「笑わない少女」
# 『昼間の金星、僕はそれを見つけたい!』
## 第4話
### 「笑わない少女」
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旅の初日。
森の中は、思っていた以上に静かだった。
鳥の声は遠く、風が木々を揺らす音だけが響いている。
ソラたちは焚き火を囲んでいた。
パチパチと火がはぜる。
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「うまい!」
アルトは弁当を食べながら感動していた。
「まだ昼だぞ」
ソラが呆れる。
「旅は食事が本番だ」
「名言みたいに言うな」
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ベガは地図を見ていた。
「明日には森を抜けられるはずよ」
「順調ね」
そう言いながらも、彼女の目はどこか遠くを見ていた。
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そして――
ルナは少し離れた場所に座っていた。
火にも近づかない。
誰とも話さない。
ただ、空を見上げている。
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スピカが小声で言う。
「ねえ、あの子さ」
「ずっとああなの?」
「まあ、ルナだしな」
ソラは曖昧に答えた。
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その夜。
風が冷たくなる。
焚き火が小さくなる。
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「……来る」
ルナがぽつりと言った。
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全員が振り向く。
「何が?」
ソラが聞く。
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その瞬間。
森の奥から――
ゴゴゴゴゴ……
低い音が響いた。
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地面が揺れる。
木々が折れる音。
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アルトが叫ぶ。
「でかいの来たぞ!!」
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暗闇の中から現れたのは――
黒い影のような魔物。
形が定まらない。
空気そのものが歪んでいるようだった。
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「なにあれ……!」
スピカが後ずさる。
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ベガが剣を構える。
「星獣……じゃない……これは異質すぎる」
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魔物が唸る。
そして一気に襲いかかる。
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「下がれ!」
ソラが叫ぶ。
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しかし間に合わない。
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そのときだった。
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ルナが立ち上がった。
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初めて。
彼女がみんなの前に出た。
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「……やめて」
小さな声。
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魔物が一瞬止まる。
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ソラは驚く。
「ルナ……?」
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ルナは空を見上げた。
月が雲に隠れている夜空。
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「まだ……早いのに」
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そう呟いた瞬間。
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ルナの目が光った。
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空気が変わる。
森の音が消える。
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「……昼間の金星の欠片」
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ルナの手の中に、淡い光が生まれる。
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そして――
一瞬で、魔物を包み込んだ。
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光。
静寂。
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魔物は跡形もなく消えた。
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沈黙。
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アルトがぽつりと言う。
「今の……何?」
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ベガは震えていた。
「星術じゃない……」
「もっと古い……」
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ルナは何も言わずに座り直した。
いつもの場所に戻る。
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ソラが近づく。
「ルナ」
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ルナは答えない。
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「さっきの、何だったんだ?」
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少しの沈黙。
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ルナは小さく言った。
「見えないものを……少しだけ借りただけ」
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「借りた?」
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ルナは空を見上げた。
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「この世界にはね」
「昼間の金星の“かけら”が落ちてるの」
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ソラは息をのむ。
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「それを使うと」
「少しだけ、見えないものが見える」
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ルナはそこで初めてソラを見る。
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「でも代わりに」
「大事なものも少しずつ失っていく」
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夜風が強く吹いた。
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ソラは何も言えなかった。
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ルナは微笑んだ。
いつもより少しだけ寂しい笑顔で。
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「だから私は探してるの」
「全部戻す方法を」
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焚き火が揺れる。
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その夜。
誰も眠れなかった。
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そしてソラは思う。
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(昼間の金星って……ただの星じゃない)
(もっと……大きな何かだ)
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空には、まだ見えない何かが確かにあった。
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## 次回予告
### 第5話
## 「失われる光」
森を抜けたソラたちは、崩れた古代都市へ辿り着く。
そこには“昼間の金星”の記録が残されていた。
しかし同時に判明する――
ルナの力の正体と、彼女が失っているもの。
そしてベガが隠していた「王都の任務」とは?
さらにシリウスが再び現れ、旅の目的が揺らぎ始める!
**次回、『失われる光』**
昼間の金星は、希望か。それとも代償か――




