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第六十六話「まさかのサプライズがありました」

お待たせしました。第六十六話です。

ダンからルーナへサプライズです。

 ダンの案内で俺とメリアはビュッフェ会場となる部屋へ踏み入る。そこには数々の料理がテーブルに所狭しと並べられており、俺とメリア以外のメンバーは既に揃っていた。


「ふーなしゃわおほいえすわ!(ルーナ様遅いですわ!)」


「ほえ、ふーなおはやふはへい!(ほれ、ルーナも早く食べい!)」


「……口に入っているものを飲み込んでから喋りなさい。みっともないですわよ」


 我先にと部屋を飛び出していったマルシアとユエが頬袋を膨らませながら俺に詰め寄ってくる。さっきまでいがみ合っていたというのに、こういう時に限って息はピッタリなようだ。


「あ、ルーナ様あ! はい、これルーナ様に取っておきました!」


「ありがとうカリア。……貴方もその口についているものをなんとかしなさいな」


 今度はカリアが浮き足立ちながら俺に料理を乗せた皿を持ってきてくれたが、口の周りにはクリームやらソースやらがべっとりついてしまっている。カリアらしいと言えばらしいのだが、もう少し節操を持ってほしい。


「はっはっは! いやあ、たくさん食べていただけてるようで何よりです。なんせたくさん作りすぎてしまったものですから」


「あら、ダンともあろう人が作りすぎてしまうなんて珍しいですわね。一体どうしたのです?」


 俺が何気ない疑問をダンに投げかけると、ダンは恥ずかしげに頭をかきながら答えた。


「いやあ、久々にペパーと会って色々話し、夕食はコース料理にしようと決めたところまではよかったのですが……お互い熱が入りすぎてしまいましてね。結果想定よりも作りすぎてしまい、急遽ビュッフェスタイルにした次第なのです」


「あら、ダンにもそういう一面があったのね。意外ですわ」


「全くです。あんなダンを見たのは初めてでしたよ」


 俺とダンが話していると、そこにペパーも現れて会話の中に入ってきた。ペパーは柄にもなく、ダンの方を見てにやけ顔になっている。


「何を言いますか。ルーナ様の味の師匠であると伝わっている手前、ペパーには負けられないと思ったまでですよ」


「なるほど。弟子を持つと変わるものなのだな」


 しばらく会話を交わしたのち、ダンとペパーはお互いを見合って拳を軽く打ちつけ合う。……ライバルっていいものだな。

 その光景を眺めていると、ダンはふと何かを思い出したかのようにオレに向き直った。


「あ、うっかりしていました。途中にサプライズも用意しておりますので、ぜひ楽しみにしていてください」


 ダンはそう告げると、ペパーと共にどこかへ行ってしまった。恐らくそのサプライズの用意の為であろう。しかし、サプライズを用意するとは、何か特別なことでもあっただろうか……。


「やあルーナ嬢。疲れはもうとれたかい?」


「は……はいギース様。私はご覧の通り、大事ございませんわ。それより、ギース様の方こそお体に障ってはいませんの?」


 俺が料理をつまみながら考え事をしていると、背後からギースが声をかけてきた。見たところ変わりないように見えるが、あの決闘の後ということもあるので、念の為様子を伺っておく。


「僕は大丈夫さ。……いやあ、まさか僕が文字通り手も足も出なかったとはね。悔しいけど、改めて完敗だ」


「ふふ……。本気のギース様に何か行動されては前のように後手に回る一方だと思っての作戦ですわ。それに……」


「むっ。なんじゃ2人で話しおってからに。我も混ぜよ」


 俺とギースの会話を聞きつけたユエがどこからか飛んできて、俺の右肩に乗る。そのユエの頭を軽く指で撫でながら、俺は言葉を続ける。


「あの勝利はユエあってこそです。ユエがいなければ、勝利は無かったでしょう」


「ちょ……やめんかルーナ。こそばゆくて敵わんわ」


 ユエはくすぐったそうに体をよじるが、満更でもないのか俺の指を退けようとはしなかった。

 その光景を微笑ましく眺めていたギースが、やがてゆっくりと口を開く。


「そうだルーナ嬢。今日はルーナ嬢に重要なお知らせがあるんだ」


「えっ……? 重要なお知らせとは一体なんですの?」


「それはすぐに分かるよ。……みんな! こっちに集まってくれ!」


 ギースが号令をかけると、その場の全員が俺を囲うように集合してきた。一体何が起きるのかと困惑を隠せずにいると、その場の全員が懐から筒状の何かを取り出し、俺に向けてきた。


「ルーナ様! お誕生日、おめでとう!」


「…………えっ?!」


 その掛け声と共に、全員が持っていた筒状のもの——クラッカーを鳴らした。あまりの突然な出来事に、俺はしばらく思考が止まってしまっていた。


「なんだよルーナ、そんな顔して! まさか自分の誕生日を忘れてたなんて言わねえよな?」


「そ、そんな訳ございませんわ……! ただあまりにも突然だったので呆気に取られてただけです!」


 ボーッとしている俺を見兼ねたジェイドが、俺の背中を軽く叩いてからかってくる。

 祝われている手前誕生日を忘れていたなんて言えないが、正直忘れてしまっていた。今日8月8日は俺——ではなくルーナの誕生日だった。だがそれを思い出したことで、1つ疑問が思い浮かぶ。俺はそれをギースに問いかけた。


「あの、私の誕生日ってギース様にお伝えしておりましたか……? 全く記憶に無くて……」


「ああ、それはダンから聞いたんだ。初めは単純にみんなが滞在中の料理について聞こうと思っただけなんだけどね、ダンから『ルーナ様の誕生日が近いから、サプライズしてあげたい』って言われてね。それで今回この場を設けたのさ」


「そうでしたか。ダン……」


 ダンの心温まるエピソードに、俺は思わず涙を流しそうになった。だが、俺へのサプライズはまだ終わりではなかった。


「お誕生日おめでとうございますルーナ様! こちらのケーキもお召し上がりください!」


 そう言ってダンがペパーと共に大きなケーキを運んできた。豪勢なケーキの登場に、会場からも軽く歓声が上がる。


(きっと転生前なら、こんな幸福は味わえなかっだろうな……)


 俺はこんなにも幸せ者で良いのだろうか。みんなからの気持ちで溢れ出しそうな幸福を噛みしめつつ、俺は極上のケーキを頬張った。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

次回は17日投稿予定です。

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