風紀委員は槍を持つ
季節の神アドニスは、また呼び戻された。 人間界で争いが起こるたび、アフロディーテは彼を召喚し、解決を求める。 その繰り返しに、彼は少しだけ疲れていた。
けれど今回は、何かが違う。 舞台は秋田の山間にある高校——妖怪が潜む、異界の交差点。
そして彼の後方には、懐かしい気配が…
これは、神と人、そして妖怪が交差する学園譚。 アドニスの“少し飽きた”日常が、再び動き出す——そんな物語の始まりです。
校庭の花壇で浮かび上がったチューリップ妖怪は、律のフルートの音に導かれるように、静かに土へと戻っていった。 春の気配が、少しだけ落ち着いたように感じられたその瞬間——
「風紀違反です」
鋭い声が、律の背後から飛んできた。 振り返ると、そこには黒髪をひとつに束ねた少女が立っていた。 道着の上に羽織った紺の羽織、手には本物の槍。 その姿は、まるで戦国時代からタイムスリップしてきたようだった。
「風紀委員の禅林門 桜です。あなた、校則違反です」
「……どの部分が?」
「まず、髪の染色は禁止です。次に校庭で無断での楽器演奏。第十八条、授業外の演奏は許可制。そして——」
サクラは一歩、律に詰め寄った。
「妖怪と会話していたこと。これは、風紀違反どころか、校内危険行為です」
律は肩をすくめた。
「見えてたんだ。君には」
「当然です。我が禅林門家は代々、妖怪退治を家業としております」
槍の穂先が、春の光を受けてきらりと光った。 律は、ふっと笑った。
「じゃあ、僕のことも見えてる? 季節の神としての、僕の役割を」
サクラは一瞬だけ目を細めた。 そして、槍を下ろした。
「……風紀違反は、保留にします。あなたの“役割”が、校内秩序に資するなら。そして謝ります。地毛を染めたものと見誤ってしまいました」
「それに、髪の毛を染めている生徒は割と居るように見えるけどね。それに、制服自由って聞いてたけど、槍の携帯も自由枠なの?」
律はからかうようにサクラに尋ねた。
「それは…」
生徒一人一人の髪の色まで詮索していられないのが、風紀委員の実情だ。
そのために、槍も所持せざるを負えない。
「事情は、推察できるよ」
律は軽く頭を下げた。
「これもご縁だ。じゃあ、まずは職員室の場所を教えてくれる?」
「案内します。……ただし、途中で妖怪が出たら、あなたが処理してください」
「もちろん。春の宴は、まだ終わってないからね」
アドニスはちょっと飽きても居た、人間界で戦争や問題が起きるたびにアフロディーテに呼び出され、解決を迫られてきたのだ。そんな中で見覚えのある少女と出会う、容姿は変わっているが魂の形は変わっていない。「倭国大乱」の際に活躍した槍女、サクラ。今世でも槍を構えている姿にアドニスは、微笑みを隠せないでしょうね。しかし、今回の敵は冥府の魑魅魍魎、勇者の助けは有るのか?賢者は今度こそ、役に立つのか?乞うご期待です。




