第六十三話「ギースと再戦しました」
お待たせしました。第六十三話です。
ルーナ&ユエVSギース、再びです。
俺とギースが闘うという話は瞬く間に城内に知れ渡り、気づけば俺たちが立っているコートの周りには城の使用人や騎士たちが集まってきていた。その中にはもちろん、彼女らもいた。
「ルーナ様あ! ユエ様あ! 頑張ってくださいねえ!」
「こうしてみると、なんだか武闘大会の時を思い出しますね」
「そうですわね。そして今回こそ、その時みたいにルーナ様が圧勝すること間違いなしですわね!」
メリアら女性陣は俺への応援をとめどなく送ってくれている。非常に心強い。一方、男性陣の反応は個性豊かだ。
「くそっ! ギースの野郎、ルーナと闘うなんてずりいぞ! 俺だってまた闘いたいってのによ!」
「……ジェイドは本当に闘うことしか頭にありませんね。まあ、ルーナと闘いたいというのは私も同じですが……!」
「ねえねえ、ギュランはルーナと闘いたいって思う?」
「ゼノ様……?! ……確かにルーナの実力は折り紙つきです。ですが、私が気になるのはあのユエと名乗るカラスですね。かつて最強の魔術使いと崇められながらも恐れられたと言われる伝説の存在と、偶然名前が一致しているとは考えられないオーラがあります。もしや本物なのか……?」
「だよね、だよね! 俺も名前を聞いた時は半信半疑だったけど、ユエの持つパワーは本物だよ。一撃喰らった僕が言うんだから間違いなし!」
「やはり王族である貴方も……ん? 攻撃を喰らった?」
そんな彼らを含めたオーディエンスからは歓声が鳴り響いていたはずだが、極限まで集中力を研ぎ澄ませている俺たちには聞こえていなかった。
前回ギースと闘った時は俺は手も足も出なかった。それでいて、恐らく彼も本気では無かっただろう。だが不思議と負ける気がしない。ユエがいるからかもしれないが、俺だってあれから数々の死線を潜り抜けてきたのだ。
相対するギースも、あの時の木剣ではなく彼の愛用する本物の剣を携えている。それだけで彼が本気ということが分かる。その剣を軽く数振りしたのち、ギースが挑発してくる。
「さてルーナ嬢。決闘を申し込まれた以上は僕も本気で行くよ。それとも、今から降参して尻尾巻いて帰るかい?」
「はっ! 降参だと? そんなもの——」
「する訳がありませんわ!」
と、ユエと共に挑発に対して大見得を切ってみせる。この一通りのやり取りに周囲のオーディエンスも一際盛り上がりをみせている。ここまできたら、敗北して恥をかくのはごめん被りたい。俺はユエに耳打ちをして作戦を求める。
「そういやユエ。同じ相手には負けんってさっき豪語してたけど、本当に勝算はあるのか?」
「ふんっ。あの闘いで奴の実力は見切ったわ。それに試したいことも幾つかあるしな」
「試したいこと?」
「ああ。例えば——」
「……へえ。そりゃいいかも」
そう言うとユエは俺に対ギース用の作戦案を幾つか伝えてくれた。その内容は確かに、どれも魅力的なものばかりだ。これは試さない手はない。
「さて、作戦会議は終わったかな。先手は君たちに譲るから、いつでもどうぞ」
「あら、レディーファーストのつもりでして? その選択、後で後悔しても知りませんわよ?」
ギースの言葉に遠慮なく甘え、俺たちは攻撃準備を始める。使用する技はかつてギースに軽々と跳ね飛ばされた『シャドーボール』だ。最大威力まで貯めたシャドーボールを手元から足元へ落とし、それを前回同様ギース目掛けて蹴り上げる。
「おやルーナ嬢。その技は僕に通用しないってこと、忘れてるのかい?」
ギースの言う通り、このままでは前と同じくギースに軽々しく弾き飛ばされてしまうだろう。だが、それは前回のままであった時の話だ。
「ふんっ!」
俺が蹴り放ったシャドーボールに、ユエが風魔術の『ウインドカッター』で追い討ちをかける。すると、ウインドカッターの風力に押されたシャドーボールは急激に速度を上げてギースの懐へ飛び込もうとしている。
「なっ——!」
ギースが何か言うよりも速く、シャドーボールはギースに直撃——したかに見えたが、ギースは脅威の反射速度で無傷では無いものの剣で防ぎきってみせた。
「止めた……?! 嘘でしょ……」
「うーむ。不意は完全につけておるはずだがなあ……恐るべき反射神経よな」
俺たちがギースの身体能力に改めて驚愕する一方、技を防ぎきったギースはしたり顔で剣を構えようとする。
「今のはなかなか良い攻撃だった。まさか風魔術でスピードを上げてくるとはね。——じゃあ、今度は僕が……」
「ふんっ。甘いわ小僧!」
攻撃の構えをとろうとしていたギースだが、今度はユエが『マッハウインド』を使ってギースに急接近していた。ユエのとある技を警戒したギースは咄嗟に剣を地面に突きつけて防御体勢をとる。
だが、ユエはお構いなしと言わんばかりに『ビーストスクリーム』をギースにお見舞いする。
「ギャアアアアアアア!」
「——ッ! 流石の威力だ。でもその技は精々数秒程度しか足止め……あれ、体が動かないだと?」
「だから甘いと言っておるんじゃ。我を誰だと心得ておる」
リンクが安定したユエのビーストスクリームの威力は、ゾンビ化したワイバーンとの戦いで一度目の当たりにしている。あのワイバーンですら数秒間まともに動くことができなかったのだ。これを生身の人間が食らえばひとたまりもないだろう。
さっきのシャドーボールに今回のビーストスクリーム。一度見せたことのある技でギースの油断を誘い、更にその技に改良を加えて隙を突く。それがユエの考えた作戦だ。
「ほれルーナ! 今のうちにお主の最大火力を叩き込め!」
「ええ! お任せを!」
ユエが作り出した千載一遇のチャンス、ここを逃さない訳にはいかない。ここは1つ、温めておいた新技をこの場で披露するとしよう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
次回は8日投稿予定です。




