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異世界詐欺師 ~魔法が使えない俺は、嘘だけで世界を騙す~  作者: エース・レッド


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出会いは必然なり。

 ──現在。工芸職人の住む国、イグニース王国。


 ザビトとマオが門を抜け街に入ると、活気溢れる商店街が顔を出した。


 カンカンと鉄を叩く音があちこちで聞こえ、店主と客が値切りの言い合いなどをしていた。


 ──あの店主、ぼったくろうとしてるな。


 会話と店主の動作。ザビトは欠伸をしながらチラリと観察して、見抜いていた。


 道の両脇にはテントを張った店がずらりと並んでおり、アクセサリーや皿、洋服や魔道具などが売られていた。


 歩くのが億劫になるほど人ごみに溢れていたが、店をちらみしつつザビトは使えそうな魔導がないか探す。


 マオはと言えば、


「見て見てザビト! あの耳飾り綺麗だよ! 変な模様の皿もある! うわー、手作りの人形も売ってるよ!」


 人ごみよりも店に並ぶ商品に興味があるのか、ザビトの前をどんどん歩いて行った。


 背の低いマオの頭が、人ごみに埋もれていく。


「おい、あんまり離れると迷子になる──」

「うわー! すごいすごーい!」


 マオは商品の仮面をつけてザビトにピースをしたり、皿を触ろうとして店主に怒られたりしていた。


 ザビトの忠告も空しく、マオの姿はすぐに見えなくなってしまった。


「ったく」


 マオのことだ。そのうちザビトの魔力を検知して帰って来るだろう。


 ザビトは魔道具の店を見て回ることに集中した。買い物はついでで、紅眼の人間がやってこなかったか聞くことがメインだ。


 しかし、どの店主も「知らない」と答えるのみだった。結局、変装や野宿に使えそうな魔道具を買って終わるのみだった。


 戦闘に使えそうな魔道具も買いたかったが、イグニースは『工芸』を主としているため取り扱いが少なかった。今ザビトが持っている武器と被る物ばかりだった。


 今日の食料を買って、後は宿を何処にしようか考えていた時だった。


 道を歩いていたザビトに、ぶつかってくる人がいた。


「あぁ!」


 ぶつかって来た人は手に持っていた大量の資料と本を地面にばら撒き、慌てて拾い集めていた。


 どうやら荷物が多く、前が見えていなかったようだ。ザビトは拾い集めるのを手伝った。


「あ、ありがとう、ございます」


 ぶつかってきた人は、気弱な青年だった。赤茶髪に、エメラルドグリーンの瞳。大きな丸い眼鏡を掛けており、服はだぼだぼのカーディガンを着ていた。


 ──眼鏡、度がないな?


 おしゃれ眼鏡にしては、服装に頓着があるようには思えない。


 ザビトは素早く落ちた本や書類の一部を、拾いながら読み取った。


「ほらよ」


 ザビトが本を差し出すと、少年は何回も申し訳なさそうに頭を下げた。


 青年が落とした本は、異世界に関する物ばかりだった。異世界学者か何かだろうか?


 そうザビトが思いつつ、次に紙を拾うと、そこには『黒い龍の翼』が書かれていた。


 瞬間、ザビトの頭で警報が鳴る。


「……おい、お前がなんでこの紋章の書かれた紙を持ってるんだ?」


 青年はビクッと肩を震わすと、か細い声で答えた。


「か、紙ですか?」


「この紋章は『黒龍の翼』っていう、今裏社会を牛耳っている組織の紋章だ。一介の人間が持てるようなものじゃないはずだが?」


 ザビトの追及に、青年は視線を右往左往させると、一歩後ずさった。


 しかし、青年の腕をザビトはガシッと掴んだ。


「えと、えと……」

「ん? カフェにでも入ってゆーっくり、たーっぷり聞こうか」


 ザビトの獲物を見つけた悪魔のような笑みに、青年はただガタガタと震えるのみだった。

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