二話
「がっはっは、いい食いっぷりだね嬢ちゃん。ほらそこの兄ちゃんももっと食べて」
「そうだぞユウマ。腹が減っては戦は出来ぬというであろう。これからに備えてここで少しでも英気を養っておけ」
「はあ、ありがとうございます」
ここまで勧められて断るのはさすがに悪いと思ったので、俺はその好意を素直に受け取る事にした。
俺たちが酒屋に入店した時、まだ昼時にもかかわらずそこそこの数の客がいており、ほとんどの人が既に出来上がっていた。
この世界に未成年という考えがあるかどうかわからないが、地球では酒を飲んだ事が無かった俺たちにはその匂いはいささかきついものであった。
まず俺たちは店員の人に話を聞こうと、カウンターに向かおうとしたのだが客席で酒を飲んでいた男性に声をかけられた。
「お前ら見ねえ顔だな。こんな所まで何しに来たんだ」
正直この時嫌な輩に捕まったと思ったのだがそれを顔に出すのを抑えて対応した。
「いや俺たちもいまいちここが何処かわかってないんですよ。最近旅を始めまして、それでたまたまこの街に通りかかったので、情報を集めようとここに寄ったんですが」
「兄ちゃんたち旅人なのかい!?」
いかつい風貌のおっさんは目を輝かせながらそんな事を言ってきた。
「いいぜ、俺がいろいろ教えてやるよ。おい姉ちゃん、ここの席にいくつか料理を持ってきてくれ。ほら何してんんだ、さっさと座らねえか、あんましそこに突っ立てると他の客の邪魔になるぞ」
男は急にそんな事を言ってきたので、少し警戒し席に座るか座らないか悩んでいたのだが、ユキは既に席に座ってコップに注がれた酒を飲んでいた。
ユキが座った以上俺も座らないわけにはいかないので、俺は席につくことに事にした。
すると店員さんが俺の所にも酒のようなものが運ばれてきた。
「あのすいません。俺まだ15歳なんで酒は......」
「何言ってんだ。15歳なら酒はのめるじゃねーか。ほら飲んでみろよ、ここの店の酒はうめーぞ」
どうやらこの世界では15歳なら酒は飲めるようだ。
俺は少し匂いを嗅いだ後少し口に含むように酒を飲んだ。
「......うまい」
「だろ。おめえさんいける口だな」
男は一通り笑うと俺の方を向き尋ねた。
「それで兄ちゃん達は二人で旅をしてんのかい?」
「はい。といっても気が付いたらここにいたという感じでここの事をあんまり何かわかってないんですよ」
「なんだそりゃ、まあそれならなんでも聞いてくれよ。俺の知ってる事なら何でも教えてやるよ」
それから俺はこの街について、この世界についていろいろ尋ねた。
この街はリユーンというらしく、門の近くには飲食店や武具屋、宿、ギルドなどがあり、少し奥の方まで行くと住人たちの暮らす居住地区があるそうだ。
ちなみにギルドというのはこの世界のどこの街にも存在するらしく、そこに様々な依頼が寄せられるみたいで、特定の職に就けない旅人はそれぞれのギルドで金を稼ぐのが主な方法のようだ。
「依頼っていってもどんな物が寄せられてくるんですか?」
「そうだなー、簡単なものだと家事の手伝いとかあるがそれは子供の小遣い稼ぎ程度にしかならねぇ、一番依頼が多いのは討伐系の依頼だな。これは個人からではなく、ギルドから直々の依頼だから報酬もそれなりに大きい。まその代わりに危険は多いがな」
「討伐?何を討伐するんですか?」
「そりゃあいろいろだよ。まあ一番多いのはゴブリンの討伐依頼だな。あいつら一体一体の力は人間より劣るが、何せ数が多い。狩っても狩っても、どんどん新しいのが湧いてくる。根源を絶たなきゃいけないんだが、その根源が見つからない間はこうしてこれ以上増やさないようにするしかないからな」
どうやらこの世界には人以外にも存在する生物、いわゆるモンスターがおり、それを討伐する事で金を得られるらしい。
先ほどの門番も人を監視しているのではなく、モンスターが中に入ってこないように見張っているのだろう。
「見た所お前さん達はギルド登録はしてないみたいだな。まずはギルドに行ってギルド登録をした方がいい、でないと討伐の依頼を受けることが出来ないからな」
「そうさせてもらいます......。あの、一つ質問してもいいですか」
「なんだ今更。なんでも聞いていぞ」
「どうして、見ず知らずの俺たちにこんな親切にしてくれるんですか?」
これはずっと疑問に思っていたことだ。
こんな訳のわからない男女二人組でしかもまだ15という年齢の若者に対してどうしてここまで出来るのだろう。
男は少し黙って酒を飲んでいたが、酒を飲み干すと昔を懐かしむように話し出した。
「実は俺もお前らぐらいの年の時、家を飛び出して旅に出たんだよ。でも、そんな若造に金もあるわけないし、生きていく力もない。そんな俺は街の路地裏で寒さを防ぐように暮らしてたんだ」
そんな事を自嘲するように言った。
「そんな時に俺を救ってくれた人がいたんだ。その人は俺に飯をご馳走してくれたり、職も与えてくれたんだよ」
「そうだったんですか」
「ああ、だから俺も昔の俺みたいに困っている奴がいたら助けてやろうと決めたんだよ。それが今回たまたまおめぇらだったっていう話だよ」
男はそう言うと席を立ち会計に向かった。
俺達もそれについていくように席を立った。
「ギルドはあそこに建ってるでかい建物だ。まあ迷うことは無いだろうが、何があるかわからないから気を付けて行けよ」
男はそう言って立ち去ろうとしたので、俺は最後に礼を言った。、
「ありがとうございました」
それを聞くと男は嬉しそうに笑いながらじゃあなと言って、ギルドとは逆の方に行ってしまった。
「ユウマよ、名前は聞かなくても良かったのか?」
さっきまでずっと黙って食事にいそしんでいたユキがそんな事を聞いてきた。
「ああ、どうせ俺達もしばらくここにいる事になるだろうから、また酒場にでも行けば会えるだろうしな」
「それもそうか、では我々も行くとするか」
「そうだな」
次の目的を得た二人は男と別れると足早にギルドへと向かったのだった。




