第四十四話「侍の女性と神霊の男」
戦い(?)が終わった(?)後、俺達は「今回の行動の事情について説明したい」と言ってきたカルラ様と緑光兵様を連れて航宙艦にと帰還した。そして俺にアオと護衛の侍達、緋乃を初めとする乗組員達が集まりカルラ様が「今回の行動は……」と言ったところで、
「いや、まあ、あれだ? 海賊の襲撃っていうのは真っ赤な嘘で、要するに単なる腕試しだったってわけだ」
と、緑光兵様がまったく悪びれることなく言い、それを聞いた俺達は一瞬何も言うことができなかった。
「……え、ええと。腕試し、ですか?」
「はい」
回復した緋乃がこの場にいる全員の代表となって尋ねると、カルラ様が無表情のまま小さく頷いて答えてから緑光兵様が口を開いた。見ているのは……俺?
「そこの青火姫サマの契約者、日善クンの情報を見てみたらウチの姫サマと同い年らしくてさ。神霊と契約している侍ってじじいかおっさんばかりでさ、年が同じだってことで珍しく姫サマが日善クンに興味を持ったんだよ。んで、日善クンがどんな奴で、どれくらいの腕なのか、手っ取り早く腕試しで確かめようと思ったわけだ。やるじゃないか日善クン。ウチの姫サマが他人に興味を持つなんて中々ないんだぜ?」
あっ、はい。光栄、です……?
「………」
緑光兵様にそう答えたあと、カルラ様がこちらを見つめているのに気づいてそちらを見ると思わず目があった。
東雲・姫翠・カルラ・第五天様。
神霊の緑光兵様と契約した侍であり、この天文帝国の頂点である皇帝「聖皇」様直属の軍隊「天刃隊」に最年少で入隊した才女。その最年少記録は天文帝国の長い記録から見ても右に出るものはいないらしい。
カルラ様が緑光兵様と契約したのは今から五年前。当時十歳だったカルラ様は、悪霊獣の大群によって故郷を滅ぼされて自分も殺されそうになったところで偶然居合わせた緑光兵様と契約。緑光兵様の協力で悪霊獣の大群から逃れたカルラ様は遅れてやって来た天文帝国の救助隊に保護されたそうだ。
天文帝国に保護されたカルラ様は、機甲鎧に乗って悪霊獣と戦う最前線に立つと緑光兵様の力もあってすぐに侍としての頭角を現し、その貴族の姫君と言われても信じられそうな外見からついた二つ名が「姫武者」。
……そういえば修理って、カルラ様の大ファンだったよな。このことを知ったらアイツ、一体どんな顔をするんだろうな?
………。
「………」
………。
「………」
………ええっと。何、この状況?
「カズト。さっきから何見つめあっているの?」
カルラ様と目があったのはいいが、何を話していいのか分からずにいたらジト目をしたアオに睨まれた。……何怒っているんだ? コイツ?
「ずいぶんと可愛い子みたいだけど……何? 好きになったの?」
「そうなのか日善クン? だったらまず保護者代わりである俺に話を通してもらわないとな」
なにやら不機嫌そうな顔をしたアオとからかうような顔をした緑光兵様が変なことを言い出した。
いや、好きになったって、そんなのじゃないから。ただ単に何を話したらいいか分からなかっただけだから。
「……ふ~ん。まあ、いいけどね。それで緑光兵? 今回の行動は私とカズトの腕試しって言っていたけど、もっと他にやり方があったんじゃないの? 貴方なんでしょ? そこの姫サマと部下の侍達に海賊のフリをするようにそそのかしたのは?」
アオが緑光兵様を非難するように言うと、緑光兵様は笑いながら肩をすくめて首を振った。
「おいおい、そそのかしたっていうのは人聞きが悪すぎないか? 俺はただ、『本気の実力を知りたかったら正体を隠して戦うのが一番だ』って言っただけだぜ?」
「それをそそのかしたって言うのよ!」
なんていうかカルラ様と緑光兵様って、変わった組み合わせだよな。
綺麗で実力もあるけど無口無表情で何を考えているのか分からないカルラ様と、よく笑って友好的に話してくれるけどカルラ様とは別の意味で何を考えているのか分からない緑光兵様。俺が言えた義理じゃないと思うけどやっぱり変わっているな。
……そういえばもしかしてアオって、緑光兵様と知り合いなのか?
「えっ?」
「へぇ?」
戦っていた時も何か知っているようなこと呟いていたから、もしかしてと思ったんだけど……。知り合いじゃないのか、アオ?
「そ、それは……」
「まあ、そんだけ分かっていたら流石に気づくわな。そうだぜ。俺と青火姫サマは今から三百年くらい前の同時期にこの宇宙に発生……というか生まれてな。生まれが近いということでわりと早く知り合ったんだよ。当時の俺達の契約者達もお互い仲がよくて一緒になって悪霊獣と戦ったことも……」
「緑光兵」
緑光兵様が昔の自分とアオのことを話そうとした時、アオが短く呟いて緑光兵様の言葉を遮った。
「前にも言ったでしょう、緑光兵? お願いだから『彼女』のことはもう言わないでって」
彼女? 一体誰のことだ?
「……ああ、そうだったな。悪かったよ、もう言わないって。というわけですまないな日善クン。この話はここまでってことで」
あっ、はい。それは別に別に構いませんけど……。
アオの今の表情……あれは絶対ただ事じゃなかったよな。こうして改めて考えると俺とアオって、お互いのこと何も分かっていないんだよな。
次回は7月19日に更新する予定です。




