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第四十九話「魔物討伐を依頼されました」

お待たせしました。第四十九話です。

ジェイドからの依頼、一筋縄では行かなさそうです。

 ギースを含めた友人に絡む時は満面の笑みを見せているジェイドだが、俺の目を見ながら協力を仰ぐその表情は真剣そのものだった。武闘大会で相対した時のような緊張感が俺の中で走った。


「頼み——とはなんでしょうか」


 建前上ジェイドに聞いてみるが、話の流れからしてその内容は大方予想がつく。


「簡単に言えば魔物討伐への同行依頼だ。場所はお前がグリフォンを倒したっていう森なんだが……その後の調査で得体の知れない痕跡がいくつか見つかったみたいでな。今度の週末、俺んとこと王族の騎士団が合同で詳しい調査を兼ねた討伐隊を組むことになった。……だが正直騎士団だけじゃちょっぴり不安でな。そこでお前に白羽の矢が立ったってことさ」


 言われてみれば確かに、学生が授業の一環として使う森にグリフォンのような強い魔物がいるのはおかしな話である。だが、それはあくまで何も知らない場合の話だ。ここがかつてプレイしていたゲームの世界ということならばこの現象にも心当たりがある。


「……魔族が絡んでいる可能性が高そうですわね」


「お、ルーナも俺と同じ見解か。住処をほとんど動かねえはずのグリフォンがあの森にいるなんて、明らか上位種が介入したとしか考えられねえ」


 ルーナはジェイドルートにおいて、闇の魔力を暴走させた結果、とある魔術を使って大量の魔物を王都に引き寄せた描写がある。そしてルーナと同じく闇魔術を扱える魔族ももちろん、この魔術を使うことができる。

 だが、この魔術は説明することすら悍ましく感じてしまうほど最低最悪な魔術だ。俺は深く息を吐いて意を決し、その魔術の名前を口にした。


「『ミニオンスレイブ』。闇魔術に存在する上級魔術の一つですわ。初級の『眷属召喚』とは違い、相手の意思に関係なく無理矢理眷属としてしまう恐ろしい魔術です」


 俺の説明に、その場にいる女性陣全員が息を呑んだ。それは恐らく、ミニオンスレイブが魔物だけでなく()()()()通用すると感じ取ったからだろう。

 だがジェイドただ1人は落ち着き払った様子を見せ、冷静に俺の言葉に続いた。


「つまり、お前がいればその魔術を使うやつがいたとしても対策を練りやすくなるってわけだな。やはりルーナ、お前には何がなんでも参加してもらいたい!」


 ジェイドが俺の肩を掴み、熱い視線をこれでもかと送ってくる。もちろん、ジェイドの期待を裏切るつもりは無い。もしその魔族が王都へ繰り出そうものなら、ジェイドルートでのあの惨劇が蘇ってしまう。何としても阻止しなければ。

 だが、俺が承諾の返事をしようとしたその瞬間、カリアがテーブルに両手を強く叩きつけながら勢いよく立ち上がった。


「ルーナ様、私は反対です。いくら知識があるとはいえ、ルーナ様をそんな危険地帯に赴かせることは私が許しません」


 初めて見せる、真剣な表情のカリアに俺は思わずたじろいでしまった。彼女の瞳に溜まっている涙をみれば、如何に俺のことを本気で想っているかが窺える。

 しかし、あの光景を知っている俺の決意は揺らがない。涙ぐむカリアを宥めるように座らせ、今度は俺がカリアの肩を優しく掴んで彼女の目を見据えた。


「カリア、これは国の一大事になるかもしれない重要な案件よ。万が一魔族が絡んでいるのなら、闇魔術に精通している私が行かなければみんなを危険に晒すかもしれないの。だからお願い。私を行かせて」


 ありったけの思いをぶつけるべく、カリアの目を一瞬たりとも逸らさずに彼女へ懇願した。カリアも負けじと俺の目を見続けていたが、やがて観念したかのように軽く溜め息を吐いた。


「……分かりましたよお。ただし、私も連れていってください。それが条件です」


「もちろんよ。——ジェイド様、カリアも同伴して構いませんわよね?」


 カリアから出された条件は、むしろこちらからお願いしたいくらいの内容だった。彼女の強さを持ってすれば拒否する道理は無い。だが、カリアのことを知らないジェイドは嫌疑の目を向けてくる。


「連れていくのは構わねえけどよ……闘えんのか? お前の従者は」


「あら、カリアはジェイド様に勝った私にも勝ったことがありますのよ? それはもう、手も足も出ないくらいね」


「ま……まじかよ……」


 到底信じられないと言わんばかりに目を丸くしたジェイドがぎこちない動きでカリアに視線を移すと、カリアは両手の拳を腰に当て、勝ち誇るようなドヤ顔をしてみせた。


「まあ……戦力は大いに越したことはないからな! 歓迎するぜ、カリア!」


 しばらく呆けてしまっていたジェイドは、取り繕うかのようにカリアの討伐隊参加を許可した。

 そして、この瞬間を待ってましたと言わんばかりに、これまで蚊帳の外だったメリアとマルシアが「あの!」と口を揃え、俺たちの注意を引き寄せた。


「もし闇魔術を扱う魔族がいるならきっと——私の聖属性魔術が役に立つかもしれません。ですから、私も連れていってください!」


「私は……えっと……後方支援として役に立てますわ! 魔術も人並み以上に使えると自負していますし! だから……その……私を置いてけぼりにしないでくださいまし〜!」


 メリアの言い分は説得力十分だが、マルシアは願望丸出しだ。だが、マルシアの斬新な発想によって武闘大会を優位に進められた実績もある。そのことを踏まえて俺は再びジェイドを説得し、2人の参加も認めてもらうことができた。

 ……それにしても、俺がグリフォンを倒したあの森には、一体何が潜んでいるのだろうか。一抹の不安は残るが、俺たち5人に王族の騎士団もいるのならば大丈夫だろうと信じることにした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

次回は27日投稿予定です。

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