第六十四話「新技を披露しました」
お待たせしました。第六十四話です。
ルーナの新技がついにお披露目です。
新技——と言っても、俺は上級までの闇魔術はほぼ習得しており、かといって特級の魔術を扱えるだけの魔力は持ち合わせていない。ならばどうすれば良いのか。
そのヒントとなったのは、マルシアがワイバーン戦で見せてくれた巨大なウォーターベールだった。決して魔力量が多いとは言えないマルシアがそれを長時間維持し続けていたのだ。つまり、「魔力消費量の効率化」こそが強くなれる近道だったのだ。
俺は試験勉強の合間を縫って、魔力消費効率に詳しいギュランに色々と指導してもらった。ギュラン曰く、俺は今まで魔力の扱いがかなり雑だったようだ。だが、逆に言えば雑に扱っても問題ない程の魔力を持っているということ。効率の良い扱い方を学べば、更に魔術の域は上がるとのことだ。
俺はギュランに教わったことを思い出しながら、両手を打ちつけて『シャドーバインド』を発動させる。かつてのシャドーバインドで出せた腕の数は4本。標的の四肢を抑え込むだけで精一杯だった。
だが、魔力を効率よく扱えるようになった俺はその3倍である12本の腕を顕現させることに成功した。
「さあ、ギース様を捕えなさい!」
その言葉と共に、ギースの足元から現れた12本の腕がギースを拘束する。前闘った時は無理矢理突破されたが、これならば突破出来まい。
「おお、シャドーバインドをここまで扱えるとはたいしたもんだな。ほれほれ小僧、さっきから身動き一つ取れない気分はどうだ?」
俺の技に感心したユエは、ギースの周りをパタパタ飛びながら彼を煽っている。だが、ギースは冷静にユエの煽りに対応する。
「確かに身動きは取れてないな。でも、僕はまだダメージをほとんど喰らってない。このままなら、この拘束すらも突破してしまうよ?」
「突破なんて無粋なことは我がさせんよ。ちゃあんと、ルーナの奥義を喰らってもらわねばな」
確かにギースならばあの拘束すらも突破しかねないのかもしれない。だが、そこは上手くユエが牽制してくれている。今が絶好のチャンスだ。
俺は再び意識を集中させ、シャドーバインドの要領で影の腕を無数に作り上げる。シャドーバインドの12本では足りない。更に大量の腕を作り上げて凝縮させる。その様子を見たギュランがボソッと呟く。
「俺は……教えてはいけない奴に魔力消費効率を教えてしまったのかもしれないな……」
ギュラン含めたその場の全員が、俺の作り上げた巨大な影の腕を見上げていた。その腕は闇魔術特有の禍々しいオーラをこれでもかと解き放っており、魔術の耐性が低い観客たちの中にはそのオーラに当てられて倒れ込む者もいた。
だが俺の奥義に期待していたユエは、期待と探究心からか目を輝かせながら俺の魔術を眺めていた。
「我の知らない技……そしてこれほどまでの魔力……間違いない。やはりルーナは我以上の天才だ……!」
ユエの称賛を聞いてますます調子が上がってきた俺は、その勢いのまま巨大な腕をギースに振り下ろした。
「くっ……!これはまずいかもな……!」
拳が振り下ろされる寸前、ギースは辛うじて風魔術による結界を張ったが、それだけでは完全に防ぐことはできずその結界ごと拳で押し潰した。
周囲が固唾を飲んでギースの状態を見守る。打ちつけた影の腕が離散すると、そこには地面に仰向けになって倒れているギースの姿があった。そのギースにはダメージはおろか、傷一つも付いていない。しかし、ギースがそこから動くことは無かった。
「これは一体どういうことなんだ……。僕は確かにあの腕に……」
押しつぶされるのを覚悟していたのか、困惑した様子でギースは俺に問いかけてくる。ギースの混乱を解くように、俺は技の解説を始める。
「今のは私が編み出した技、『タイタンズハンド』ですわ。腕自体に攻撃力は無く、腕から発せられるオーラと潰されるという恐怖によって相手を行動不能にさせる技です。更に打ちつけた時に標的の魔力を吸い取る効果がありますので、魔力の多い方ほど真価を発揮しますわ」
「そうか……それで身動き一つ取れないのか。これはしてやられたね」
「だから言ったでしょう? 先手を譲ったこと、後悔しても知りませんわよって」
「そうだね。まさかここまでとは思わなかった僕の完全敗北だ。認めるよ。今回の勝者は君たちだ」
ギースが降参宣言するなり、静まり返っていた周囲のオーディエンスから大歓声が巻き起こった。メリアとマルシアはお互いに抱き合いながら喜びを分かち合い、カリア、ジェイド、ゼノは思い思いに舞い踊っている。コニーとギュランは変わらず冷静に、淡々と拍手を送っていた。
そうして周囲の様子を観察していると、ユエが我慢できない様子で俺の肩に飛び乗ってきた。
「おいルーナよ、先ほどの技はなんだ?! いつの間にあんな技を編み出したのだ!」
「あ、後できちんと説明しますからどうか落ち着いて……!」
「特級にも等しい技を目の当たりにして落ち着いてなどいられるものか! ほれ、早く詳細を教えてくれ!」
「だから少し落ちついて……ちょ、痛い痛い! クチバシで髪の毛を引っ張らないでください!」
こうして大騒ぎが止まぬ中、ルーナ&ユエVSギースの闘いの幕は閉じたのであった。だが、騒ぎがひと段落した後もユエからの質問攻めにあい続けたのは言うまでもない。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
次回は11日投稿予定です。




