邂逅
ザビト達がフォルカナを出てから数日後。
エンタメが発展した街──ホイスルーランド。
ここでは毎日何かしらのパレードが行われている。
紙吹雪が舞う中、大勢の観客が道の両端に立っており、パレードを目に焼き付けんとしていた。
今行われているパレードは、勇者が魔王を倒すというストーリーに沿って作られており、巨大な白い龍のフロートに向けて、勇者役のキャストが剣を振って踊っていた。
また、勇者の仲間や魔王の仲間のキャラクターもおり、皆武器を持ってはダンスを踊っていた。
そんな光景を、大行列中でマオは見ていた。
ちなみにマオは今、ザビトに背負われている。虚ろ気な表情で、パレードを見つめているところだ。
二人はちゃんとバレない様に、魔道具で髪の色を変えて変装している。
「……パレード、人多い、最悪……死ぬ……」
マオのいつも通りのコミュ障陰キャっぷりに、ザビトは苦笑した。自分とマオのフードを、より深く被り直す。
町中がパレードの熱気に包まれており、息を吐く場所はなさそうだ。露天商の人たちも一緒になってパレードを楽しんでいる。
「パレードの内容に文句はないのか?」
ザビトの問いに、マオはあっけらかんと答えた。
「ないよ~。豪華で見てて楽しいもん」
「それでいいのか魔王様。お前が討伐される話だぞ?」
ザビトはツッコみながら、人混みをかき分けていった。
人ごみをよく見ると、色んな国から人が来ているのが分かるくらい、髪色や服装が違った。
ザビト達が身を隠すには持ってこいである。
しかし、今回ホイスルーランドに来たのは、パレードを見たかったからではない。
「みんなー! 俺のために集まってくれてありがとうー!」
“勇者”に会うためだ。
パレードの一番最後の列、豪華絢爛と言う言葉が似合う白馬の馬車のフロート上に、勇者はいた。
黒髪に、黒い眼。背はそれほど高くないが、どこか親近感を覚える様相。
身なりは異世界で言う、『学ラン』と言うものを着ていた。真っ黒なそれは、一目見たら忘れないようなデザインをしていた。異世界人というのが一発で分かる服装だ。
──サイトウ・ユウマ。それが勇者の名前であった。
珍しい音の羅列だったので、ザビトは覚えていた。
マオはザビトの背で身じろぎすると、ユウマを見た。
そして一言。
「……あれが勇者?」
不思議そうな顔をしている。
ザビトはもっとマオが「勇者!? 殺されるじゃん何で来たのさ、ザビトのばかばかばか!」と荒れ狂うと思っていたが、反応は至ってシンプルだった。というよりむしろ素朴過ぎた。
「雑魚じゃん」
辛辣な評価に、ザビトは思わず噴き出した。そうくるとは思わなかった。
「っふふ。マオ、一応アイツ勇者だぞ?」
「魔界にはあのレベルなんてゴロゴロいるって。剣もピッカピカでそれほど戦闘してないの丸わかりだし。緊張して損した~」
興味が無くなったのか、マオは再びザビトの背で眠ろうとした。結構落ち着くのか、ザビトの背中で寝るのが日課になっているらしい。
しかし、いつもなら寝かせておくザビトだが、今回は引き留めた。
“面白い情報”があったからだ。
「でも、アイツ『魔王はもう倒した』って言ってるらしいぞ?」
「……え?」
「今回のパレードは、勇者の凱旋パレードも含めてるみたいだぞ」
「え、私死んでたの?」
キョトンとした顔で、明後日の感想を口にするマオに、やはりザビトは笑っていた。
『嘘』を言っている張りぼて勇者様。こんな面白い情報を、ほっとくわけにはいかないだろう。
「なぁ、アイツ“面白い”と思わないか?」
「うん、サイコーに“面白い“ね」
あくどい笑みを浮かべる二つの視線に、勇者ユウマは気づかないまま、パレードに集まった人たちに手を振り続けていた。




