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異世界詐欺師 ~魔法が使えない俺は、嘘だけで世界を騙す~  作者: エース・レッド


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月光花

◆◆ ◆


 マオは酒場の子供と町の近くにある花畑に来ていた。


 花畑にはオレンジ・ピンク・黄色など色とりどりの花が咲いていた。カラフルな風景はまるで紙吹雪を散らしたみたいだ。


 鼻をくすぐる甘い匂いも香ってきており、マオは肺一杯に空気を吸い込んだ。


 空は青い絵の具で塗りつぶしたように澄みわたっている。絶好のピクニック日和だ。


「マオさん、マオさん。花冠作ろう!」

「うん、とびっきり豪華なの作っちゃおう!」


 これだけ花があると、花冠も作り甲斐があるというものだ。


 酒場のおっちゃんとおばちゃんに日頃の感謝を込めて、二人は花冠を作った。


 酒場の子供は花冠を作るのに慣れているのか、すいすいと器用に編んでいく。


 対するマオはというと、歪な花冠になっていた。


「う~ん、作るの難しいなぁ」


 マオの独り言に、酒場の子供は両手を握ってエールを送る。


「大丈夫! 分からないところがあったら私が教えるよ」

「うう~ありがとう~」

「へへ、花冠を作るのは得意なんだよ。お父さんたち喜んでくれるかな」


 作りかけの花冠を見つめて、照れたような顔をする酒場の子供に、マオはぎゅっと抱き着いた。


 あまりにも可愛すぎる。そのままよしよしと酒場の子供の頭を撫でた。


 酒場の子供はマオから目を逸らし、頬を真っ赤に染めた。


「ま、マオさん……恥ずかしいかも……」

「よいではないか~よいではないか~」

「うう~」

「花冠、絶対おっちゃんたち喜んでくれるよ~。最高のプレゼントにしちゃおうね」

「うん!」


 それから二人は夢中になって花を選び、花冠を作った。


 日が暮れてくるころには、花冠は形になっていた。あとは渡すだけだ。


 マオが誇らしげに出来た花冠を見ていると、花束の中に淡い黄色の光を放つ花を見つけた。


 花弁はガラスのように透明で、花粉がくっきりと見えている。


 触ると、生きている花とは思えないほどひんやりとしていた。


「なんだろう、これ……?」


 マオの疑問に、同じく花を見た酒場の子供が答えた。


「それはね、月光花っていうんだよ。夜に月の光を浴びる為に咲くの。綺麗だよねえ」

「へえ~」

「ちなみに素敵な花言葉があってね」


 酒場の子供は黄色に光る花を優しく触ると、匂いを嗅いだ。


「『私は貴方に夢中』って意味があるの」

「『私は貴方に夢中』……」


 花言葉を聞いた瞬間、なぜかザビトの顔がマオの脳裏を過ぎり、マオは慌てて両手を振って想像を消した。


 ザビトとマオは『契約者同士』に過ぎない。ただそれだけのはずなのだ。


 しかしマオの頬はピンクに染まっており、誰かを思い浮かべたのは明白だった。酒場の子供が年齢に見合わず微笑ましそうにマオを見つめる。


「月光花はね、恋人に送ったりもするんだよ」

「そうなんだ。素敵だね」

「だよね。ザビトさんに送ったら喜ぶと思うよ?」


 急にザビトの名前が出て来て、マオは吹き出した。頭の中を覗かれているんじゃないかと酒場の子供を凝視したが、どうやら読めやすい反応だったから分かったようだ。


 あわあわと慌てているマオに、酒場の子供は追い打ちをかける。


「月光花のブローチなら簡単作れるよ。一緒に作る?」

「で、でも私とザビトはそんなんじゃないっていうか……」

「え? ザビトさんは否定してなかったよ?」


(否定しろおおおおおお!)


 マオは心の中で絶叫した。恥ずかしすぎて、まともに顔を見れない。


 夕日は一刻一刻と落ちていく。もうすぐ酒場のピーク時間だ。戻らないといけない。


「マオさん、どうする?」

「え、えーと……」


 マオは横目で月光花を見ると、ゆっくりと花に手を伸ばした。


◆◆ ◆

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