月光花
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マオは酒場の子供と町の近くにある花畑に来ていた。
花畑にはオレンジ・ピンク・黄色など色とりどりの花が咲いていた。カラフルな風景はまるで紙吹雪を散らしたみたいだ。
鼻をくすぐる甘い匂いも香ってきており、マオは肺一杯に空気を吸い込んだ。
空は青い絵の具で塗りつぶしたように澄みわたっている。絶好のピクニック日和だ。
「マオさん、マオさん。花冠作ろう!」
「うん、とびっきり豪華なの作っちゃおう!」
これだけ花があると、花冠も作り甲斐があるというものだ。
酒場のおっちゃんとおばちゃんに日頃の感謝を込めて、二人は花冠を作った。
酒場の子供は花冠を作るのに慣れているのか、すいすいと器用に編んでいく。
対するマオはというと、歪な花冠になっていた。
「う~ん、作るの難しいなぁ」
マオの独り言に、酒場の子供は両手を握ってエールを送る。
「大丈夫! 分からないところがあったら私が教えるよ」
「うう~ありがとう~」
「へへ、花冠を作るのは得意なんだよ。お父さんたち喜んでくれるかな」
作りかけの花冠を見つめて、照れたような顔をする酒場の子供に、マオはぎゅっと抱き着いた。
あまりにも可愛すぎる。そのままよしよしと酒場の子供の頭を撫でた。
酒場の子供はマオから目を逸らし、頬を真っ赤に染めた。
「ま、マオさん……恥ずかしいかも……」
「よいではないか~よいではないか~」
「うう~」
「花冠、絶対おっちゃんたち喜んでくれるよ~。最高のプレゼントにしちゃおうね」
「うん!」
それから二人は夢中になって花を選び、花冠を作った。
日が暮れてくるころには、花冠は形になっていた。あとは渡すだけだ。
マオが誇らしげに出来た花冠を見ていると、花束の中に淡い黄色の光を放つ花を見つけた。
花弁はガラスのように透明で、花粉がくっきりと見えている。
触ると、生きている花とは思えないほどひんやりとしていた。
「なんだろう、これ……?」
マオの疑問に、同じく花を見た酒場の子供が答えた。
「それはね、月光花っていうんだよ。夜に月の光を浴びる為に咲くの。綺麗だよねえ」
「へえ~」
「ちなみに素敵な花言葉があってね」
酒場の子供は黄色に光る花を優しく触ると、匂いを嗅いだ。
「『私は貴方に夢中』って意味があるの」
「『私は貴方に夢中』……」
花言葉を聞いた瞬間、なぜかザビトの顔がマオの脳裏を過ぎり、マオは慌てて両手を振って想像を消した。
ザビトとマオは『契約者同士』に過ぎない。ただそれだけのはずなのだ。
しかしマオの頬はピンクに染まっており、誰かを思い浮かべたのは明白だった。酒場の子供が年齢に見合わず微笑ましそうにマオを見つめる。
「月光花はね、恋人に送ったりもするんだよ」
「そうなんだ。素敵だね」
「だよね。ザビトさんに送ったら喜ぶと思うよ?」
急にザビトの名前が出て来て、マオは吹き出した。頭の中を覗かれているんじゃないかと酒場の子供を凝視したが、どうやら読めやすい反応だったから分かったようだ。
あわあわと慌てているマオに、酒場の子供は追い打ちをかける。
「月光花のブローチなら簡単作れるよ。一緒に作る?」
「で、でも私とザビトはそんなんじゃないっていうか……」
「え? ザビトさんは否定してなかったよ?」
(否定しろおおおおおお!)
マオは心の中で絶叫した。恥ずかしすぎて、まともに顔を見れない。
夕日は一刻一刻と落ちていく。もうすぐ酒場のピーク時間だ。戻らないといけない。
「マオさん、どうする?」
「え、えーと……」
マオは横目で月光花を見ると、ゆっくりと花に手を伸ばした。
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