第五十九話「みんなでランチを食べました」
お待たせしました。第五十九話です。
やはり食は大事ですよね。
さて、月プリの主要キャラたちが一堂に会した今回。そんなそうそうたるメンバーが集まった中で一体何が始まるのかというと……
「もうお腹ペコペコですわ〜! 早く食べさせてくださいまし〜!」
「俺もだ! 早く飯にしようぜ!」
「……全く風情が無いなお前たちは。せっかく外の空気を吸いながら食べるのだ。そんなに急いたらせっかくの心地よさが台無しではないか」
——そう、ピクニックである。王城の中にある広い中庭を使い、地面に敷いたシートの上でみんなで昼食を取ろうというものだ。
夏場の正午頃ということもあって日差しも強く照り始めているが、中庭の中央には大きくそびえ立つ大樹があり、そこの日陰に入ってしまえば暑さはほとんど感じなくなる。
「なんだか、とても賑やかで楽しいです。ギュラン様も、せっかく来たのですし、楽しみましょう?」
「……俺には騒がしすぎて敵わん」
メリアの問いかけに怪訝そうな顔をするギュランではあるが、しっかりランチを持参してきている辺り満更でもないのかもしれない。
「ルーナ様あ、ちょっといいですか」
みんなの微笑ましいやり取りを眺めていると、背後からカリアが話しかけてきた。振り返ってみると、カリアはどこか落ち着きなさそうにしている。
「どうしたのカリア? ……もしかしてお腹が空きすぎて待ちきれないとか言いませんわよね?」
「もう、私はそこまで食い意地は張ってませんよお」
俺の冗談にカリアぷくっと頬を膨らませて可愛く反抗する。……ついさっき匂いだけでクッキーを嗅ぎ当てたのは誰だったか。
「そうではなくて、いつの間にかダンさんの姿が見えないのですが、ご存知ないですかあ?」
カリアに言われて改めて辺りを見回してみると、確かにダンの姿がいつの間にか見えなくなっている。一体どこに行ってしまったのだろうか。
「ん? ダンのやつならさっきギースと話してた後にユウラに連れられてどこかへ向かっていったぞ。あの小僧、何やら企んでおるようだな」
「ユウラ副団長の姿も見えないと思ったら、そういうことでしたの。教えてくれてありがとう、ユエ」
「礼には及ばん。それよりも、我もそろそろ空腹の限界だ。早よ食べさせてくれ」
ユエはそう言いながら待ちきれないといった様子で、俺の肩で足踏みをしている。ダンのクッキーを1番多く食べていたというのに、一体その小さい体のどこに入っているのだろうか。
「さて、みんな準備はいいかな? では早速始めるとしよう。各自、持参したものを披露してくれ」
「はいはーい! 私が1番ですわ!」
ギースの開始の合図と共に、マルシアが名乗りを上げてバスケットの蓋を開ける。中身は彼女の十八番であるサンドイッチだ。相変わらず瑞々しい野菜たちの彩りがとても美しい。
表情が険しかったギュランも、マルシアのサンドイッチを見た途端「ほお……」と感嘆の声を漏らしていた。
「よっしゃ! 次は俺だな!」
今度はジェイドが自信満々に持ってきていた弁当の箱を開ける。そこには、ロールケーキやマカロンといった見ただけで頬がとろけ落ちそうなスイーツがぎっしりと詰まっていた。
俺を含め、それを見た女性陣は目を輝かせて歓喜の声を上げた。
「こ……これってまさか!」
「ミニョンスヴニールのやつですかあ!」
「おうよ! プランさんに今日のこと話したら喜んで色々準備してくれたぜ。お前らにまた食べてほしいってな」
「ありがとうございますジェイド様……!」
心を弾ませている俺や女性陣を見て、ユエが不思議と言わんばかりの表情で俺に囁いてきた。
「なあ、お主たちは何をそんなに騒いでおるのだ? 見たところただの菓子ではないか」
「ふふ……ただのお菓子だと思ったら大間違いよ。ユエも食べたら気にいること間違いなしですわ」
「ほう……そこまで言うのならば楽しみにしておこうではないか」
ユエが期待を膨らませるのも束の間、それからも順番に持参した弁当が披露されていった。メリアは得意の焼菓子を持参していた。プラン氏のスイーツの後だと見劣りすると少々自信無さげだが、メリアのお菓子には彼女なりの良さがある。そこまで卑下するほどではないだろう。
コニーとギュランは、それぞれソーセージやハムといった軽くつまめるようなおかず類が入った弁当箱を用意していた。2人曰く、「主食類は誰かが持ってくるだろうから」とのこと。用意周到な2人らしい。
ちなみにギースはというと、食べ物ではなく紅茶を用意していた。淹れられたその紅茶の香りを嗅いでみると、今まで嗅いだことのない上品さと芳醇さが鼻に抜けた。紅茶淹れに一家言あるカリアが興味津々な様子でギースに色々尋ねていたが、残念ながら秘密とのことだった。
さて、残すところは俺の持参したものとなっていた。嫌でもみんなからの期待の眼差しが俺(正しくは俺の持っているバスケット)に向けられる。ここまで注目されると今更ながら緊張してしまうが、これまでたくさん作ってきたのだから問題ないだろうと自分に言い聞かせて、バスケットに入れたお手製おにぎりを披露した。
「うんうん。やはりルーナ嬢のおにぎりがあってこそ、外で食べる意味があるというものだ」
「ええ。これがあれば間違いなしですね」
「ほう……これが噂に聞いていたルーナのおにぎりとやらか」
「ギースから聞いちゃいたが、実際に見ると本当に美味そうだな!」
既に俺のおにぎりの味を知っている組は深く頷き、知らない組からは期待の眼差しが更に大きくなる。正直、今日一盛り上がっていると言っても過言ではないほどだ。
俺があまりの盛り上がりように困惑する中、ユエがボソッと呟く。
「本当にお主は人気者だな。……少し妬いてしまうぞ」
「え? ユエ、最後なんと仰いました?」
「なんでもない。ほれ、早く食べるぞ」
こうして全員の持参した弁当が出揃ったところでランチタイムが始まり、それぞれが思い思いの料理に手を伸ばす。だが、誰のものよりも先に俺のおにぎりが真っ先に無くなってしまったのは言うまでもない。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
次回は27日投稿予定です。




