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第二十八話「ギースと闘いました(後編)」

お待たせしました、第二十八話です。

ルーナVSギース、ついに決着です。

 シャドーバインドが突破されて、これでお互い振り出し――いや、こちらにはまだ作り出した分身体が残っている。戦況はこちらが有利と言っていいだろう。

 だが、まだギースの実力は計り知れない。ここはまた 1つ、威力の低めなシャドーボールで牽制を……。


「ルーナ嬢? 悪いけど、君の考えはお見通しだよ」


 そう言った途端、ギースは手に持つ木剣に魔術で風を纏わせた。それを軽く一振りするだけで、まるで大きい団扇で仰がれたような強風が発生する。

 先のレーザーもそうだが、剣――ましてや木剣を介してもこの威力の魔術を扱えるとは。彼の器用さに感嘆を禁じえない。


「やってみなければ……分かりませんわ!」


 大方の予想はつくが、ひとまず俺と分身体でシャドーボールを連射してみた。すると案の定、ギースが剣を一振りしただけで簡単に弾き飛ばされてしまった。だがこれで 1つアイデアを閃いた。


「言っただろう? 君のそれはもう通用しないよ」


「フフ……それはどうかしら?」


 その為にもまずはギースの足止めが必要だ。クロウと分身体にギースの妨害を指示を出すが、魔術を使い出したギース相手ではそう長くは保たないだろう。早急にアイデアを形にしなければ。


 まずはシャドーボールを作り出す。だが、先ほどの小さなものとは違い、魔術を更に込める。それに比例して手元のシャドーボールの大きさも増していく。

 魔力を込めればその分速度や威力も増すが……普通に放つだけでは足りない。ギースの風魔術の前には無力だ。


 クロウと分身体も徐々に押されつつある。今が最初で最後のチャンスだろう。

 俺は手元で魔力を込めたシャドーボールを放たず、自分の足下に落とす。そして――俺はそのシャドーボールをギース目掛けて思い切り蹴り上げた。ただ、普通蹴るだけではルーナの身体能力では威力が出ない。そこでゴーストステップの浮力を利用し、蹴り上げる足の速度を上げている。


(人に向かってボールを蹴るなんて、某メガネの少年みたいだな……)


 転生前観ていたアニメのことをちょっとだけ思い出しながら、ボールの行く末を見守る。ギースも気づいていないわけでは無かっただろうが、押されているとはいえクロウたちが驚異の粘りを見せた結果、自身に向けられたシャドーボールのシュートへの対応まで手が回らないようだ。これならば――!


「これは……出し惜しみしている場合では無さそうだな」


 ボソッとギースが何かを呟いたのを認知したのも束の間、気づけば俺のシャドーボールはクロウたちごと簡単に弾き飛ばされてしまっていた。

 クロウは必死に翼を羽ばたかせてなんとか体制を立て直すことに成功していたが、分身体の方は風で体を強く地面に打ちつけてしまったようで、やがて原型を保てなくなり消滅してしまった。もしあれが俺本体だったら……と想像しただけで全身に鳥肌が立ちそうだ。


「おや、余所見をしていていいのかな? ルーナ嬢」


「……? それはどういう……」


 ギースの言葉の意味が分からず、視線をギースの方に戻した――が、俺の視界に映ったのはギースではなく、黒い大きな塊。そう、シャドーボールだった。ギースはただ攻撃を弾き飛ばしただけでなく、正確に俺の方へ返してきたのだ。


「うそ……」


 回避方法を考える隙すら無く俺はギースのカウンターを顔面直撃で喰らい、後ろへ大きく弾き飛ばされた。

 空中に投げ出された感覚、地面に着くまでの時間がやけに遅く感じるこの感覚は、転生のきっかけとなったあの時とそっくりだった。だが、1つ違ったのは地面に強く打ちつけられる感覚が無かったことだ。


「大丈夫かいルーナ嬢!? ああ……僕としたことが、レディの見目麗しい御尊顔に危うく傷をつけてしまうところだったなんて……これでは勝負以前の問題だ……」


 ギースは20mは離れていたであろう俺との距離を一瞬で詰め、俺を抱きかかえたようだ(お姫様抱っこになっているのはこの際目を瞑ろう)。更には俺の心配までする余裕まであるというおまけ付きだ。ここまでのスペックの差を見せられたら、もうぐうの音も出ない。


「ふふ……あははは!」


 あまりにも清々しい敗北に、俺は思わず笑ってしまった。その様子を見ているギースも、何故笑っているのか不思議で堪らないと表情で物語っている。

 そんなギースにいつまでも負担をかけるわけにはいかないので、彼に降ろしてもらうよう促し、改めてギースに向き直る。


「ギース様、これは真剣勝負です。経過がどうであれ、私の敗北は変わりありませんわ。それに、今回は勝敗よりも大切な収穫がありましたから……これも見越しての勝負だったのでしょう?」


「おや、君にはお見通しだったのか。……まあ、その様子なら僕の目論見は上手く行ったみたいだね」


「ええ、お陰様で。……今一度、カリアと向き合ってみますわ」


「ああ、そうすると良い。きっと彼女も君に対する心配や不安でいっぱいなはずだ。……おっと、少し長居しすぎたみたいだね。僕はこれで失礼するよ。ではまた、学園で会おう。」


「そうですか。では――改めて、ありがとうございました。この埋め合わせは、いずれ必ずいたします」


 別れの挨拶を残して背を向けるギースに感謝を告げると、ギースは軽く右手を上げて返してきた。

 本当に彼は(ルーナ)のことを想ってくれて行動してくれている。そんなギースの想いを台無しにしてはいけない。


(カリア……)


 静かな決意と少しばかりの緊張を抱き、俺はカリアの元へ向かった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

次回は20日登校予定です。

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