第四十一話「王城へ招待されました」
お待たせしました、第四十一話です。
王城で待ち受けるものとは……
「これが……ギース様方が住まう王城……」
「遠くからでは分かりませんでしたが……」
「改めて見るとでっかいですわねえ……」
ゼノに招待を受けてから数日後、遂に王城へ足を踏み入れる日がやってきた。
当日の早朝、聞き慣れない騒音に何事かと窓を覗いてみれば、カトラス家のものよりも豪華絢爛な馬車3台とそれを取り囲む護衛の騎士たちが、寮の前で所狭しと並んでいた。急いで支度を済ませて玄関に向かうと、ちょうど同じタイミングでメリアとマルシアも合流した。2人も相当急いだのか、だいぶ息が上がっていた。
その後は同行する王族騎士団の副団長と軽く挨拶を交わすと、その副団長がそれぞれ別の馬車に乗るよう促してきた。こんな贅沢な馬車を1人1台で貸し出してくれるとは、流石は王家といったところか。
馬車の中では、護衛としてついてきたカリアがフカフカの座面や覗き窓から見える騎士団の荘厳さに興奮しっぱなしだった。あの一件以来なかなか機嫌を直してくれなかったカリアだったが、この様子を見ればもう心配は無さそうだ。
そんな調子で馬車に揺られること約20分。目的地に着いた俺たちが馬車を降りると、そこには遥か高くそびえ立つ城が鎮座しており、俺たちはそれをただ開いた口が塞がらないまま見上げるしか無かった。
「ほんと、無駄なくらい大きいよねー」
「ええ本当に……ん?」
不意にメリアでもマルシアでもない声に話しかけられた感覚で我に返った。声がした後方に振り返ってみると、そこには顔まで鎧に身を包んでいる騎士団の1人が俺たちの傍に近づいていた。
「貴方……誰?」
「ええ〜俺だよ俺。分からない?」
「皆さん……私の後ろへ」
そんなオレオレ詐欺みたいに言われても、俺の記憶には騎士団の知り合いなどいない。俺の動揺を悟ったカリアが俺たちと鎧人間の間に入り、睨みを利かせる。
「いやだなあメイドさん、そんな目で俺を見ないでよ。……もうしょうがないなあ。これで分かるでしょ?」
そう言うと鎧人間が兜を外し始める。一体どんな顔が飛び出してくるかと思いきや、そこにいたのは赤茶色の髪を携えた青年、ゼノ第一王子だった。
「ゼノ王子?! まさかずっと私たちに着いてきていたのですか!?」
「そうだよー。でもルーナたちったら全然気づかないんだもの。つまらないからこっちからネタばらししちゃった」
「いや……顔まで覆われてたら普通に分かりませんわよ!」
マルシアが漫才師ばりのツッコミをゼノに入れたことで
その場の全員に笑いが巻き起こる。王城を前にして緊張していた感覚が薄れていく。まさかゼノはこれを見越して騎士団の中に紛れ込んでいたのだろうか……?
「ゼノ様! また許可なく外に出られたのですか! この件はしっかり報告させてもらいますからね!」
「げっ副団長! ……そこをなんとか見逃してくれよ〜」
「駄目なものは駄目です。……はあ、ギース様が知ったらなんとおっしゃることやら……」
どうやら先ほどの結果は単なる偶然で、ゼノがまたもや無許可で外出していたというオチだったようだ。片手で頭を抱えながら溜め息をつく副団長を見るに、このやりとりも日常茶飯事なのだろう。
やがて、副団長との言い争いを終えたゼノは、言い負かされたのか肩を落としながら踵を返し、こちらにトボトボ歩いてきた。俺たちの下に着いたゼノにメリアが「大丈夫ですか?」と声をかけると、「……うん」と言いながら項垂れていた体をゆっくりと持ち上げた。
「いやあ……ごめんね、こんなところを見せちゃって。……ゴホン。遅くなっちゃったけど、ようこそクロムウェル家の王城へ。今回は君たちへのお詫びということで招待したわけだけど、実はその前に僕の父――国王にあってほしいんだ」
国王という言葉を耳にした途端、俺に戦慄が走った。ギースの父、そしてこの国の国王である『アルバー・クロムウェル』とルーナは、ゲーム上では切っても切れない関係だ。何故なら、ルーナはコニールート以外に進んだ場合、このアルバートから罰を言い渡される。その時のアルバーから発せられた冷徹な声は今でも忘れられない。
そんな国王に、何故ゼノは俺たちに会うよう促しているのだろうか。理由を考えるだけで冷や汗が止まらない。
「その……何故私たちが国王と?」
メリアが俺の気持ちを代弁するかのようにゼノに訊ねた。メリアも「国王」と聞いて緊張が戻ってしまったのか、胸の前で手を固く握り締めている。平民の出である彼女が王に直接会う機会など滅多にないだろう。緊張するのも無理はない。
「あ、用があるのはどうやらルーナだけみたいだよ〜」
「え……私だけ? それは一体どうして……?」
「さあ? 僕も詳しい理由は聞かされてないけどとにかく連れて来いって。ギースが何か話したんじゃない?」
俺だけと聞いてますます冷や汗が止まらなくなる。心当たりは無いが、ここまでくるともしかして何かやらかしてしまったのではと思い込んでしまう。
でもこうなってしまった以上仕方ないので、心の拠り所を求めるようにメリアとマルシアの方に振り向いてみる。
「……ルーナ様ならお一人でも大丈夫ですわ! ……きっと」
「えっと……その……ごめんなさいルーナ様」
俺が「一緒に着いてきて」と言おうとしたのが伝わったのか、俺が口にする前から断りを入れてきた。メリアは分かるが、マルシアにまで目を逸らされるのは想定外だ。本当に1人でアルバー国王と会わなければならないとは……まるで生きた心地がしない。
(俺が一体……何をしたっていうんだ……)
逃げ出したい衝動をどうにかして抑えながら、俺は王城へと歩みを進めた。この先、俺はどうなってしまうのだろうか……。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
次回は6月1日投稿予定です。




