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第五十話「魔物討伐へ出発しました」

お待たせしました。第五十話です。

お陰様でおとあくも五十話を迎えました。飽き性故エタってしまいそうになることが何回もありましたが、それでも続けられたのは読んでくださっている皆さんのお陰です。本当にありがとうございました!

そして、これからもよろしくお願いします!

 ケーキ屋にてジェイドから魔物調査及び討伐隊への参加を依頼されてから2週間後、俺たちはジェイドのお屋敷に呼ばれていた。何やら遠征前に渡したいものがあるとのことだった。


「わあ……! ルーナ様とってもお似合いですう!」


「そ、そうかしら?」


 俺たちが渡されたのはいわゆる戦闘用の服だ。俺のは学園の制服に似たデザインとなっているが、全体的に黒や紺色となっている。そして何より、黒色のケープ風マントが俺の厨二心をくすぐる。みんながいる手前平静を装うが、少しでも油断するとにやけ顔になってしまいそうだ。


「ルーナは魔術メインだから装備は厚くしたかったんだが……体力に反してお前は結構アグレッシブに動き回るから、できるだけ軽い素材で依頼した。だがせめてもの装備として、頑丈な素材で作られたマントも用意させてもらったぜ」


「とても気に入りましたわ。ジェイド様、ありがとうございます!」


 スミス家は戦闘に精通していることもあり、戦闘用の武器や防具を仕立てるお抱えの職人がたくさんいるようだ。

 依頼を受けた後に、いきなりジェイドが俺たちの寸法を聞いてきた時は流石にその場の全員から白い目で見られていたが、これの為だったのならば話は変わってくる。


「私の衣装もとっても素敵です! とても軽いのに、守られている安心感があります……!」


「機能性とオシャレを兼ね備えるデザインと技術力……是非この目で見たいですわ」


 後方支援のメリアとマルシアは2人とも足下まであるフード付きのローブを身に纏っているが、メリアは白基調で水色のライン、マルシアはピンク基調にグレーのラインと、それぞれ個性が出ている。

 メリアは普段着ない衣装に分かりやすく心を躍らせているようだが、マルシアは自身のローブを触りながら独り言を呟いている。服に知見がある者として興味が湧いているといったところか。


 さて、ここまで俺とメリア、マルシアの装いが新たになったのは良いが、たった1人カリアが見慣れたメイド服のままだった。恐らく彼女の分も用意されているはずなのだが……。


「ええっと……一応聞くけどカリア、貴方は着替えないのかしら?」


「……もちろんジェイド様より賜ったものは大変素敵でした」


「ならなんで……」


「私とっては! これが1番動きやすい服装だからですう! だから私はこのままで大丈夫ですう!」


「……とまあこんな有様でよ。ま、本人が良いって言うなら構わねえけどさ」


「……うちの者がご迷惑をおかけしましたわ」

 

 カリアの意固地っぷりには呆れを通り越して清々しさすら感じる。流石のジェイドもこれにはすっかり折れてしまったようで、言葉の端々や表情に少しばかり疲労が見える。


「……なら服はダメでもせめてこれだけはつけてくれ。聞いたところ、カリアは武術での近接戦闘がメインなんだろ? 何が起こるか分かんねえ状況で素手とパンプスってのは流石に認可できねえ」


 そう言ってジェイドがカリアに手渡したのは、元々衣装に付属していた革製グローブとブーツだった。確かに、現地の状況が把握できていない今は、備えるに越したことはないだろう。

 カリアは渡されたグローブらをしばらく眺めた後、実際に装着して、感触を確かめるようにパンチやキックを数回空打ちした。

 決して本気ではなかったであろう一連の動作だが、それでも目で追いかけるのがやっとの速さに、その場の全員から控えめな歓声が起こった。


「うんまあ……悪くはないですねえ」


「そう言っておいて、実はとても嬉しかったりするのではなくて?」


「そんなことは……! もう、意地悪しないでくださいルーナ様あ……」


 必死に照れ隠しをするカリアを見るとついついからかいたくなってしまう。カリアも嫌がる素振りこそ見せるが、表情はどこか安心しているようにも見えた。

 実際、今回は正式な依頼の下で行われる魔物討伐だ。授業で行う訓練とは訳が違う。ケガをすることも、或いは最悪の事態だって起こり得るかもしれない。俺を含めたみんな、心のどこかで不安を抱えていたのだ。俺より強いはずのカリアであってもだ。だからこそ、こんな他愛ないやりとりであっても安心感を感じるのだろう。

 


 それから程なくして、荷物と心の準備を終えた俺たちはスミス家所属の騎士団や魔術師たちと共に、合流地点であるスミス家から騎馬の脚で30分程の小高い平原へ向かった。そこからはあのグリフォンがいた森が良く観察できるそうだ。そこで先にベースキャンプを設営している王族の騎士団たちと落ち合う予定だ。

 道中は何事もなく順調に進行できていたのだが、目的地まであと10分程といったタイミングで、先行していた偵察部隊たちが血相を変えて戻ってきてから流れが一気に変わった。


「どうした! 一体何があった!」


 先頭集団にいたジェイドが低く凛々しい声で偵察部隊に事情を尋ねた。


「ご……合流地点に先着していた王族騎士団が……飛行性の魔物の集団に襲われています!」


「なっ……モタモタしている暇はないな。全軍、進行速度を上げるぞ!」


 ジェイドは一瞬青ざめた表情を見せるが、すぐさま冷静さを取り戻して指示を飛ばし始めた。ジェイドの戦闘面以外のセンスを評価してあげたいところだが、「飛行性の魔物の集団」の正体が気になってそれどころではなかった。

 それからものの数分で俺たちは目的地の近くまで一気に進むことができた。僅かながらではあるが、魔物奇声や金属音などの戦闘音が耳に入ってくるようになる。

 そして遂に、その魔物の正体も視界収めることができた。コウモリに似た皮膜の翼。歪な形に尖った尻尾。ドラゴンにも似た異形の姿。それはグリフォンと同じくRPGでもボス級の扱いをされる、あの魔物と特徴が酷似していた。


「まさか……ワイバーン!?」


 俺と同タイミングで声を上げたジェイドも、これには青ざめた表情が戻る様子は無かった。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

次回は30日投稿予定です。

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