祭りは静けさとともに
ホイスルーランド、街の中央にある武闘大会用の試合場。
四角のステージを囲むように観客席があり、席は二階席、三階席、立見席まである。
普段はモンスターと人間との戦闘観覧が目玉として開かれているが、今日は違った。
ステージの中央で、派手なパステルカラーの衣装を着たMCが、拡声魔法を使い、声高に叫ぶ。
『さあさあ皆さまお待たせしました! 今日のスペシャルステージはなんと! 勇者様との一対一の武闘対決が出来る、挑戦形式の武闘ショーだああああ!』
立見席まで満員になっている観覧席が、一気に歓声を上げた。
『挑戦者は事前に決まった10名だが、飛び入り参加ももちろん歓迎だああああ! 皆、全力で楽しんで行ってくれええええ!』
『おおおおお!』
会場のボルテージはMAXになっていた。一種のお祭り状態である。
そんな中、マオは観客席の一番前の席で青白い顔をしながら、魂を半分飛ばしていた。
ザビトはといえば、売店で買ったチュロスをむしゃむしゃと頬張っていた。
何とも緊張感のない光景である。
どう見ても逃亡者に見えない二人は、無事会場に馴染んでいた。
会場のボルテージはますます上がる。MCが入場ゲートを指さした。
『それでは挑戦者の発表だあああ! エントリナンバー一番、アレクシュドラああああ!!』
『おおおおおお!』
『そしてそして、世紀の異世界来訪者、サイトウ ユウマああああああああ!』
『おおおおおお!』
ユウマが入場する。割れんばかりの歓声が起こり、紙吹雪や紙テープなどが投げられた。
ユウマは紙吹雪の中を観客に手を振って、人好きのする笑顔を浮かべていた。
「おうおう、凄い人気だねえ~。お兄さん嫉妬しちゃう」
「うう~……人、多い……」
二者二様の反応を浮かべながら、ザビトとマオはユウマを見る。
ユウマは背中にロングソードを背負っていた。白光するそれは、『勇者しか扱えない』といわれた伝説の剣らしい。王都の森林深くに眠っていたのを、ユウマが見つけたそうだ。
何ともおとぎ話に出てきそうな話である。
剣の効能については公表されていないが、やれ魔法はすべて無効化されるなど、やれ一太刀で龍を消せるなど、その真偽は定かではない。
しかしユウマが愛用しているのをみるに、実践的な効能そうだ。
ザビトはむしゃっとチュロスを食べ終わると、やる気のない眼でユウマを見た。
ステージの中央に、ユウマと対戦者が向かい合う形になり、試合開始の合図が待たれた。
『それでは一試合目、レディ・ファイ!』
MCの合図で、挑戦者はいきなりユウマの懐に飛び込んだ。
しかし、ユウマはそれを避けると、下級魔法・氷壁で挑戦者の着地する部分を凍らし、バランスを崩させた。
だが、挑戦者も黙ってはいない。倒れながらユウマに薙ぎ払いをし、近づけさせない様にした。
「ほおー」
思わずザビトは声を出すが、マオは興味なさげに見つめていた。
その後挑戦者が中級魔法・火炎砲を使ったことで会場はどよめいたが、ユウマは一薙ぎすると魔法は霧散し、挑戦者は驚愕に顔を染めた。
「悪いけど僕に魔法は効かないよ。それこそ洗脳魔法みたいな神聖創造魔法じゃないとね」
「くそ!」
荒々しくユウマに突っ込んでいった挑戦者の下払いを、ユウマは難なく避けると、そのまま挑戦者の首元に剣を当てた。
無駄のない、見事な動きだった。
『勝者、勇者ユウマだあああああ!』
『おおおおおおお!』
会場の割れんばかりの賞賛に、ユウマは手を振って答える。
そして挑戦者と握手すると、間を置かずに次々と挑戦者が現れた。
しかし、ユウマに疲労は見られない。安定した力で、いや、圧倒的な力で相手の技をいなし、軽々と相手を地に伏していた。
その光景を見て、ザビトはマオに問うた。
「……魔界ってどんだけ強いんだ?」
「ん~? ここに居る人たちが弱すぎるだけだよ~」
「わあお」
あっさりと規格外なことを言われ、若干ザビトはマオと契約をしていてよかったと思った。
多分マオが本気の魔法を使える状態であれば、人間界など木っ端みじんだろう。
そんな相手と戦争しようとしていたのだから、人間は本当に怖すぎる。無謀過ぎないだろうか?
試合はエントリーしていた挑戦者の分が終わり、次は飛び入り参加の時間となった。
会場は待ってましたと言わんばかりの歓声が上がる。
MCが観客席に向かって声を張り上げた。
『誰か挑戦する者はいないかあああ!? 勇者様とバトルできるまたとないチャンスだぞおおおお!』
観客たちは一斉に互いに顔を見合わす。見るのはいいが、自分が出るのは違うらしい。
そこでザビトが動いた。
(紅眼かどうか、確かめてやる)
心の中で舌なめずりをする。
「は~い! 俺やりま~す!」
左腕を名一杯上げ、MCにアピールする。
一番前の席とあって、すぐにMCが気づいてくれた。
『おお! それじゃあ一番前の席にいるあんちゃん! ステージにカモーン!』




