魔導具ってどこに売ってるの?
工房のテーブルには何枚もの羊皮紙が広げられていた。
親方と薬師が向かい合って座っている。
薬師は羽ペンを片手に何かを描き込みながら熱弁していた。
「ここはこういう素材が使われてて」
「だからそれは高くなるんだって」
親方は呆れたように答える。
「でもこの部分が大事なんだ!」
「予算は決まってるんでしょ?」
「私は奉仕活動をするつもりは無いからね」
二人のやり取りを眺めていた少年が首を傾げる。
「何してるんですか?」
親方は羊皮紙を指差した。
「変わった道具の注文だよ」
すると薬師が即座に反応した。
「変わった道具じゃなくて魔導具の部品!」
「似たようなもんでしょ」
「違う!」
薬師は胸を張った。
少年は少し考える。
そして口を開いた。
「ねぇ親方」
「親方じゃないけどなに?」
「魔導具ってどこに売ってるんですか?」
「大体は普通の商人だな」
薬師が答えた。
「薬屋にも少し置いてるけどねぇ」
親方も続ける。
「商人さんが作ってるんですか?」
「作るのは魔導師とか錬金術師だな」
薬師は端的に答えた。
「作るのが上手な人と」
「売るのが上手な人は別だからね」
親方はそう補足する。
「だから商人が買って売るんだ」
「お店に並べたり」
「遠くの街まで運んだりな」
少年は感心したように頷く。
「どんな魔導具があるんですか?」
「火!」
「水!」
「風!」
薬師は指を折りながら答えた。
親方は苦笑する。
「説明が雑だねぇ」
「だってそうだろ」
薬師は気にしていない。
「この前話した杖も魔導具だし」
「火が出る道具」
「風が出る道具」
「水が出る道具」
「その辺は雑貨屋なんかでも売ってるよ」
少年は目を輝かせた。
「もっとすごいのもあるんですか?」
「ある!」
薬師は即答した。
「あるねぇ」
親方も頷く。
「でも使う人が少ないんだ」
「だから欲しい人が商人に頼んで」
「商人が知り合いの魔導師や錬金術師に依頼することが多いぞ」
そこで親方がふと考える
「そう考えるとうちの鍛冶屋も似たようなもんだねぇ」
「簡単な物は雑貨屋や武器屋に卸して」
「複雑な道具は直接依頼されるこのもあるしね」
「今の薬師のお姉さんみたいに?」
「そう!」
薬師は満足そうに頷いた。
少年はテーブルに広がった羊皮紙を眺める。
変わった形の道具の説明が細かく描かれている。
「魔導具ってすごく便利そうですね」
少年は素直な感想を口にする。
「便利だぞ!」
薬師は自信満々だった。
「でも孤児院では見たこと無いです」
「親方の工房にもありません」
「便利なのにどうしてですか?」
薬師の動きが止まる。
親方が横目で見る。
「言ってごらん?」
薬師は少し気まずそうな顔をした。
「魔力がいるから…」
「魔力ですか?」
「あと値段もそれなりに高いねぇ」
親方が説明する。
「魔導具は魔力を流してる間しか動かない物が多いんだよ」
「火の出る魔導具を暖炉代わりにしようと思ったら」
「ずっと横で魔力を流し続けないといけない」
少年は暖炉の前に座り続ける人を想像した。
確かに大変そうだ。
「それなら薪を燃やした方が楽だよねぇ」
「ちょっと残念です」
少年は肩を落とす。
親方は少し笑った。
「なにか欲しい魔導具でもあったの?」
少年は少し迷う。
そして答えた。
「シスターが水くみ大変だって言ってたんです」
「水の出る魔導具があったら助かるかなって」
薬師は勢いよく立ち上がった。
「作るか!」
親方は即座に言う。
「誰が魔力を流し続けるの?」
「あっ」
薬師は固まった。
少年も少し残念そうな顔になる。
すると親方は続けた。
「でも魔導具がなくても助けられるよね」
「え?」
「君が大きくなって力持ちになればいいんだよ」
少年は目を丸くした。
「それなら魔導具いりませんね!」
「そのためにもたくさん食べて運動しなきゃねぇ」
薬師も大きく頷いた。
「それが一番安上がり!」
終
※本作は note にも掲載しています。
※挿絵付き版のほか、作者ブログや『親方の秘密の考察ノート』などの関連コンテンツも公開しています。




