第76話 デーモン・ロード 1
第76話 デーモン・ロード 1
異形の悪魔、そう表現するほかはない、巨大な悪魔がそこに出現した。
その巨躯は十mに達し、背部に二対の羽がある。
頭部には四本の角が生え、胸部には三対合計六本の腕が生えている。
僕と分身体は、それぞれ左右から攻撃すべく全速力でデーモン・ロードに向かった。
エライザはサイレントの呪文を唱えたが、それが無効化されると、すぐさまシューティングスターでの攻撃に移った。
僕と分身体とエライザ、この三人で猛攻を仕掛けていくが、デーモン・ロードはその六本の腕を巧みに使い分け、余裕を持って対処している。
しばらくは攻防が続いた、しかしそんな時だ。
一瞬の隙を突いて、分身体が魔弾を発射し、デーモン・ロードの胸部に命中させた。
魔弾が炸裂し、デーモン・ロードの胸部に手拳大の穴が穿たれた。
やった!とそう思ったのもつかの間、一本の腕が光ったと思うと、その腕は一瞬で消え去り、それと共に胸の傷が消失した。
腕を犠牲にすることで、傷を帳消しに出来るようだ。
腕を一本犠牲にしたデーモン・ロードは、怒りの表情を見せ、インスタント・デスの呪文を僕に唱えた。
インスタント・デスの魔法は、相手に死をもたらす死の呪文である。
しかし、その効果範囲は狭く、一体にしか効果が発現しない。
その反面、効果が高く、死に至らしめる確率が高くなっている。
インスタント・デスの魔法に捉われた僕は、懸命に抵抗を試みた。
魔力を集中し、体中に行き渡らせる。
僕の魔力が死の呪いとせめぎ合っている。
必死に抵抗を試みているが、やがて呪文が効果を発揮しだした。
僕の体に死の刻印が浮かび上がり始めたのだ。
その瞬間に、僕は諦め、分身体と入れ替わった。
分身体となった僕の本体は、そのまま死の刻印が現れると、消失してしまった。
「レン!大丈夫?」エライザが問いかける。
「大丈夫」
フェリーナは、僕達の攻防をみていたが、一瞬の隙を見逃さなかった。
スペルキャスターは呪文を発動した後、一瞬の隙が生じることがある。
デーモン・ロードも例外では無く、一瞬の隙が生じたのである。
フェリーナが、ホールドしていたホーリー・エクスプロージョンの呪文を発動させた。
ホーリー・エクスプロージョンは僧侶系の唯一の範囲攻撃魔法であるが、特殊な魔法で、効果範囲内の敵にのみ効果が現れる。
範囲治癒魔法が、効果範囲内の味方のみに効果を発揮するのと同様に、ホーリー・エクスプロージョンは効果範囲の敵にのみ効果が発現するのである。
聖なる光がデーモン・ロードの直前で爆発すると、その光がデーモン・ロードを包み込み、大きなダメージを与えた。
しかし、デーモン・ロードは、このダメージも腕を一本犠牲にすることにより、消失させてしまった。
デーモン・ロードは怒りのオーラを発すると、聞き慣れない言葉の呪文を唱え始めた。
それを聞いた瞬間にヴェリスが叫んだ。
「あれは古代魔法だ、退避!」
僕とエライザはいっせいに退避し、デーモン・ロードとの距離をとった。
その瞬間に、ヴェリスは、ホールドしていたニュークリア・バーストの呪文を、二連発で炸裂させた。
ニュークリア・バーストの呪文は核爆発の炎と爆発を生み出す、魔法使い最高位の魔法だ。
単発でもその威力は折り紙付きだが、二連発で発動した場合、その威力は相乗効果となって、その威力は計り知れないものとなる。
それが、デーモン・ロードを中心に炸裂した。
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