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エルフの鍛冶屋―ねぇ親方― (世界の不思議を語り合う、1話完結の雑談ファンタジー)  作者: ぱられ


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呪われた指輪ってなんなの?

シャッ。


シャッ。


シャッ。


親方は銀の指輪をヤスリで削っていた。


磨かれた銀は光を反射している。


指輪の上には小さな台座も付いていた。


後から宝石でも取り付けるのだろう。


作業台の向かい側で眺めていた少年が口を開く。


「ねぇ親方」


「親方じゃないけどなに?」


少年は指輪を指差した。


「物語に出てくる呪いの指輪って本当にあるんですか?」


親方の手が止まる。


「あるにはあるねぇ」


「えっ」


少年は目を丸くした。


「指輪に限らないけど」


「古い遺跡や建物から見つかることはあるよ」


親方は作業を続ける。


「首飾りだったり」


「腕輪だったり」


「武器だったりね」


しばらく削ると削りかけの指輪を机へ置いた。


「本当に呪われてるんですか?」


「そう呼ばれてるものはあるねぇ」


少年は首を傾げた。


「そもそも呪いってなんなんですか?」


親方は少し考える。


「人にとっての悪い出来事が呪いかな」


「昔は原因の分からない災い全般を呪いと呼んでたらしいよ」


「原因が分からないんですか?」


「そう」


「病気になった理由も」


「作物が枯れた理由も」


「湖の水を飲んだら倒れた理由も分からない」


「だから呪いだと思ってた」


少年は少し考える。


「そんなことがあるんですね」


「迷信や根拠のない言い伝えも多いんだけどね」


「今は理由の判明してることもあるよ」


親方は軽く微笑む。


「例えば呪いの湖と呼ばれていた場所を調べたら」


「水源の近くに毒を含む鉱石の鉱脈が見つかった」


「そんな話もある」


「じゃあ呪いじゃなかったんですね」


「結果だけ見ればそうなるねぇ」


親方は肩をすくめる。


「でも当時の人からすると」


「理由も分からず人が倒れるのを見たら」


「呪いだと思っても仕方ないかもしれないね」


少年は納得したように頷いた。


「だから災いをもたらす道具も」


「呪いの道具」


「呪具」


「呪物」


「なんて呼ぶようになったのかもしれない」


「じゃあ逆に」


少年が身を乗り出す。


「良い効果の道具もあるんですか?」


親方は少し笑った。


「あるよ」


「そういうものは祝福と呼ばれることが多いかな」


「祝福ですか」


「持っていると元気になる」


「病気になりにくくなる」


「悪いものを遠ざける」


「そんな効果のある道具もあるね」


「そっちは欲しがる人も多そうですね」


親方は頷く。


「ただ面白いのは」


「呪いも祝福も」


「実は同じ研究の途中で生まれた物かもしれないってこと」


「同じなんですか?」


親方は再び指輪を手に取る。


「昔の人も便利な道具を作ろうとしてたはずだからねぇ」


「上手くいけば祝福」


「失敗すれば呪い」


「そんなこともあったかもしれない」


少年は少し考える。


「なんだか魔導具みたいです」


「近いかもしれないね」


親方は頷いた。


「でも大きな違いがある」


「なんですか?」


「魔導具は魔力を込める必要がある」


「でも呪物や祝福具は持ってるだけで効果が出ることが多い」


親方は指輪を軽く指先で弾く


「魔力がいらないんですか?」


「だから研究者達は興味津々なんだよ」


親方は少し楽しそうに笑う。


「仕組みが分かれば」


「明かりを灯す道具も」


「水を綺麗にする道具も」


「今よりずっと便利になるかもしれない」


「でもまだ上手くいってないみたいだけどね」


親方は削っていた指輪を布で拭き始めた。


「見つかるのは呪物ばかりなんですか?」


「祝福具もあるにはあるけど」


「ただ数は少ないみたい」


「便利な物ほど大事にされるから」


「失われにくいのかもしれないねぇ」


少年は感心したように頷いた。


それから親方の手元を見る。


銀の指輪が静かに光っていた。


「この指輪も」


「呪いや祝福の指輪になることがあるんですかね」


親方は少しだけ考えた。


そして優しく笑う。


「私はただの銀の指輪として作ってるけどねぇ」


「買った人がどう使うかまでは分からない」


ヤスリが再び銀を削る。


シャッ。


シャッ。


シャッ。


「作り手にできるのは」


「どうか幸せな使い方をしてあげてね」


「そう思いながら作ることだけかな」


少年は出来上がりつつある指輪を見つめた。


誰かが大切な人へ贈るのかもしれない。


誰かの宝物になるのかもしれない。


「この指輪を手にした人が喜んでくれるといいですね」


親方は頷く。


「そうだねぇ」


窓から差し込む光が銀の指輪を照らしていた。


終


※本作は note にも掲載しています。

※挿絵付き版のほか、作者ブログや『親方の秘密の考察ノート』などの関連コンテンツも公開しています。

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