第13話 クラーケン
第13話 クラーケン
ガタガタ!大きな音が響くと同時に、船が大きく傾いた。
「何だ!何が起こっているんだ!」誰かが叫んでいる。
「うわー、クラーケンだ!クラーケンの足が這い上がってきている!」
私たちは急いで甲板に上がると、絡みついたクラーケンがぬるっとした動きで、船上に上がってくるところだった。
大きさは20m程であろうか、足を器用に動かしながら、こちらに向かってきた。
「みんな逃げて!ここは私たちに任せて!」
船員達は一斉に退避した。
「さあ行くわよ!」
私とゲイリーが先陣を切ってクラーケンに接近していく。
オリビアは、クラーケンを眠りに誘うべく、スリプルの魔法を発動させた。
しかし、クラーケンには魔法耐性があるのか、抵抗され効果がなかった。
イオタは、プロテクトの魔法を私とゲイリーにかけた。
これは物理防御力を強化する魔法である。
仲間の援護に感謝しつつ、伸びてきたクラーケンの足に攻撃を加えはじめた。
クラーケンの足はそれほど硬くはないものの、ゴムを切っているかのように、力が伝わりにくく、足を切り落とすのに何度も斬りかかる必要があった。
それはゲイリーも同様であった様子で、苦戦しながら、ようやく一本の足を落としている。
「ちっ、手強いな」ゲイリーが悪態をついている。
前衛が苦戦する様子をみて、オリビアがスペリオル・サンダーの呪文を唱えはじめた。
この呪文は、電気系魔法の最上位に当たるもので、クラーケンには効果的だと考えられた。
しかし、詠唱に入ったわずかな隙を突き、クラーケンはその長い足を使い、オリビアをぐるぐる巻きにし、捕まえてしまった。
そして、得物をゲットしたことに満足したのか、攻撃をやめ、海へ逃げようとしている。
いけない、オリビアを助けなくちゃ!
私は、すかさずスロー・タイムを発動した。
そのまま、オリビアを捕まえている足の近くまで移動すると、その根もとに狙いをつけた。
剣での攻撃では、クラーケンの足を切断するのに時間がかかりすぎる。
切断する前に逃げられてしまうかもしれない。
そう判断した私は、足の根もとに右手をかざし、ウインドカッターの魔法を発動させた。
ウインドカッターの魔法は、目に見えない無数の風の刃を飛ばす呪文である。・私の右手からその無数の風の刃が放たれ、オリビアをつかんでいる足の根もとにすべて命中した。
その攻撃で、足を切断するには至らなかったが、足の半分近くまで深く切り裂く事に成功した。
クラーケンは、オリビアを捕まえていることが出来なくなり、オリビアを手放した。
自由になったオリビアが、クラーケンと距離をとりながら、今度は私の番とばかりに「魔法行く」と叫んだ。
一方、クラーケンは得物を取り逃がしたせいか、再びこちらに攻撃を仕掛けようとしている。
私とゲイリーがクラーケンから退避して、十分に距離をとったことを確認すると、オリビアがホールドしていたスペリオル・サンダーの呪文を発動した。
上空に急激に厚い雲がかかったと思うと、何度も稲光を発し、クラーケンへ、何本もの雷がふりそそぐように落ち、直撃した。
電気系の上位魔法により大きくダメージを受け、瀕死の状態となるクラーケン。
そこに私とゲイリーの斬撃が追い打ちをかけ、クラーケンを倒すことに成功した。
「オリビア、大丈夫だった?」
「ええ、ありがとう。油断したわ」
「エクストラヒールをかけるわね」
「ありがとう、イオタ」
私たちが戦闘を終えた事を確認し、船長のダックがやって来た。
「皆さん、大丈夫ですか?お怪我はありませんか?しかし、見事にクラーケンを倒してくれました。ありがとう」
「大丈夫です」
「しかし、さすがは勇者様ご一行ですね。噂は聞いておりましたが、目の当たりにすると、驚かされます。魔王討伐も夢じゃないと思えます」
「いや、私はまだまだです。オリビアの魔法が一番効果的でした」
「でもそれは、ルナが助けてくれたからよ」
「その通りです。私も見ていましたが、チームワークの勝利ですね」
「そうね…、この調子で頑張りましょう」
「ところで、今夜はタコ料理ですか?」
「イオタはいつもそれね」
「本当に食いしん坊だね」
「良いじゃないの。それくらい楽しみにしたって」
「ははは。今夜は料理長に美味しいタコ料理を作らせますよ」
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