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第二十三話「カリアに闘いを申し入れました」

お待たせしました。第二十三話です。

ルーナ対カリアが実現です。

「う〜ん、さっぱり使えねえ……」


 あの不思議な出来事から2日。俺は暇さえあれば図書室に赴き、極意書を開いて特級魔術を習得しようと試みていた。書いてある魔術はどれも俺の興味を引くものばかりであったのは良かったが、習得できた魔術は1つも無かった。

 魔力量、魔力の消費効率、操作技術……どれも今の俺には到底真似できるものではなかった。俺はこの9年でかなり魔術を磨くことができたと自負している。特に魔力量でいえば学園内……いや、王国内でもトップクラスであることは間違いないはずだ。でなければ学園や街中で噂になることは無いだろう。

 そんな俺の思い上がりをまるで嘲笑うかのような内容に、改めてユエ・カトラスに畏敬の念を抱いた。彼女の実力が本物であることは認めなくてはならない。


 だが、そんな彼女に「絶対習得してやる!」と大見得を切ってしまった手前、簡単に諦めるわけにはいかないだろう。まずは魔力量の底上げをして、魔力消費に耐えられるようになってからだ。さて、その為には……。


「……あれ、魔力量ってどうやって上げるんだ?」


 俺は重大な事実に気づいてしまった。ルーナは元々魔力量が多い体質であった為、大して努力をしなくても十分魔術を扱える程度はあったのだ。その為、屋敷で勉強してた時も魔力量についての蔵書はあまり見ていなかった。

 まあ、ここで初心の気持ちを取り戻すのも大事だろう。俺は数ある蔵書の中から『魔力入門編』と書いてある本を引っ張り出し、それに目を通した。

 その本曰く、魔力量を上げるにはただ魔術を使うだけでなく、実践形式で磨いていく必要があるらしい。思い返せばこの9年間で、魔術を本格的に実践で使ったのは武道大会くらいだ。これなら魔力量があまり上がっていないのも合点がいく。


 となれば早速訓練しよう。……とはいえ外で魔物狩りなんて端から見れば危険な行為をしようものなら、公爵令嬢としての自覚が足りないと両親にこっ酷く叱られるのは火を見るより明らかだ。ここは屋敷内で訓練に付き合ってくれる人物を探すのが手っ取り早いだろう。

 ならば訓練に付き合ってくれる相手は誰が良いだろうか。メリアとマルシアは戦闘は専門外だし、両親は仕事で多忙。唯一闘えるのは騎士団の団長か……いや、恐らく立場上手加減されて訓練にならないかもしれない。となれば適任者は……アイツしかいないか?

 とそこまで考えたところで、コンコンコンと図書室のドアをノックする音が聞こえた。ちょうど良く件の人物が尋ねてきたようだ。「どうぞ」と一声かけて、その人を中に入るよう促した。


「失礼しまあす。ルーナ様、お茶の準備ができましたよお。少し休憩なさってはどうですかあ?」


 その人物とはカリアだ。俺とは正反対に武術を極めている彼女ならば、良い相手になること間違い無しだ。それに、ずっと気になっていたのだ。今の俺とカリア――闘ったらどっちが強いかを。


「……ルーナ様、どうかされましたかあ?何やらずっと考え込んでいるようですが……」


 心配したカリアが俺の顔を覗き込もうとしたが、それよりも俺は素早く椅子から立ち上がり、カリアの両手を握った。この時点でカリアは少し驚きの表情を見せたが、俺は構わず言葉を紡いだ。


「カリア、私と――闘ってくれない?!」


「え……えっ?」


 俺の言葉を聞いたカリアは手を握られたまま、まるで石像のように動かなくなってしまった。こんなにカリアが驚嘆するのは、俺が転生したあの日以来かもしれない。

 流石に単刀直入すぎたのは申し訳ないので、慌てて事情を説明することでなんとかカリアの了承を得ることができた。


 場所は変わって屋外演習場。普段は騎士たちが訓練をするのに使っている場所だ。本来ならこの時間も訓練時間である為、俺から使用許可を貰おうにも一筋縄にはいかないだろう。

 だがカリアは、俺が魔術を鍛えいる間はここで騎士たちと訓練していたこともあってか、騎士たちとの親睦が深い。団長も例外ではなく、カリアから演習場を使いたい旨を話したらあっさり許可を出した。この時ばかりはカリアが少し羨ましかった。


 団長の号令で騎士たちが演習場から誰1人いなくなる。残ったのは俺とカリアだけだ。演習場が静まり返る中、少しずつ距離を取ってお互いに向き合う。

 初めてカリアと対峙した途端、張り詰めた空気に俺の体が一瞬身震いした。カリアの戦闘スタイルは主に拳術や柔術なので、剣や槍のような得物は一切持ち合わせていない。なのに、俺の本能が危険を感じ取ったのだ。

 ……いや、カリアはまだ相手が俺だから本気をまだ見せていないだろう。俺と同じように9年間武術に身を注いできたのだ。彼女の実力はこんなものではないはずだ。


「カリア。これは訓練ですが、手加減されては意味がありません。全力でかかってきなさいな!」


「ルーナ様がそうおっしゃられるのなら……分かりました。不肖ながらこのカリア、全身全霊を持ってお相手いたします!」


 そう言った瞬間、カリアから溢れんばかりの闘気が溢れ出してくる。さっきは一瞬だった身震いも、この覇気を前には治まる気配が無い。恐らく俺が今まで闘ってきた中では間違いなく最強クラスだ。彼女ならば、あのジェイドとも真正面から互角以上に渡り合えるだろう。……こんな従者に守ってもらえているなんて、俺はなんて果報者だ。

 

 さて、カリアが本気を出したのだ。こちらも本気を見せねば無作法というものだろう。定石通りクロウを呼び出し、いつでも魔術を繰り出せるよう魔力を練り上げる。

 これでお互いの準備は整った。開始の号令をかけるべく、俺は息を深く吸い込んだ。


「さあ、参りますわよ!」

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

次回は5日投稿予定です。

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