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第二十八話「栄誉」

 帝星に行く当日。俺とアオは名残惜しいが七日間快適な生活を送った宿泊施設に別れをつげて、特別護送車に乗って航宙艦港にと向かうことになった。


 特別護送車の周囲には空陸両用装甲車、上空には飛翔戦用機甲鎧と、宿泊施設に行く時と同じ警戒体制なのだが、ただ一つ外の景色だけが七日前と違っていた。


「うわぁ! カズト外を見てみなよ。たくさんの人達が私達を見ているよ」


 外を見てみるとそこにはアオの言う通り、大勢の人達が俺達が乗る特別護送車を見ていた。俺が承認の儀を受けるために帝星に向かうことはすでにニュースで知られていて、彼らはそれを見送りにきた人達だ。彼らは外から俺達の姿が見えないのにも関わらず歓声を特別護送車に送っている。


 まるでお祭り騒ぎだな。


「当然です。神霊を宿した侍は天文帝国の英雄と言っても過言ではありません。それがこの星で誕生したというのは、この星の住人にとって最高の栄誉なのですから」


 俺の呟きに答えたのは護衛役の緋乃。彼女は相変わらず俺の後ろに立って、時折強い視線を放ちながら護衛をしてくれていた。


 最高の栄誉、か……。


「カズトってば、やっぱりそういうのには興味ない?」


 いや、興味がないわけじゃないけど……俺の考えている「栄誉」とは違うってだけだよ。


「神霊を宿したのが栄誉ではない?」


「いや~、そういう風に言われると流石に傷つくんだけど……」


 俺の言葉に緋乃が信じられないといった表情となり、アオが苦笑を浮かべる。


 いや、そういうつもりで言ったんじゃないんだ。気に触ったなら謝るよ。


 ……ただ、侍の栄誉っていうのは強力な機甲鎧や権力を得ることではなくて、その力で力のない人々を守ることなんだと思うんだ。


 アオと緋乃に言った時、脳裏に十年前の光景が浮かび上がる。


 十年前、機甲鎧に乗って悪霊獣と戦い、死を待つだけだった俺を救ってくれた義父さんの姿が。


「……ふ~ん。そういうこと♪」


「……そのようなことは全ての侍が理解しており、当然のごとく胸に刻んでいます。故にそれを成すための力を得ることも栄誉と考えているのです」


 俺が考えていることが分かったのかアオが嬉しそうな笑顔を浮かべ、緋乃が呆れたような表情で返す。


「全ての侍が理解している、ねぇ~? 本当にそうなのかな~?」


「……青火姫様? 一体何を言いたいのです?」


「べっに~。気にしない気にしない♪」


 アオが何やら含む言い方をして緋乃が反応する。……何だか部屋の空気が一気に重くなった気がする。


 ああ、早く着かないかな。

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