3-8 堕ちた勇者に会いに
「リオネル……話を聞いてくれるかな。だいぶ変わってしまったから」
「大丈夫、話は聞いてくれるわよ。問題はその後だけど」
「早いほうがいい。今から行くぞ」
ヴァルトはお茶を飲み干し、玄関へと向かう。それ見たセラフィナとミリエルも、慌てて準備をして外へ出ようとした。
「まってセラフィナ、服を貸してくれる?」
「服?いいけど、どうして?」
「僕は神殿から抜け出してきたでしょ?街で聖女様って騒がれると困るんだ」
「ああ、そういうこと。好きなの着ていいわよ……ヴァルトは外に出て」
わかっている、とヴァルトが外に出たところで、ミリエルが服を選び着替えを済ます。
「僕のほうが少し背が高いから、セラフィナの服を着ると裾が足りなくて少し恥ずかしいな」
「今は仕方ないでしょ〜?服くらい後で買えばいいのよ。どうせ旅に出るんだから」
ミリエルは鏡で全身をチェックし、うん、と頷いた。
「じゃ、行きましょ。ヴァルトが待ってるわ」
またしばらく自宅とはお別れか……とセラフィナは少し項垂れていたが、それどころではないため素直に家を出る。
夕方、といったところか。日が傾き、空は茜色に染まっている。落ちぶれた勇者にやることなんてないだろう、どうせ暇だ、とヴァルトが悪態をつきながら先頭を行く。
リオネルの屋敷は王都の一等地にある。勇者のお屋敷、と聞くと大層立派なものを想像するが、実際はそこまで大きくない。二階建てで部屋は5部屋と、一人と数人の使用人で住むのに丁度よい広さだ。
その屋敷の門前に辿り着いた一行は、緊張の面持ちで整列していた。
「なんかこう、改まると入りづらいわね」
「内容が内容だからな。俺達の求める回答が出ればいいが」
ミリエルは無言で俯いている。久しく会っていないというのに、華やかな話ではなく、魔王討伐のせいで魔物が大量発生しているという話をするのが苦しいのだろう。
「ここで立っていても仕方ない。入るぞ」
ヴァルトが先陣を切る。セラフィナ、ミリエルは後を追い、屋敷へと足を踏み入れた。
「邪魔するぞ」
ヴァルトは両開きの扉を豪快に開け、ズカズカと入り込んでいく。大変驚いた様子の使用人が慌てて入り口までやってきた。
「ヴァルト様!それにセラフィナ様も。そちらは……ミリエル様でしょうか?」
使用人は、普段見ることのないメンツが勢揃いしているのを確認し、ただ事ではないと察したようだった。
「特別な対応は不要よ。リオネルと話せるかしら」
静かだが、どこか緊張感のある声でそう言ったセラフィナを見て、使用人は覚悟を決めたかのように項垂れる。
「その内皆様が来るだろうとは思っていたのです。大きな声では言えませんが、今のリオネル様はとても勇者とは思えませんから」
なにか勘違いをしているようだ。いや、更生させに来たと思えば勘違いでもないのだが。
「僕達にしか話せない、大事なことがあるんだ。取り次いでくれるかな」
「かしこまりました。客間へご案内いたします」
一階にある少し広めの部屋に通された一行。部屋のソファに腰掛け、出されたお茶を飲みながらリオネルを待つ。
「さて、どんな答えを出すのかしら」
腕を組んだセラフィナはそう呟く。
そのとき。
廊下の向こうから、足音が聞こえてきた。
かつて共に魔王を倒した、勇者の足音だった。




