は一本しかないが、大体の時間は見てとることが出来るな」
「にしても見にくいな、これは慣れるのに時間がかかりそうだ」
この世界にも時間というものがある事が分かった二人はギルドに向かい、この時計の針が18を指すまで任務に没頭した。
ギルドで銀貨一枚と銅貨五十枚を手に入れた二人はお腹がすいていたので、先日行った酒屋に向かうことにした。
さすがこの時間という事もあり、店内は以前来た時より賑わっており、ほぼ満席状態だった。
店内を見渡すと知った顔があったので二人はそこへ向かった。
ユウマが声をかける前にむこうはこちらに気づいたみたいで、手を振ってくれた。
「よぉー、元気にやってるか?」
「はいお陰様で」
「それならよかった。そうだせっかくだから一緒に食ってけよ、一人で飲む酒より皆で飲んだ方がうめえしな」
「じゃあお言葉に甘えて」
ユウマとユキはおっさんと一緒に夕食を食べることになった。
ユウマはそこで一番聞きたかった事を尋ねた。
「あの、そういえばお名前はなんて言うんですか?」
「あっそうか、言ってなかったな。俺はアバンだ。さんはつけなくていいからアバンと呼んでくれ、後敬語も別にいいよ。あんまし敬語を使われるのはどうも慣れなくてな」
「まあ、そういうなら......よろしくアバン。俺はユウマだ。それで連れのこいつはユキだ」
「ああよろしくなユウマ、ユキ」
その後三人は食事と会話を楽しんだのち席をたった。
今回はさすがにおごってもらうわけにはいかなかったので、アバンの好意を遠慮して自分たちで払った。
アバンと別れた後俺たちは銭湯があると聞いたので、そこで汗を流すことにした。
銭湯でタオルと簡易な下着と寝巻を二つ購入し、入浴料を払うと俺とユキは男女で更衣室が違うので、受付で別れることになった。
一人で大勢のとこに行くのが少し怖かったのか、一緒に女風呂に入ろうなんて馬鹿げた事を言い出したので、ユウマはユキをしばらく説得した後、男風呂へと向かった。
「ふぅー......」
久々の風呂で体が溶けそうな感覚になる。
時間が九時だったこともあり、銭湯の中には二、三人ほどしかいなかった。
ほぼ貸し切り状態の風呂を満喫した後、着替えを済ませ銭湯から出て行った。
ユキは入る前に少し怖がっている様子だったので、どうなっているか心配していたが、しばらくすると満足顔のユキが出てきたので俺も安心することが出来た。
それから二人は昨日と同じ宿で二人一緒に仲良く寝たのだった。
こんな毎日が五日ほどたった日の朝
「緊急事態、緊急事態。ギルドメンバーはただちにギルドに集まるように。もう一度繰り返す、ギルドメンバーはただちにギルドに集まるように。繰り返す......」
二人はけたたましいサイレンの音に起こされたのであった。




