策略
2ゲーム目。ザビト先攻。
ザビトが石を入れ、ツボがケロリに回ってきた。
ケロリは迷いなくツボを“まな板の上に置いた”。すると、まな板のケロリ側にしか見えない部分にあるメモリの表示が、『10g』を指した。
ケロリは心の中でニヤッと笑った。
(石には実はそれぞれ別の重さがあるケロ。薬が5g、毒が10g、スープが15gとなっているんだケロ。つまりこのまな板に見せた秤を使えば、相手が何を入れたかはすぐにわかるって寸法ケロ。相手が入れたのは毒の石だケロ!!)
そう、これがケロリが絶対に勝てると断言したイカサマ、策なのだ。
(マオちゃんが賭けられているからって容赦はしないケロ。マオちゃんは私が貰うケロ!!)
ケロリが石を入れようとしたところで、ザビトが口を開く。
「飲むをコール出来ないかぁ~。カエルさんよ、知らないようだから教えてあげるが、飲まないと1ポイント入らないぞ?」
「ッそりゃどーもケロ!」
何とわかりやすい煽りか。ケロリは額に筋を立てた。
(煽りを入れて冷静さを失わせる作戦ケロか? そうはいかないケロ)
深呼吸して再度思考を巡らせる。アドバンテージはこちらにあるのだ。相手の土俵に乗る必要はない。
薬の石を入れて、ケロリはツボをザビトに回した。
すると、ザビトはすぐに石を入れてケロリに回し返してきた。
余りの早業に、ケロリは目を白黒させた。
「どーぞ♪」
「……お兄さんマジシャンか何かケロ?」
「んー、どちらかといえば魔王様のお使い、かな?」
「そんなお使いごめんケロ」
太陽のような微笑みが、ケロリにとっては憎らしい。ツボをまな板の上に置く。秤は3つの石の合計の重さ、『25g』を指した。
(相手は毒の石をまた入れたケロ。とすると、こちらとしては攻めに転じたいところケロ)
ケロリはスープの石をツボに入れた。そして次にザビト→ケロリ→ザビト→ケロリとツボが回り、今はケロリに手番が回ってきたところだ。
カラカラと、ツボの中で石の重なる音がする。
(私がスープの石を入れた後の石の種類は、相手・スープの石→自分・薬の石→相手・薬の石ケロ。つまりツボの中には毒の石が2個、薬の石が2個、スープの石が3個あるわけケロ。ということは、この番は飲めるケロ!!)
ケロリは息を吸い込んだ。
「コール、『飲む』!」
コールを受け、ディーラーはツボの中身をカウンターにぶちまけた。
(よしよし、薬の石が2個、毒の石が――)
「ッどういうことケロ!?」
ケロリは慌てて石を数え直した。しかし数が変わるはずもない。
カウンターに並んだ石の数は、薬の石が2個、他の石は――
「スープの石が2個、毒の石が3個だぜ、カエルの嬢ちゃん?」
ザビトは舌をベッと出した。カウンターには石の他に、1円玉が5枚、ツボからコロコロと出てきていた。
(スープの石で飲めると思ったのに、1円玉で重さを変えられていたのかケロ!?)
ケロリは歯ぎしりした。イカサマがバレていたのか?
「どうして1円玉を入れたケロ?」
ケロリの問いに、ザビトはあっけらかんと答えた。
「んー何となく? “ツボの中に石以外は入れてはいけません”ってルールはなかったはずだぞ?」
「そうだけどケロ……」
「それとも、ツボに何か入れられたら困る理由でもあったのか、カエルの嬢ちゃん?」
全てを見透かしているような目が、ケロリに突き刺さる。ここでイカサマを肯定するわけにはいかない。肯定すれば自動敗北だ。
ケロリはギリッと歯を噛んだ。
「ザビト様、1ポイント獲得。合計ケロリ様2ポイント、ザビト様2ポイントとなり、お二方リーチです」
ディーラーが淡々と宣言する。
ケロリとザビトはそのまま3ゲーム目へと駒を進めた。




