プロローグ
神、それは人を創りし存在。
神、それは人の上に立つ存在。
もし神が、自分より優れた人を創った時、神はいったいどうするのであろうか......
「つまらねぇ」
俺は自宅のベットで目を覚ますとそんな事を呟いた。
「人生なんて、何がおもしろいんだよ」
俺には学校で習う事や友達との付き合いも何もかもがつまらなく感じていた。
小さな頃からそうだった。
初めて見るはずの算数の公式、教科書に載っている小説、歴史上の人物、その他に学校で習う全ての事を俺は知っていた。
授業以外でもそうだった。
初めて出会うはずの同級生や先生、はたまた自分と何の関わりもない通行人まで俺は知っていた。
俺はなんでも知っていた。
いや知りすぎていたといった方がいいだろう。
自分でもその事が怖くなり、中学生の時俺は学校をサボるようになった。
それでも、卒業出来る程度には学校に顔を出すようにしていたおかげで、中学は無事に卒業する事が出来た。
しかし高校受験をする気になれなかった俺は、卒業と同時に家に引きこもるようになってしまった。
まさにそんな時、卒業して三日ほどたったある日の事だった。
朝俺が目を覚まして、トイレに行こうとベットから立ち上がったその瞬間、俺は猛烈な立ちくらみに襲われた。
「ッ!」
俺はそのまま意識を保つことが出来ず、床に倒れこんでしまった。
「......覚ませ。おい、......のか。おい、とっとと目を覚まさんか」
「んっ......」
俺は誰かに肩を揺さぶられたような気がし目を覚ました。
「どこだ......ここは?」
辺りを見渡すとそこはどうも自分が先ほどまでいた部屋ではなかった。
天井にはシャンデリアが吊るされており、横を見ると椅子やテーブルなども置いてあった。
「やっと目を覚ましよったか。いつまで待たされるかとハラハラしておったぞ」
またしても後ろから声が聞こえる。
俺は声のする方を振り向くと、そこには同い年ぐらいの少女がいた。
状況から察するに、この少女が俺の事を起こしてくれたのであろう。
「えっ......」
俺は思わず声が出てしまった。
なぜなら俺はこの少女の事を知らないからだった。
俺は今まで知らない人なんていなかった。
例え今まであった事のない人でも、俺はその人の名前を知っていたし、趣味や性格までも知っていた。
でも俺はこの少女の趣味や性格を知らないし、名前さえも知らなかった。
「お前は一体誰なんだ」
一番疑問に思ったことが口から出た。
初めてあった人、ましてや女の人に対してお前と言ってしまったのは、初めて正体不明の人物に出会って、警戒していたのである。
「そうだな。わらわは貴様の母だ」
「えっ......」
あまりにも予想だにしない答えが返ってきたので、俺はまともな返答が出来なかった。
「わらわは神である。お前ら人類を創りだした生みの親である」
自分の事を神という少女は少し間を空けると
「貴様には今の世界は退屈ではないか?」
「ッ!」
と言ってきた。
俺はまたも体を硬直させていると、少女は笑みを浮かべた。
「わらわも今の世界には退屈している。だからわらわは新たなる世界に旅立とうと思っておる」
そう言うと少女は右手を差し出した。
「どうだ、貴様も一緒に旅だたぬか」
「えっ!」
その誘いに俺の心臓は高鳴った。
この少女の言うように俺は今の世界に退屈している。
何もかもが分かるような世の中なんて何も面白くない。
この見ず知らずの少女と旅に出るのはいささか不安だが、このまま今の世界にいるよりはましには違いない。
少女は満面の笑みで手を差し出している。
「いいぜ、行ってやろうじゃねえか。その旅とやらに」
俺がそう言いながら少女の手を取ると少女はさらに笑った。
その顔は確かに普通の少女というにはあまりにも綺麗であった。
「よし、それではいくぞ。わらわもどこに行くかわからぬ故、移動はいささか激しいものになるぞ」
少女がそういうと目の前が光に包まれて、俺の意識はまたしても遠のいていった。




