能ある鷹は爪を隠す
3ゲーム目。ザビト後攻。
ケロリは内心、疑心暗鬼になっていた。
(イカサマがバレているのか、いないのかケロ!? バレているならば、なぜ指摘してこないケロ。このまま3ゲームに進む理由は何ケロ?)
ザビトの一挙手一投足が意味深いものに見えてくる。ケロリはそれを振り払うように毒の石を入れた。
(まず自分先攻で一回目に毒を入れるのは安牌だケロ。このまま行こうケロ)
ザビトにツボを回し、またケロリにツボが戻ってきたが、まな板の計測器を見てもデタラメな数字しか表示されなかった。
(これはイカサマがバレているとみて間違いないケロ。しかし──イカサマは一つだけではないケロ!)
ケロリはニヤリと笑った。チラリとバレない様にカウンター上の天井を見る。そこはミラーになっており、ザビトの手元が丸見えになっていた。
(衝立で手元が見えていないと安心感を与えてからの、二段構えのイカサマケロ! もうお兄さんがポイントを取ることはないケロ! さっきのターンは毒の石を入れたケロね!)
ケロリは毒の石をツボに入れた。その後の手番は、ザビト・スープの石→ケロリ・毒の石→ザビト・毒の石→ケロリ・スープの石→ザビト・毒の石となった。
自分の手番になったケロリ。
(初めは毒を飲まそうと思ったけど、中々飲まないケロな。今回は私が毒を飲むのを待っているケロね? なら薬の石で浄化して飲んでやるケロ)
ケロリは薬の石を入れてツボをザビトに回した。するとザビトはツボを受け取ってニッコリと笑った。
ケロリの背中に嫌な汗が流れる。
(まさか!)
「コール、『飲む』」
ツボがひっくり返される。黒・白・緑の石がカウンターに散らばる。
「え……?」
ケロリは目を疑った。そこにあったのは毒の石が3個と、スープの石が2個、薬の石が4個、それに腕時計と500円硬貨、10円硬貨だった。
「なんで、毒の石が3個なんだケロ……? 確かに6個のはずじゃ……」
明らかに数えていた数字と違う。
うろたえるケロリに、ザビトは種明かしをした。
「石の重さがそれぞれ違うことも、それを計測器か何かで図って中身の石を視ていたことも、天井のミラーで入れる石を見ていたことも、全部わかってたぞ」
ザビトは服の裾から三種類の石をそれぞれ出す。
「1ゲーム目は石を触って重さが図られているだろうと思って、動かれる前にコールをした。ぶっちゃけこれは大博打だった。大事なのは『最初でコールすることがある』と印象付けることだった」
「ッ」
「2ゲーム目は最後の石だけスープの石だと誤認するように1円玉を入れた。3ゲーム目はマジックの用法で毒を入れていると見せかけて薬を入れたってわけだ」
ストリートじゃマジックは常識だからな? とザビトは悪魔の笑みを見せた。
顔面蒼白のケロリ。負けてしまった。
無情にも、ディーラーは勝敗を告げた。
「ザビト様、1ポイント獲得。合計3ポイント、勝利です」
「ごちそーさまでした♪」
ケロリは息を吐くと、力ない笑顔を見せた。その笑顔は年相応の子供のように見えた。
「これは完敗ケロね。10億円、持ってけドロボー、ケロ」
「ありがたくいただくぜ」
「それではこれにてゲーム終了となります。お疲れ様でした」
ディーラーの宣言を最後に、ゲームは終了した。
お金を手にしたザビトは、すぐに2人分VIPルームの金額を払った。
VIPルームに入る前に、ケロリは告げる。
「来店一日目でVIPルームに入ったのは、君らが初めてケロ。VIPルームでは飲み込まれない様に気を付けるケロね?」
二人がVIP室へと続く扉を抜けると、後ろで扉が閉められた。
ザビトの目に飛び込んだのは、二階まである劇場のような場所だった。
階段状に並べられた赤い椅子数百席と、ステージ上でスポットライトに照らされた“魔族の子供が入った”檻数個。
そう、VIPルームに入った二人を待っていたのは、『闇オークション会場』だった──
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