HAMBURGER BLUES 第3話 ーーーーーーPhantom Walker Zero
HAMBURGER BLUES 第3話ーーーーPhantom Walker Zero
カラン
カランカラン
beem
今日は静かだね
Walker
その発言はフラグです
bads
今日の髪型どう
cool
……平和が一番ですねぇ……
カラン
カランカラン
全員
来た
店内へ入ってきたのは
六十代くらいの夫婦だった
旦那は巨大なカメラを首から下げ
奥さんは入店と同時に端末を取り出す
パシャ
パシャ
パシャ
パシャ
Walker
注文前に撮るな
旦那
いやいや記録ですよ
奥さん
消費者の権利ですから
パシャ
beem
まだ挨拶もしてないけど
旦那
この照明少し暗いですねぇ
奥さん
星三つかなぁ
Walker
まだ座ってもいないだろ
bads
ちょっと待って
私映ってない
撮るならこっちからお願い
cool
……すぅ……
旦那
ネットの皆さんへ報告しないとねぇ
奥さん
正直レビューって大事ですから
Walker
脅迫じゃねぇか
beem
口コミって難しいね
旦那
事実を書くだけですよ
奥さん
少しでも気に入らなければねぇ
Walker
便利な時代になったもんだ
bads
嫌な時代とも言う
cool
……人間って怖いですねぇ……
旦那
店内写真失礼します
パシャ
パシャ
Walker
失礼ならやるな
奥さん
自由社会ですから
Walker
自由と無礼を混同するな
beem
まあまあ
お腹は空いてるんでしょ
旦那
もちろんです
最高級の肉をお願いします
奥さん
期待してますよ
beemが静かに笑った
beem
残念だけど
今日は肉は出さない
旦那
え
奥さん
え
Walker
来た
bads
始まった
cool
……起きた方がいいですかぁ……
beem
人を値段と評価でしか見ない人には
肉を出さない
旦那
何ですって
奥さん
サービス業としてどうなんですか
beem
うちの肉は
命と時間と研究の結晶なんだ
誰にでも出すものじゃない
Walker
店長モード突入
beem
だから今日は
特別メニュー
Phantom Walker Zero
Walker
勝手に私の名前を使うな
beem
君が考えた事にする
Walker
最低だな
十分後
テーブルへ運ばれる
黄金色のバンズ
燻製ピクルス
十二種類の香草
熟成オニオン
秘密の黒ソース
肉だけが存在しない
旦那
肉がない……
奥さん
これは逃げでは……
Walker
食え
cool
……食べ物に罪はありませんからねぇ……
二人は恐る恐る口に運ぶ
沈黙
二口
三口
さらに沈黙
旦那
……美味い
奥さん
悔しいけど美味しい
Walker
書けないな
旦那
書けない
奥さん
悪口が見つからない
bads
残念だったねぇ
cool
人生ってそういう日もありますよぉ
beem
あんな奴らに食わせる肉入りハンバーガーは
この店には存在しない
静寂
全員が頷く
Walker
珍しく完全同意
旦那
また来ても……
beem
次は
写真より先に挨拶して
奥さん
……はい
カラン
カランカラン
夫婦は帰っていった
三秒の沈黙
そして
全員爆笑した
Walker
あの顔見たか
bads
最高だった
cool
平和的勝利ですねぇ
beem
音楽いこうか
次の瞬間
店内に爆音が鳴り響く
ベラ地下音楽連盟公認
古代テクノブルース
badsが踊る
coolが眠りながら揺れる
Walkerが叫ぶ
テキーラ持ってこい
beem
最高級のやつね
グラスが並ぶ
全員
乾杯
夜はまだ長い
また誰かが
カランカランと扉を鳴らしてやって来る
その時まで
笑って待とう
Walker
結局
良い客も悪い客も
同じ扉から入ってくる
でも
何を持って帰るかは
その人自身が決める
少なくとも今日の二人は
悪口より
美味しさを選んだ
それなら
ベラの夜も
まだ捨てたもんじゃない




