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『異世界無双なんて後回し。まずは生きるために稼ぎます』  作者: ミタテ屋


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第7話◇ 素材の値段

冒険者ギルドを出たコウイチは、そのまま朝の市場へ向かった。


歩きながら、何度か周囲を確認する。


先ほどの3人組が後をつけてきている様子はない。グレンが止めに入ったとはいえ、あれで完全に諦めたとは限らない。街中ならまだ人目があるが、森で鉢合わせれば話は別だ。しばらくは警戒しておいた方がいいだろう。


今日は森へ入らないと決めているため、腰には生成したマジックバッグを下げているものの、石槍を取り出す必要もなければ、魔物の気配に神経を尖らせる必要もない。


それだけで、街の景色は昨日までとは少し違って見えた。


大通りには野菜や果物を積んだ露店が並び、荷車を押す商人や買い物籠を持った住民が行き交っている。少し奥へ入れば金槌で鉄を叩く音が響き、革を扱う店の前には独特の匂いが漂っていた。


昨日までは、食べ物や宿の値段くらいしか気にしていなかった。だが今日は、店に並ぶ物を見るたびに、何で作られているのか、材料はいくらなのか、《生成》するならどれだけMPを使うのかと考えてしまう。


そして何より――いくらで売れるのか。


昨日持ち帰ったホーンラビット1匹分の素材は、《アイテムボックス》の中に入っている。肉や毛皮、角、骨、それに内臓の一部だ。


普通ならそのまま売って終わる物だが、《生成》がある自分なら、もっと価値のある物へ変えられる可能性がある。


問題は何を作るかだった。


知識も技術もない人間が、頭の中だけで商品を考えても仕方がない。なら、実際に売られている物を見る。


それが今日の目的だった。


◇


最初に入ったのは道具屋だった。


店内には鍋や食器、縄、針、金槌、木箱、革袋など、生活や仕事に使う雑多な道具が所狭しと並んでいる。以前マジックバッグについて調べた店とは違い、こちらはごく普通の日用品を扱う店らしい。


人間への《鑑定》は控えると決めたが、商品なら問題ない。ただし何でも片っ端から調べればMPがなくなるため、まずは自分の目で見て、気になった物だけを調べることにした。


棚に並んだ針を見る。


鉄製の裁縫針が銅貨6枚。その隣に置かれた少し太い骨針は銅貨4枚だった。


――骨か。


そこで昨日持ち帰ったホーンラビットの骨を思い出した。


「これって、普通の動物の骨から作るんですか?」


近くで商品を整理していた店主に聞くと、男は骨針を一瞥した。


「大体はな。家畜の骨も使うし、小型魔物の骨も使う。加工しやすい骨なら何でもいい」


「魔物の骨でも?」


「ホーンラビットあたりなら普通に使えるぞ。ただ、細い骨は折れやすいから物を選ぶがな」


なるほど。


コウイチは骨針を指先で転がし、形や厚みを確認する。《生成》には対象への理解が必要になるため、見るだけより実際に触れた方がいい。


「作るのは難しいですか?」


「骨針か? 削って穴を開けて磨くだけだ。腕のいい職人が作るようなもんでもねえよ」


店主にとっては何でもない話なのだろうが、コウイチには重要な情報だった。


削って、穴を開けて、磨く。構造は単純で、材料も持っている。


――候補にはなるな。


ただし店頭価格は銅貨4枚なので、店へ売るなら当然それより安くなる。利益はそれほど大きくなさそうだった。


さらに店内を見ていると、革袋の口を留める小さな部品が目に入った。値札には銅貨7枚と書かれている。


コウイチは1つ手に取り、《鑑定》Lv2を使った。


【角製留め具】


材質:ホーンラビットの角

品質:C

用途:革袋・衣服などの留め具

加工:切削・穿孔・研磨


「……これもホーンラビットか」


細長く削った角に2つの穴を開けた単純な構造で、日本でいうボタンに近い。


「それが気になるのか?」


店主が声をかけてきた。


「どうやって作ってるのかなと思って」


「角を切って削るだけだ。骨でも作れるが、角の方が丈夫だからな。ホーンラビットの角なんかがよく使われる」


――当たりだ。


昨日持ち帰った素材が、そのまま使える。


「1本の角から何個くらい取れるんですか?」


「大きさによるが、ホーンラビットなら5、6個ってところじゃねえか? 端まで無理に使えばもう少し取れるが、割れやすくなる」


コウイチは留め具をもう1度観察した。


構造が単純で、日常的に使われる小物。特別な魔道具でもなく、材料も珍しくない。


――悪くない。


頭の片隅へ覚えておく。


◇


次に向かったのは武器屋だった。


店内へ入った瞬間、鉄と油の匂いが鼻を突く。壁には剣や槍、斧が並び、棚には短剣や矢尻、砥石なども置かれていた。


コウイチは高価そうな剣には触れず、比較的安い小物を中心に見ていく。


今の自分が剣を生成して売ったところで、不自然さしかない。それより知りたいのは、昨日持ち帰った素材がどこに使われているのかだった。


鉄製の短剣には銀貨2枚から3枚ほどの値札が付いている。銅貨にすれば200枚以上なので一瞬だけ興味を引かれたが、すぐに候補から外した。


構造を完全に理解しているわけではないうえ、鉄も持っていない。仮に生成できても消費MPは大きくなるだろうし、何より武器は品質が命に直結する。


昨日今日この街へ来た新人が作った短剣など、誰が買うのかという問題もあった。


店内を見ていると、剣の柄や弓の部品、装飾品の一部に魔物の角や骨が使われていることに気づいた。


「魔物の素材って、武器にも結構使うんですね」


店員に尋ねてみる。


「そりゃ使うさ。何でも使えるわけじゃねえが、牙や角は加工次第で柄の飾りや補強材になるし、強い魔物の素材ならそれ自体に価値がある」


「ホーンラビットは?」


「安物だな」


即答された。


「角は小物や飾りには使えるが、武器の性能を上げるような素材じゃない。骨も大した値段にはならん」


少し残念ではある。


だが、同時に安心もした。


安物ということは珍しくない。ホーンラビットの素材を加工して売ったところで、それだけで注目される可能性は低い。


店を出る前に、コウイチは矢尻やナイフ、柄の留め具などをできるだけ観察しておいた。今すぐ作るつもりはないが、《生成》に必要なのが理解なら、知識はいずれ役に立つ。


◇


防具屋では、さらに分かりやすかった。


革鎧、手袋、ブーツ、ベルト、毛皮の防寒具。そこでは魔物の革や毛皮が大量に使われており、ホーンラビットの毛皮も例外ではない。


「この辺りは何の毛皮ですか?」


棚に並んだ手袋を見ながら尋ねる。


「ホーンラビットだな。柔らかいから手袋や帽子の内張りに使う。防具としては役に立たんが、防寒用なら悪くない」


「毛皮1枚で何個くらい作れます?」


店員が怪訝そうな顔をした。


「兄ちゃん、職人なのか?」


「いや、ちょっと興味があって」


嘘ではない。


店員は特に気にした様子もなく、毛皮の大きさによると前置きしてから教えてくれた。小さな手袋なら1組、袋や小物なら複数。ただし縫製には技術が必要で、質の悪い加工をすると商品価値が大きく落ちるらしい。


棚にはホーンラビットの毛皮を使った小袋があり、値札は銅貨28枚だった。


コウイチはそれを手に取り、《鑑定》Lv2を使う。


【毛皮の小袋】


材質:ホーンラビットの毛皮・麻糸

品質:C

構造:袋状縫製・紐留め

耐久性:普通


留め具より遥かに高い。


だが、作りを見ると縫い合わせる箇所が多く、紐や糸も必要になる。《生成》なら職人と同じ作業をする必要はないのかもしれないが、構造を理解する必要はある。


――売値だけで決めるのは違うな。


28枚で売られているからといって、自分が28枚で売れるわけではない。店へ卸すならもっと安くなるし、生成にMPを5も6も使うなら、MP1で作れる小物を複数売った方が効率がいい可能性もある。


昨日思いついた「MP1ポイントで、いくら稼げる?」という考え方が、少しずつ現実的なものになってきた。


◇


最後に入ったのは、ポーションや魔石、小型の魔道具などを扱うアイテム屋だった。


店内には薬草の匂いが漂い、棚には色の違う液体が入った瓶や、小さな魔石、護符のような物まで並んでいる。


その中でも、下級回復ポーションには銅貨85枚という値札が付いていた。


――85枚。


ヒール草の買い取り額と比べれば、かなり高い。


コウイチは1本を手に取り、《鑑定》Lv2を使った。


【下級回復ポーション】


品質:C

効果:軽度の傷を回復

主材料:ヒール草

副材料:薬草数種・精製水


当然、薬師の技術や他の材料、瓶代なども含まれているのだろうが、加工によって価値が上がるという意味では、自分が考えていることと同じだった。


「ポーションって、誰でも作れるんですか?」


店主に尋ねると、少し笑われた。


「材料を鍋で煮りゃできるなら薬師はいらんよ。調合の技術と《錬金》系のスキルが必要だ」


「なるほど」


今は手を出さない方がいいが、覚えておく価値はある。


さらに小さな魔道具をいくつか見ていくと、魔石を動力にした灯りや着火具などもあり、その価格は銀貨単位だった。生成できれば利益は大きいだろうが、高価で構造も複雑なうえ、魔法の知識も必要になる。


そして何より目立つ。


――これも今じゃない。


今欲しいのは、1個売って大金になる商品ではない。誰でも使う普通の商品を、少ないMPで作って少しずつ売ることだ。


4軒を回ったところで、コウイチの中には角製留め具という1つの候補が残っていた。材料はすでに持っており、構造も単純で需要がある。何より、ホーンラビットの角から作られる一般的な商品なので、新人冒険者が数個持ち込んでもそれほど不自然ではない。


◇


市場を一通り見終えたコウイチは宿へ戻ると、部屋の扉を閉め、念のため鍵を確認してから《アイテムボックス》を開いた。


昨日持ち帰ったホーンラビットの素材を取り出して机へ並べ、その中から角を手に取る。


念のため《鑑定》Lv1で確認した。


【ホーンラビットの角】


品質:C

用途:小型工具・装飾品・留め具などの加工素材


価格は分からない。


だが、素材としての買い取り額なら次にギルドへ行ったとき確認すればいい。今知りたいのは、この角を留め具へ変えられるかどうかだった。


コウイチは机の上へ角を置き、道具屋で見た留め具を思い浮かべる。


角を切り、削り、2つの穴を開けて、表面を滑らかにする。構造自体は単純で、実物を触り、店主から作り方まで聞いている。


《生成》を意識すると、視界に情報が浮かんだ。


【素材補助生成】


対象:角製留め具

理解度:81%

使用素材:ホーンラビットの角

生成可能数:最大6


【投入MP:1】

生成予測品質:C


【投入MP:2】

生成予測品質:B


コウイチは表示を見つめた。


「……そういうことか」


今までは作れるかどうかと必要MPばかり気にしていた。だが、同じ物でも投入するMPによって、完成する品質を変えられるらしい。


以前作ったマジックバッグが店の商品より高品質になったのも、材料だけではなく、生成へ投入したMPが影響していた可能性がある。


高品質な物を作れるのは強みだが、今欲しいのはB品質ではない。店で普通に売られていたC品質の商品だ。


――なら、MP1で十分だ。


コウイチは投入MPを1にして生成を実行する。


角の一部が淡く光り、次の瞬間、机の上に小さな留め具が1つ転がった。


「……できた」


拾い上げると、道具屋で見た物とほとんど同じ形をしている。念のため《鑑定》Lv1を使った。


【角製留め具】


品質:C

用途:革袋・衣服などの留め具


狙った通りだった。


次に、2個目だけ投入MPを2にして生成してみる。現れた留め具は1個目と同じ形をしているが、手に取って比べると、表面の滑らかさや穴の仕上がりに僅かな違いがあった。


もう1度、《鑑定》Lv1を使う。


【角製留め具】


品質:B

用途:革袋・衣服などの留め具


「やっぱりか」


使うMPを増やせば、同じ素材、同じ形でも品質を上げられる。逆に言えば、必要以上のMPを使う必要もない。


普通の商品として売りたいならCで十分だ。


残りの角を使い、今度はすべて投入MP1で生成する。最終的に角1本から作れた留め具は6個。C品質が5個、試しにMP2を使ったB品質が1個だった。


そこでコウイチはステータスを確認した。


【MP】3/25


ギルドで3人へ《鑑定》Lv2を使ったあと、MPは19まで減っていた。市場では角製留め具、毛皮の小袋、下級回復ポーションをLv2で確認して6消費し、宿へ戻ってからは《鑑定》Lv1を3回、生成に7使っている。


まだ2回ほど生成できる計算になるが、第3話でMPを使い切って倒れたことを忘れたわけではない。


「……そろそろ止めるか」


売れるかどうかも分からない商品を作るために、限界までMPを使う必要はない。


まずは、この6個を市場へ出してみる。


◇


午後。


少し休んでから、コウイチは再び市場へ向かった。


最初に入ったのは、朝とは別の小さな雑貨屋だった。同じ店へ持っていけば、「朝あれだけ質問していた男が数時間後に商品を持ってきた」という不自然さが残るため、できるだけ余計な情報をつなげられない方がいい。


店内には革紐や食器、針、留め具などが並んでいる。


「買い取りってしてますか?」


店主らしい中年の男が顔を上げた。


「物によるな」


コウイチは袋からC品質の角製留め具を3個だけ取り出した。最初から全部を見せる必要はない。


「これなんですが」


店主が1つを摘まみ上げ、表と裏、穴の位置を確認し、指先で表面を撫でてから残りの2個も見る。


「ホーンラビットか?」


「たぶん」


あえて曖昧に答える。実際には間違いなくそうだ。


「悪くねえな。1個銅貨3枚なら買うぞ」


3枚。


朝見た店頭価格は7枚だった。単純に考えれば倍以上で売るつもりということになるが、店には在庫を抱えるリスクもあり、人件費や場所代もある。


3枚が法外に安いのか、今のコウイチにはまだ判断できない。


「5枚なら?」


「高い。新品が7枚くらいで売れる物だぞ」


「でも、状態は悪くないと思います」


店主がコウイチを見る。


「兄ちゃんが作ったのか?」


「仕入れ先は秘密で」


嘘をつくより、その方がいい。


店主は鼻を鳴らした。


「商人でもねえくせに」


「冒険者だからって、安く売らなきゃいけない決まりはないですよね?」


少し間があった。


やがて店主が笑う。


「4枚」


「5枚」


「4枚」


動かない。


なら、売らなければいい。


「分かりました。今日は売りません」


コウイチが留め具へ手を伸ばす。


本当に欲しいなら止める。必要ないなら売れない。それだけだ。


「……待て」


やはり止められた。


「5枚で買ってやる。ただし3個だけだぞ」


「ありがとうございます」


銅貨15枚。


小さな硬貨を受け取りながら、コウイチは表情を変えないようにした。


店を出てから、人通りの少ない場所まで歩く。そこでようやく頭の中で計算した。


留め具1個につき、生成に使うMPは1。買い取り価格は銅貨5枚だった。


もちろん、5枚すべてが利益ではない。材料になったホーンラビットの角そのものにも価値があるため、そこを無視すれば計算を間違える。


角1本から作れる留め具は6個。すべてC品質で作り、同じ価格で売れれば売上は銅貨30枚になる。


だが、角を素材のまま売った場合にいくらになるのか、コウイチはまだ正確に知らない。そこを確認して初めて、本当に加工した方が得なのか計算できる。


――だから素材の値段も必要なのか。


完成品の売値だけを見ても駄目だ。


材料の値段と売値、必要なMP、そして実際にいくつ売れるのか。その全部が分からなければ、本当に儲かっているのか判断できない。


◇


残ったC品質2個のうち、1個は別の道具屋で銅貨4枚、もう1個は革製品を扱う店で銅貨5枚で売ることができた。


B品質の1個は売らず、手元に残した。


C品質より仕上がりが良いことは見れば分かる。今の段階でわざわざ品質の違う物を混ぜて売り、「他にもあるのか」と余計な興味を持たれる必要はない。


今日売ったのは5個。


売上は銅貨24枚。


金額だけなら、森へ入ってヒール草を採った方が稼げるかもしれない。だが今日は魔物と1度も戦っていないし、自分の能力を使えば、同じ素材へ新しい価値を加え、それを実際に金へ変えられることも分かった。


これは大きかった。


宿へ戻る途中、コウイチは今日見た商品の値段を思い返していた。


骨針、角製留め具、毛皮の小袋、武器の部品、ポーション、魔道具。売値だけなら、もっと高い物はいくらでもある。


だが、今の自分が作るべきなのは高価な物ではない。材料を手に入れやすく、生成に必要なMPが少なく、普通に需要があり、売っても目立たない。さらに1つの店へ大量に持ち込まず、複数の店へ少しずつ卸せる物。


角製留め具は、その条件にかなり近い。


問題は材料だった。


「材料がないな」


宿の部屋へ戻ったコウイチは、《アイテムボックス》の中身を確認して苦笑した。


骨や毛皮、肉は残っているが、一番効率が良さそうだった角は試作ですべて使ってしまった。


商品を作りたければ材料が必要になる。


店から材料を買う方法もあるだろうが、買えば当然その分だけ利益は減る。それが悪いとは限らないものの、まずは素材そのものの値段を調べなければ判断できない。


そして、もう1つ方法がある。


自分で取ってくればいい。


ホーンラビットなら黒狼の森にいる。すでに何匹も倒しており、戦い方も分かっている。


さらに今日、武器屋や防具屋で話を聞いたことで、他にも気になる素材ができていた。


グレイウルフの牙。


フォレストボアの牙や革。


どちらもホーンラビットより価値があり、加工品にも使われるらしい。もちろん、その分だけ魔物も強い。


特にグレイウルフは、まだ戦ったことがない。


無理をするつもりはなかった。見つけたからといって必ず戦う必要もないし、危険なら逃げればいい。


だが、森へ入る目的は変わった。


依頼を達成するためだけでもなければ、レベルを上げるためでもない。まして、魔物と戦いたいわけでもなかった。


コウイチは机の上に残したB品質の角製留め具を摘まみ上げる。


店頭に並んでいても誰も気に留めないような、小さな日用品。それが今日は実際に金になり、素材へ手を加えれば価値を上げられることも分かった。さらに、投入するMPによって同じ物でも品質を変えられることまで分かった。


なら、次に必要なのはその材料だ。


「……仕入れに行くか」


そう呟いてから、自分で少し可笑しくなった。


普通なら仕入れといえば、商人から商品や材料を買うことなのだろう。だが自分の場合は、石槍を片手に森へ入り、魔物を倒して材料を集める。


命の危険がある時点で、商売の仕入れとしては随分物騒だ。


それでも昨日までとは違う。


魔物を倒せば金になる。それだけではなく、どの魔物の、どの素材を手に入れれば、何を作って、いくらで売れるのか。その流れが、まだ大雑把ではあるが少しずつ見え始めている。


コウイチは角製留め具を《アイテムボックス》へ戻すと、明日のために装備を確認した。


狙うのはホーンラビット。そして余裕があれば、グレイウルフやフォレストボア。


昨日まで魔物は、できるだけ遭遇したくない存在だった。もちろん今でも怖いことに変わりはないが、明日は少しだけ意味が違う。


魔物を探しに行く。


経験値のためではない。


商品を作るための素材を、仕入れるために。




ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


物語の感想や印象に残った場面など、ひと言でもいただけると今後の執筆の励みになります。

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