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エルフの鍛冶屋―ねぇ親方― (世界の不思議を語り合う、1話完結の雑談ファンタジー)  作者: ぱられ


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13/50

回復魔法と治癒魔法は違うの?

カン。


カン。


カン。


工房に金槌の音が響く。


親方は炉の前で鉄を叩いていた。


少年は窓際の木箱に座り、本を読んでいる。


しばらくページをめくっていたが、ふと顔を上げた。


「ねぇ親方」


「親方じゃないけどなに?」


少年は開いた本を見せる。


「回復魔法と治癒魔法って何が違うんですか?」


親方は少し考えた。


「んー……」


カン。


カン。


カン。


「似てるけど違うねぇ」


「違うんですか?」


「回復は元に戻ること」


「治癒は自然に治ること」


少年は少し考える。


「似てます」


「似てるねぇ」


親方は笑った。


「だから本によっては同じ意味で使ってたりもするかな」


「じゃあどっちでもいいんですか?」


「どうだろうねぇ」


親方は鉄を炉の横へ置いた。


「回復魔法って聞くと」


「はい」


「物語に出てくる傷が光って一瞬で治るやつを思い浮かべるかな」


少年は頷く。


「勇者の仲間が使うやつですね」


「そうそう」


親方も頷いた。


「でも私は見たことないんだよねぇ」


少年は目を瞬かせる。


「じゃぁ回復魔法は無いんですか?」


「どうなんだろう」


「本当にあるのかもしれないし」


「無いのかもしれない」


「分からないねぇ」


少年は少し考えた。


「じゃあ治癒魔法は?」


親方は頷く。


「こっちは教会の癒しかな」


「神の奇跡による癒しですね」


「よく知ってるねぇ」


「何度か見たことありますから」


親方は少し考える。


「魔導師達はあれも魔法の一種だって考えてるらしくてね」


「治癒魔法って呼んでるみたい」


「でも教会としては」


「あれは魔法とは違うらしいねぇ」


「違うんですか」


少年は少し首を傾げる。


「同じなのにですか?」


「同じかどうかも分からないしねぇ」


親方は肩をすくめた。


「呼び方なんて案外そんなものだよ」


しばらく沈黙。


少年は本を見下ろす。


「癒しは誰でも使えるんですか?」


「使えるのは聖職者だけらしいねぇ」


「どうやったらなれるんですか?」


親方は止まった。


「んー……」


少し考える。


「私は詳しくないなぁ」


その時だった。


コンコン。


工房の扉が叩かれる。


「お邪魔します」


聞き慣れた声だ。


少年が振り返る。


「シスター!」


シスターは小さく手を振った。


「今日は近くまで来ましたので」


「帰る時間になったら一緒に戻ろうかと思いまして」


親方は少し笑った。


「ちょうどいいや」


「シスター」


「はい?」


「聖職者になるのって大変なの?」


シスターは少し驚いた顔をした。


「急ですね」


「今ちょうどその話してたんだよ」


少年も頷く。


「僕も気になってました」


シスターは少し考えた。


「そうですね」


「簡単ではないと思います」


「勉強もありますし」


「修行もあります」


「教会のお仕事も覚えなければいけません」


少年は目を丸くした。


「いっぱいあります」


「ありますね」


シスターは少し笑った。


「私は孤児院で育ちましたから」


「小さい頃から教会の仕事を見ていましたけど」


「それでも大変でしたよ」


「あ」


少年が声を上げる。


「シスターも孤児院だったんでした」


「そうですよ」


シスターは頷いた。


親方も思い出したように言う。


「そうだったねぇ」


少年は少し考えた。


それから顔を上げる。


「じゃあ僕も聖職者になれますか?」


シスターは少し考えた。


「なれるかもしれません」


「でも」


「聖職者以外にも色んな道がありますよ」


少年は首を傾げる。


「色んな道?」


「はい」


シスターは優しく笑った。


「君は将来なにになりたいんですか?」


少年は少し考える。


だが答えは出なかった。


「まだわかりません」


シスターは頷く。


「それでいいんですよ」


「たくさん悩むといいです」


「色んなものを見て」


「色んな人と出会って」


「それから決めても遅くはありません」


親方はその話を聞きながら頷いた。


「そういえばシスター」


「なんですか?」


「昔お花屋さんになりたいって言ってたよね」


シスターの動きが止まった。


「いつの話ですかもう!」


親方は少し考える。


「そんな昔でもない気がするけど」


「昔です!」


少年はきょとんとした。


「お花屋さんですか?」


シスターは少し照れたように笑う。


「子供の頃の話ですよ」


「でもお花は今でも好きです」


少年は頷いた。


なんだか少し安心した。


シスターにも自分と同じように悩んでいた頃があったらしい。


しばらくして。


少年は親方を見る。


「親方は?」


「うん?」


「なりたいものとかあったんですか?」


親方は少し考えた。


「どうだろうねぇ」


炉の火を眺める。


「私は鍛冶屋になるまで長いことフラフラしてたからねぇ」


「どのくらいですか?」


親方は少し考える。


「何百年とか……」


少年とシスターの声が重なった。


「「長すぎます!」」


親方は吹き出した。


「そうかもねぇ」


カン。


カン。


カン。


工房に金槌の音が響く。


終

※本作は note にも掲載しています。

※挿絵付き版のほか、作者ブログや『親方の秘密の考察ノート』などの関連コンテンツも公開しています。

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