第十九話「神器」
悪霊獣が爪を降り下ろした瞬間、時の流れがひどく遅くなったように感じた。悪霊獣の爪がゆっくりとした動きで俺が乗っている機甲鎧の操縦席に近づいてくる。
俺は、ここで死ぬのか?
これが義父さんとの約束を破った罰なのか?
結局、十年前から悪霊獣に殺される運命だったのか?
迫りくる悪霊獣の爪を見つめながら俺が死を覚悟したその時、
「はいそこ! 勝手に諦めない!」
アオが叫び、彼女の声に反応した機甲鎧が勝手に動いて右腕に持つ武器で悪霊獣の胴体を貫いた。
悪霊獣の体を貫いたのは右腕に展開した刀剣ではなく、いつの間にか右手の中にあった青く輝く光の槍。
ゴォウ!
「………!?」
光の槍で体を貫かれた悪霊獣は次の瞬間、全身を青色の炎に包み込まれて悲鳴を上げるまもなく消滅した。
この光の槍……もしかして神器か?
神器。上位の侍が乗る御手型機甲鎧だけが使えるZINが具現化した武装。
対悪霊獣戦の最終兵器。天文帝国において神霊に次ぐ伝説が今、俺の目の前にあった。
アオ。これはお前の仕業か?
「そうゆうこと♪ 言ったでしょ? 私は勝利を呼ぶ女神だって。カズトはその女神を宿しているのだからそう簡単に諦めない……で!」
ブゥン!
『…………!!』
アオが機甲鎧を操作すると機甲鎧は右手に持った光の槍の神器を左から右へ大きく振るい、光の槍は振るわれるのと同時にその長さを一瞬で五倍以上にして、こちらに向かってくる二体の悪霊獣の体を二つに切り裂いた。それぞれ二つに切り裂かれた二体の悪霊獣の体は青色の炎に包まれて空中に消滅する。
凄いな。また一撃で倒したぞ。
俺もさっきまで二体の悪霊獣を一太刀で倒したが、あれは剣で切りつける角度や速度、切りつける場所を十分に計算したからできた結果だ。これは当然の如くかなり難易度が高く、さっきはよく二回連続で成功したものだと自分でも思う。
だけど今のアオの攻撃は違う。さっきのアオの攻撃は、ただ無造作に槍を振るって悪霊獣の体に叩きつけただけなのだが、それだけで神器の槍は悪霊獣を消滅させたのだ。
これが神器の、神霊の力ということか。
「どう? 私の凄さが分かった?」
ああ、よく分かったよ。流石は神霊、青火姫様だよ。……本当に凄いよ。お陰で助かった。ありがとう。
俺は胸を張りながら自慢気にこちらを見てくるアオに対して素直にそう言った。




