第二十六話「立ち直ることができました」
お待たせしました、第二十六話です。
今度はルーナVSギースです。苦手と言いながらまたバトルシーン書いちゃいました。
(何故俺はまたここにいるんだ……)
ギースの言葉に流されるがまま、気づけばまた俺は訓練場に立っていた。呆然と立ち尽くす俺を他所に、ギースは重さを確かめる為にいくつかの木剣を振り回して準備を進めている。
「そのお……ここまできておいて今更なのですが、何故ギース様と闘わなければならないのでしょう?」
「理由はいくつかある。……と言っても大半は僕の興味本位なんだけどね。単純に君と手合わせしてみたいと常々思っていたのさ。それに……」
そこまで話したところでギースは口を閉じ、右手を顎に当てて少し考えた後再びこちらを見て言葉を続けた。
「部屋に篭り切りというのも体に毒だからね。運動も兼ねられてちょうど良いだろう?」
「まあ……それはそうですわね……」
“興味本位”というのが実にギースらしいと言えばらしいが、彼の言う通り、部屋でずっと1人きりのままではまた余計なことを考えすぎて更に自己嫌悪が強くなるところだったであろう。
ギースの気遣いを無駄にしまいと俺も両頬をいつもより強く叩き、文字通り怠さを覚える体に鞭を入れて対戦に臨む。ギースも自分に馴染む重さの木剣を見つけたようで、それを左手に構えてこちらに向き直った。
「……うん、だんだん君らしい顔に戻ってきたね。正直、さっきまでのルーナ嬢は見るに堪えなかったから少し安心したよ」
「それは大変お見苦しいところをお見せしました。……でも私はもう大丈夫ですわ。いつでも始められます」
「僕も準備は整っているけど……そちらはまだ万全では無いだろう?」
「え? ですから私は……」
「いいや、ルーナ嬢じゃなくて……」
そう言ってギースは剣を持った右手の人差し指で自分の右肩を指してみせた。その瞬間、俺は自分の相棒の存在を忘れていたことに気づいてしまった。あの時負けたのは俺だけではないのに、自分のことばかり気にしてクロウのことはすっかり頭から離れてしまっていた。
クロウもカリアとの闘いで心身共に少なからずダメージを受けているはずだ。それが回復しているかという心配と若干の気まずさが入り混じっていたが、俺は意を決してクロウの召喚術を唱えた。
「ギャアアアアア!」
いつも通り――いや、いつも以上にやかましい鳴き声と共にクロウが現れ、俺の右肩に止まった。体の状態は見た感じ問題は無さそうだ。気も落ち込むどころかむしろ闘志が漲っているようにさえ感じる。クロウも敗戦したことが悔しくてたまらないはずだが、俺とは違ってその悔しさをバネにできているようだ。
相棒が前を向こうとしているのだ。俺が足を止めていてはクロウに申し訳が立たない。俺はもう一度両頬を叩き、クロウに向き直る。
「クロウ。先日は貴方を活躍させてあげられなくてごめんなさい。それだけでなく、私は今の今まで自分の事で頭がいっぱいで貴方の事を忘れてしまっていました。許してくれとは言いませんが……また私と一緒に闘うチャンスをいただけるかしら?」
俺の懺悔をひとしきり聞いたクロウはしばらく俺を見つめたあと、思い切りあたまを振りかぶり俺のおでこをつついてきた。
痛がる俺を横目にクロウは短く「ギャア!」とだけ鳴いた。言葉は分からないが、「気にするなよ!」と言ってくれているような気がした。――本当、よく俺の周りはお人好しが集まるものだ。だが今は、それがとてもありがたく感じた。
「お待たせしましたわギース様。今度こそ私……いえ、私たちの準備はいつでもよろしくてよ!」
「……フフ、ようやくいつもの君に戻ったね。さあ、始めようか!」
ギースの合図と共に、互いが臨戦体制をとる。カリアは開始直後すぐ突っ込んできたが、それとは正反対にギースはこちらの出方を伺うように剣を前に構えたまま動かない。
ギースは剣術と2属性の魔術を組み合わせる戦術を得意としている。故に間合いを取られたままではどちらで攻撃を仕掛けられるか分かったものではない。ならばどうするか。――答えは単純明快。こちらから仕掛ければよい。
「クロウ、少し時間を稼いで頂戴。やり方は貴方に任せますわ」
「ギャアア!」
俺の指示を聞くなりクロウは目にも止まらぬ速さでギース目がけて飛びかかっていく。カリア戦でも見せた「マッハウインド」だ。
ギースがクロウを迎え撃つべく剣を振るう――が、紙一重でクロウは躱してみせた。ただ突進するだけでなく咄嗟の判断で回避行動……クロウはあの敗戦から学びを得ているようだ。マッハウインドの速さを維持しながら周りを飛び続けるクロウに、ギースは苦戦を強いられていた。武闘大会でも有効だった戦術だが、今のクロウは別格だ。
だがギースもタダでは終わらない。早くもクロウの速さに順応し始め、クロウを捕えんとする剣捌きも的確になっていく。このままではジリ貧――と思った矢先だった。
「ギャアアアアアアア!!」
クロウがつんざくような鳴き声でギースを威圧して動きを止めたのだ。これは確か、風魔術の1つである「ビーストスクリーム」だろう。だが驚くことにこれは上級技。自身の声を風で乱反射させる必要がある、扱いも難しい技だ。そんな上級技を高速飛行中にやってのけるとは、クロウの成長ぶりには目を見張るものがある。
流石のギースもこれにはひとたまりも無いようで、クロウを捕えそうになったらビーストスクリームで動きを止められるという一連の流れに翻弄されまくっている。
もちろん、この間俺は何もしていない訳ではない。未だ誰にも見せたことのない魔術の準備を進めていた。この魔術には長い詠唱が必要なのだが、ありがたいことにその時間はクロウが見事に稼ぎきってくれた。さあ――次は俺の出番だ。
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