閑話
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王都・カルノイア。
赤い絨毯が敷かれた玉座の前で、ユウマは土下座をしていた。
ユウマの両脇では、バロンドルフ公爵とこのカルノイア王国の国王であるキビシュタインが同じく土下座をしていた。
国民がこの光景を見れば、まず驚いて固まるだろう。国のトップと貴族のトップ、そして勇者が土下座をしているのだから。
土下座を受けている張本人は、金色の装飾が施された玉座に座り、興味なさげに三人から視線を逸らした。
玉座の周りでは、チェスや将棋、据え置きゲーム機・携帯ゲーム機などがふわふわと宙に浮かび、玉座の間を遊戯室へと変えていた。
「本当に、申し訳ございませんでした!」
代表して声を張り上げ謝るユウマに、玉座に座る青年は赤茶髪の髪を揺らしながら、手に持っていたリンゴを──
青色のバラに変えた。
「僕はね、『オーテル』の“神様”になりたいんだ」
青年の瞳が、“紅色”に輝く。まるでそれは血を集めたように神秘的に光を反射すると、三人を見下ろした。
「そしたらね、この世を一度リセットしようと思うんだ。ほら、ゲームでもリセットがあるでしょ? リセットって最高の装置だと思わないかい?」
「あ、主様……」
ユウマは本当は異世界人ではない。名前も容姿も、全て目の前の青年から授かったものだ。
ユウマとして生きると決めた時に、過去の名前は捨てた。それが勇者となる条件だった。
なので、青年の言っている言葉の意味が理解できない。ただ、恐ろしいことをしようとしていることだけはわかった。
「リセットボタンを押せるのは僕だけ。しかも選ばれた人間だけが次の新世界を生きるんだ。なんて素敵なんだろうね! この世はゲームだ! でも──」
ユウマは心の芯から震えた。彼が言っているのは、多分絶対的な世界統治だ。そんなこと、出来るわけない。そんな権利誰にもあるはずがない。
しかし、青年には逆らえない。逆らいたいとも思わない。
なぜならば、青年はこの世界で“絶対”であるからだ。
ユウマは青年より強い人間を、見たことがない。きっと魔族だって一瞬で蹴散らしてしまうだろう。
青年にとって高位魔法を使うのは、朝飯前なのだ。
──青年が、バラを握りつぶした。
パラパラと花弁が、床に落ちていく。
「君たちは次の世界には必要ないようだね?」
「! も、申し訳ございませんでした!」
ユウマは無意識に、ガタガタと震えていた。バロンドルフ公爵とキビシュタインも歯を食いしばり、震えている。
青年が話すたび、身体が重くなっていくようだった。胃の中から胃液が込み上げてくる。ユウマは吐かない様にするのに必死だった。
震えは止まらない。何が怖いのかさえ分からない。いや、怖いのは目の前の青年だ。
ただ、この人に逆らってはいけないと、本能が告げていた。
青年は瞬きの間に玉座からユウマの前に移動すると、青いバラの花びらを、ぶわっとユウマに掛けた。
「あ、主様……」
「神の祝福だよ。君を偽りの勇者として、僕の影として、“完璧にリセット”してあげる」
「主様、お助けを……!」
「お休み、ゆーま」
そのまま、ユウマの意識は途切れた。
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