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第四十三話「戦闘中止」

 ZINを集中させた青く輝く拳。


 本来の御手型機甲鎧の拳、マニピュレーターであれば殴り付けても大して破壊力はないどころか、逆に殴り付けた衝撃でマニピュレーターの方が壊れてしまう。しかしZINでマニピュレーター全体を覆ったこの拳ならば、神器に匹敵するだけの破壊力がある。


 こちらに引き寄せたことによって体勢を崩した海賊の御手型機甲鎧の胴体に、俺が乗る機甲鎧の拳が吸い込まれるように向かっていくのを見て、俺は勝利を確信した。


 このタイミングだとZINで障壁を発生させて機体を守ろうにも間に合わないだろう。万が一間に合ったとしても、ZINを集中させた俺の拳は防ぎきれないないはずだ。


 ……そう思った瞬間。


 ドォン!


 目の前を緑色の光が横切り、次の瞬間、俺の乗る機甲鎧の右腕が爆発した。


 い、一体何が……?


「カズト! 囲まれている!」


 アオの言葉を聞いて周囲を見回すと、十数羽の緑色に光る鳥が俺の乗る機甲鎧の周りを飛んでいた。


 この緑色の光……もしかして今さっき俺の機甲鎧の右腕を吹き飛ばしたのはこの鳥達なのか? というか何だ? この鳥は?


「気を付けてカズト。この鳥達……全部があの機甲鎧の神器だから」


 この鳥が神器だって? あの海賊の? でもだって、さっきまで海賊が使っていた神器は投げクナイだったはずじゃ……。



『神器はZINが侍の意思によって形を得たものです。侍の意思一つで神器はどんな形にも変化します。先程貴方がご自身の神器の形を変化させて私達を捕まえたように……』



 俺の疑問に答えたのは通信回線からの若い女性の声だった。


 誰だ? アオでも緋乃でもない初めて聞く声。一体君は誰だ? その海賊の御手型機甲鎧に乗っているのか?


『………』


 俺の質問に答える代わりに、海賊の御手型機甲鎧は左腕を上げる。それと同時に俺の周りを飛んでいた光の鳥達が一斉に動きを止めて頭らしき箇所をこちらに向ける。


 ……………っ!? や、やられる!


 アオの言葉が正しいのなら、この光の鳥達は神器の投げクナイと同じ破壊力があるということだ。その全ての矛先を向けられて俺は死を覚悟した。だが……。


『………』


 フッ……。


 海賊の御手型機甲鎧が左腕を下ろすと光の鳥達は俺の乗る機甲鎧に一斉に襲いかかったりせず、幻のように全て消え去った。


 どういうことだ?


『アレ? 姫サマ、もういいのかい?』


『ええ。彼がどれだけの実力なのかはもう十分分かりました』


 海賊の御手型機甲鎧が神器と思われる光の鳥を消したことに戸惑っていると、通信回線から若い男の声と女性の声が会話しているのが聞こえてきた。


『ふーん……。まあ、姫サマがそう言うんだったら別にいいか。おい、お前ら! 戦闘中止! 姫サマがもういいってよ!』


 通信回線が若い男の声で叫ぶ。するとその声を合図に、それまで護衛の侍達と戦っていた他の海賊達の機甲鎧が攻撃を止めて五隻の小型航宙艦へ飛んでいく。海賊達の突然の行動に俺だけでなく護衛の侍達も何が起こったのか分からず、海賊達が小型航宙艦へ向かっていくのをただ見送ることしかできなかった。


「……あの男の声が言っていたでしょ。戦闘は中止だって。そういうことよ」


 俺が不思議に思っていたらアオが拗ねたような声で呟く。


 アオ、お前は何を拗ねているんだ? それにそういうことって、どういうことなんだ?


「拗ねてないもん。……つまりね? あいつらは海賊じゃなくて……」


 ピピピッ!


 アオがそこまで言ったところで操縦席に、今までの音声のみの通信ではない画像も含めた通信回線が届いた。通信回線を開くと目の前の画面が切り替わった。


 切り替わった画面に映っていたのは、侍が宇宙で機甲鎧に乗り込むときに着用する戦闘用宇宙服を着た一人の女性だった。ヘルメットから見えるその顔は、金色の髪と緑色の瞳が特徴的なまさに絶世の美少女という感じなのだが、感情を感じさせない無表情のせいでまるで人形のように見えた。


『初めまして。青火姫様、日善カズト様。私の名前は東雲・姫翠・カルラ・第五天といいます。貴方が今まで戦っていたこの御手型機甲鎧を操縦していたものです』


 画面の中の女性、カルラは感情を表さない無表情で挨拶をする……って!


 今、彼女、自分のことを「第五天」って言った!? 第五天って言ったら侍の階級で上から五番目で、政栄様より二つも上だぞ!?


『そして……』


 俺がカルラ……いや、違う、カルラ様の言葉に驚いていると、カルラ様の体が緑色に光ってその背後から一人の男の姿が現れる。


 カルラ様の背後から現れた男は緑色の軽装の鎧を着ていて髪も緑色。顔立ちはカルラ様と劣らないくらい整っていたが眠たそうな目でこちらを見ていた。


『そして俺がこの姫サマ……カルラの神霊、緑光兵だ。よろしくな、日善クン。それと久しぶりだな青火姫サマ?』


「やっぱりアンタだったのね、緑光兵」


 緑光兵と名乗る神霊が手を小さく上げて挨拶をするとアオが忌々しげに舌打ちをする。


 アオ、お前はあの緑光兵様と知り合いなのか? というか最初からカルラ様達のことに気づいていたのか?


「……なんとなくね。それと緑光兵とは昔からの知り合いってだけで特に親しくないから」


『つれないね青火姫サマは。てかアオって何? 青火姫サマの愛称?』


「黙って! 私をアオって呼んでいいのはカズトだけ!」


 緑光兵様の言葉にアオが火を吹くかのように叫び、それに対して緑光兵様は「おー、怖っ」と両手を上げる。


 ……どうやら知り合いではあるけど、仲は良くなさそうだ。

次回は7月16日に更新する予定です。

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