第三十五話「義父の言葉」
画面の中の戦闘で先に行動に出たのは海賊達だった。
十五体の機甲鎧が矢のような速度で突撃し、その後を五隻の小型航宙艦が続く。
警告もなしに攻撃をしかけてきた海賊達。恐らくはこちらの援軍が来るより先にこの航宙艦を襲い、俺とアオを連れ去ろうという考えなのだろう。
それに対して護衛の四体の機甲鎧は、全機共に光でできた刀、神器を手にとって海賊達を迎え撃とうとしていた。
「あの侍達、結構強そうね」
画面に映る護衛の機甲鎧四体が神器の刀を取り出したのを見てアオが感心したように呟く。確かに護衛の侍達は、素早く神器を作り出せるし機甲鎧もうまく動かせているし、神鳴寺機甲鎧戦術教導院で一緒に悪霊獣と戦った侍達より数段腕が上だろう。
……でも、それでもやっぱりあの数は手に余るようだな。
「うん。護衛の侍達、海賊の機甲鎧の相手だけで忙しいみたいだね」
「くっ!」
俺の言葉にアオが頷き、緋乃が悔しそうに俯いた。
海賊達の機甲鎧は一体の護衛の機甲鎧につき数体がかりで距離をとって攻撃をしかけ、護衛達が海賊達の攻撃で動きを封じられている間に五隻の小型航宙艦が俺達の航宙艦に向かってきている。
………ん?
画面の戦いを見ていると、俺はある違和感を感じた。
俺は最初、護衛の侍達が苦戦しているのはただ単に海賊達の戦力が多いからだと思っていた。だがよく見ると、海賊達は一糸乱れぬ連携で常に敵が持つ高威力の武器、神器の刀が届かない距離を保ちつつ護衛の侍達を翻弄していた。
……あいつら本当に海賊か? あんな見事な無駄のない連携、よほど訓練をつまなければできるものじゃないぞ?
「………?」
アオも俺と同じ考えにいたったのか何か考えるような表情で画面の戦いを見つめる。
「……あっ。だ、大丈夫です! 青火姫様、日善様。いよいよとなれば緊急で亜光速航行を行ってこの戦域から離脱しますのでご安心を!」
違和感を感じて画面を見ていた俺とアオを、緋乃は不安を感じていると思ったのか励ますように声をかけてきた。
いや、俺達は別に不安ってわけじゃ……て、ちょっと待って? 今、亜光速航行でこの戦域から離脱するって言った?
「はい。艦長達はすでに亜光速航行の準備をしているそうです」
……あの護衛の侍達は? もちろん回収してから離脱するんですよね?
「……いいえ。彼らを回収する余裕はありません。ですが私達の役目は青火姫様と日善様を無事に帝星へとお送りすること。そのためならばこれは仕方がない犠牲……」
フザケルナ。
「……え?」
「……カズト?」
気がつけば俺は自分でも驚くくらい冷たい声で緋乃の言葉を遮り、アオと緋乃が驚いた顔でこちらを見てくる。
『いいか、カズト? もし困っている奴を前にして自分が正しいと思ったことがあったら迷わずそれをやっておけ。じゃないとお前、後になって後悔することになるぞ?』
頭の中で過去に義父さんに言われた言葉が甦る。
うん。分かっているよ、義父さん。
……緋乃。この航宙艦の艦長に聞いてほしいことがあるんですけど?
「え? い、一体何を聞くのですか?」
そんなの決まっているじゃないですか。
この航宙艦に、俺が乗れる予備の機甲鎧があるかどうか、聞いてもらえませんか?




