一話 ~異世界へ~
二月十七日 一部修正
「んー、ここは......?」
目を覚ますと俺は野原の上にいた。
俺は体を起こそうとしたが、それは上に乗っている、神と名乗る少女によって妨げられた。
少女を振り落とすわけにもいかないので、体を揺さぶり起こそうと試みる。
「うぅーん、まだねかせてくれー、っていだだだ」
なかなか起きようとしない少女のほっぺを掴み引っ張った。
「むぅー、何をするんだ。わらわは貴様を移動させるのに疲れたんだぞ」
「それは申し訳ないな。でもこっからどいてもらえないと、俺も動けないんだよ」
「んー、仕方がないな」
少女が俺の背中の上から降りてくれたので、ようやく立ち上がることが出来た。
周りを見渡すと野原が広がっており、動物や人の存在は感じられなかった。
俺はここが地球の何処かなのか、それとも他の何処かを少女に尋ねようとしたのだが、少女の名前が分からなかったのでまずそこから尋ねることにした。
「なあ、聞きたいんだけど、お前の名前って何ていうんだ?」
「ん、そうか言っていなかったな。わらわの名前はマーシー・ユキ・イーオン。まあユキと呼んでくれ」
「そうか。ちなみに俺の名は神野悠真だ。ユウマでいいよ」
「私より随分神らしい名前だな」
ユキはそんな事を言ってそっぽを向いてしまった。
神とは思えない可愛らしい行動に思わず微笑んでしまった。
名前も聞いたところで俺は一番聞きたかった事をユキに尋ねた。
「なあユキ、聞きたいんだがここは一体何処なんだ?地球上の何処かなのか?それともそれ以外の何処かなのか?」
「フンッ、そんな事知るか。知っている所に旅をして何が楽しいと言うんだ。まあ一つだけ言えることがあるとしたらここは地球ではないという事だな、現にユウマがこの場所について知らないというのがその事を示しているであろう」
「確かにそうだな、それでこれからどうする?」
「そうだな。とりあえずここがどういう所か調べる必要があるな。まあここにいても何も始まらない、少し移動するぞ」
二人はしばらく歩いていると、前方に大きな町のようなものが現れた事に気が付いた。
「立派な建物がいくつかあるな、これはいろんな情報が手に入りそうだな」
「あぁ、でもそこに住んでるものに我々の言葉が通じるとは限らないし、そやつらが人であるとも限らないぞ」
「なるほどな、そうだったら結構しんどいな」
「よく言うわ。そう言いながらも笑っておるではないか」
「えっ?」
自分でも笑っていることに気づいていなかった。
でも確かに俺は今この状況を楽しんでいる。
今までは自分が知っている事ばかりでなんにも面白くなかった。
でも今は違う。知らないことだらけで、次にどうなるかが想像できない。
そんな今まで味わったことのない感覚に俺は笑みを浮かべずにはいられなかったのかもしれない。
「まあよい、とりあえず街へと向かうぞ」
「ああ、そうだな」
街の門の近くに着くと、人の見た目をした門番が立っているのが分かった。
中に入ろうとすると止められるのではないかと心配していたが、俺たちの他にも出入りをしているもの達がいたので、止められるような事はなかった。
街の中は出店などが多く出て賑わっており、香辛料の良い匂いがあちこちから感じられた。
「すごい賑わってるな。見たところはここにいるもの達も俺らと同じ見た目だし、話している言語も日本語のようだしな」
「ふむ、そうじゃの。ここにいても情報はこれ以上得られないであろうから、とりあえず人の多い所に行ってみるのが良さそうじゃな」
「人の多そうな所ねぇ、どこか目星はついてんのか」
「酒場じゃ、酒場。こういう時は酒場に行くと相場が決まっておるんじゃ」
こんな真昼間から酒場にいる奴なんてロクな奴はいないだろう。
そんな事を思ったが、ユキがあまりにも目を輝かせて訴えてくるもんだから、俺はその意見に反対することが出来なかった。
「そうかい。まあ酒が入っている奴なら、初めて会ったやつにも警戒心をあまり抱かず、いろいろ教えてくれそうだしな」
「じゃろ?そうじゃろ。さすが悠真、わかっておるの」
「そうは言っても、どこの酒場に入るんだ?酒場っぽい建物はいくつかあるけどな」
「そうじゃな、一番良い匂いがする所に入ろう!」
「いや、そんな理由かよ!」
「いいじゃろ別にー。良い匂いがするんじゃから客も多いであろうよ」
とは言っているものの、ユキは今にもよだれを垂らさんかというぐらいの顔になっている。
まあここまでの移動で腹が減っているのは俺も同じだが、それを顔に出す神はいかがなものか。
いや、本人は顔に出ていることに気づいてないんだろう。神というくらいだから年齢はとてつもない年だと思っていたが、実際は見た目通りの年齢なのかもしれない。
「なあ、ユキって年齢はいくつなんだ?」
「むっ、レディーに年齢を聞くもんではなかろうよ」
「いやユキは神だろ?」
「神でもレディーはレディーなのだ。まあでもよかろう、これから長い旅を一緒に過ごすのだ、秘密はなしで行こう。わらわの年齢は15である」
「えっ?」
「聞こえていなかったか、15だ、15。何度も言わせる出ない」
「いや、俺はユキが神様とかいうもんだから何千歳とかいうのを想像していたんだが」
「何を言うか!わらわはそんな古臭い神ではないわ」
そんな言い方をするユキに俺は笑いを抑えることができなかった。
「っふ、ははははは」
「ユウマ!何で笑っておるんじゃ!」
「いや、まさか同い年だとは思わなくてな。うん、そうだな、ユキ改めてよろしくな」
「なんじゃ、人の年を聞いて笑っておきながら、いいだろう、よろしくされてやろう」
そんなユキの返答に、また笑いがこみあげてくるのを抑えることが出来なかった。
自分がこんなにも知らない事があるなんて思いもよらなかった。
これからユキとの旅はどんなに苦しいか、つらいかはまだ分からない。
でもユキと一緒にいられたら、どんな状況でも楽しめそうな気がする。
「ほれ、いつまで笑っておるのじゃ、そろそろ行くぞ」
「ああ、わかった」
俺は再びこみあげてくる笑いをこらえながら、ユキと目的の酒場へと向かっていった。




