↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルフの鍛冶屋―ねぇ親方― (世界の不思議を語り合う、1話完結の雑談ファンタジー)  作者: ぱられ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/50

魔石と宝石って違うの?

カタッ。


カタッ。


カタッ。


工房の棚を整理する音が響く。


少年は背伸びをしながら、棚の奥に押し込まれていた道具を一つずつ取り出していた。


親方は作業台で小さな金具を磨いている。


「あれ?」


少年の手が止まった。


棚の奥に、きらりと光る石が転がっている。


青く透き通った小さな石だった。


少年はそれをそっとつまみ上げる。


「ねぇ親方」


「親方じゃないけどなに?」


少年は手のひらの石を親方に見せた。


「これって宝石ですか?」


親方はちらりと石を見る。


「そんなとこにあったか」


「それは魔石だね」


少年は石を見つめた。


「どうして分かるんですか?」


「宝石は持ってないから」


「綺麗なのにですか?」


親方は少し考える。


「綺麗だけどねぇ」


「綺麗なだけならいらないかなぁ」


少年はもう一度、手のひらの石を見る。


確かに綺麗だった。


でも親方にとっては宝石ではないらしい。


「ねぇ親方」


「親方じゃないけどなに?」


「魔石と宝石って違うんですか?」


親方は金具を磨きながら答える。


「違うねぇ」


「宝石は石」


「石ですか?」


「うん」


「山とか」


「地面のうんと深いところとか」


「そういう場所から取れる」


少年は頷く。


「じゃあ魔石は?」


「魔物から取れる」


少年の手がぴたりと止まった。


「魔物から?」


「うん」


「石なのにですか?」


「石なのにねぇ」


親方は少し笑った。


少年は魔石を指でつまみ、光にかざした。


青い光がきらりと揺れる。


「これも魔物から取れたんですか?」


「たぶんねぇ」


「なんの魔物ですか?」


「覚えてないなぁ」


「覚えてないんですか」


「魔石だけ見ても分からないしねぇ」


親方は金具を置く。


カチ。


「でも小さいから」


「そんなに大きな魔物じゃないと思うよ」


少年は少し安心したように息を吐いた。


「小さい魔物ですか」


「たぶん」


「スライムとか?」


「かもしれないねぇ」


少年は魔石をじっと見つめた。


「魔物だけが持ってるんですか?」


親方は少し考える。


「そういう説もあるねぇ」


「違うんですか?」


「生き物はみんな持ってるって話もある」


少年は目を丸くした。


「みんなですか?」


「みんな」


「鳥も?」


「鳥も」


「魚も?」


「魚も」


「犬も?」


「犬も」


少年は自分の胸元を見下ろす。


「じゃあ僕もですか?」


親方は少し笑う。


「生き物がみんな持ってるって話が本当ならそうだろうね」


少年は胸元に手を当てる。


しばらく真剣な顔で考えていた。


親方はその様子を見て、ふと思い出したように言う。


「そう言えば」


「はい」


「魔石が体の中にあるから魔法が使える」


「そんな話もあったね」


少年は顔を上げた。


「魔法ですか?」


「うん」


「だから生き物は本来みんな魔法を使えるものらしいよ」


少年の目が一気に輝いた。


「じゃあ僕も魔法が使えるんですか?」


親方は少し笑う。


「そこ行く?」


「だって魔法ですよ?」


「魔法だねぇ」


少年は胸元に手を当てたまま言う。


「僕にも魔石があって」


「はい」


「魔石があるから魔法が使えるなら」


「うん」


「僕も魔法が使えるはずです」


親方は少し考える。


「理屈だけならそうかもねぇ」


少年はぱっと顔を明るくした。


「じゃあ使ってみます」


「今?」


「はい」


少年は魔石を棚の上にそっと置く。


それから両手を前に出した。


「炎よ」


親方は目を瞬かせる。


「おぉ」


「集え」


「それ、前にもやってたねぇ」


少年は真剣だった。


「はっ!」


何も起きない。


工房には静かな時間が流れた。


親方は少し笑う。


「勉強しないと難しいんじゃないかなぁ」


少年は両手を見つめる。


「勉強ですか」


「うん」


「火を出したいなら」


「火のことを知らないといけないらしいし」


「風を使いたいなら」


「風のことを知らないといけないらしい」


少年は少し考える。


「じゃあ」


「いっぱい勉強したら使えるようになりますか?」


「使えるようになるかもね」


少年の顔がまた明るくなった。


「じゃあ頑張って勉強します」


「おぉ」


「本も読みます」


「偉いねぇ」


少年は本棚の方へ向かった。


「魔法の本はどこでしたっけ?」


親方は少し考える。


「一番下の段なら左の方かな」


少年はしゃがみ込み、本棚の一番下を探す。


「あった!」


嬉しそうに一冊の本を抱えて戻ってくる。


ぱらぱらとページをめくる。


そこには杖を掲げた魔法使いの挿絵が描かれていた。


少年は近くにあった細い木片を手に取る。


そして挿絵の魔法使いを真似して、腕を大きく振った。


「えいっ!」


何も起きない。


「もう一回です」


少年は真剣な顔で木片を構える。


「えいっ!」


やっぱり何も起きない。


親方は作業台に頬杖をつき、その様子を眺めていた。


少年は何度も木片を振る。


「えいっ!」


「えいっ!」


親方は少し笑う。


「いっぱい勉強したら」


小さく呟く。


「魔法以外にも色々出来るようになるよ」


少年には聞こえていない。


「えいっ!」


「えいっ!」


少年は夢中で魔法使いの真似を続けている。


親方はそれを静かに見守っていた。


工房には少年の元気な声だけが響いていた。


終

※本作は note にも掲載しています。

※挿絵付き版のほか、作者ブログや『親方の秘密の考察ノート』などの関連コンテンツも公開しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。